がんをめぐる冒険(23)手術前日、早朝取材からの入院

 手術の段取りは今回も同じで、前日の午前中に入院。もう1回入院しているので持っていく服や小物は淘汰され、スッキリしました。
 入院日はちょうど早朝からタレント事務所の振袖撮影会があり、朝8時に現地入りし、9時から取材。その足で入院しました。華やかなタレントさんを眺め、取材すると元気をもらえます。
仕事があって良かった。
入院するとラウンジでパソコンを開き、原稿を打つ……。
病気のことだけ考えていたらもっとどんよりしていたと思います。
(実はどんよりするパワハラ時間があったのですが、それは次回に)
 
 病室にいるのは50代後半から60代の主婦。系列病院で子供を産んでいて、紹介されたなど、。入院するまでの経緯を聞きましたが、みんな達観しておだやか。というか、そういうマインドでないと他の患者さんと話せないというのもあります。みな同じ病気なので、話してみれば辛さを共感してもらえるし、慰めてもくれるし、いい先輩たちです。 
 人によってはカーテンで仕切られた病室から出ることなく、会釈してもスルーする人も。そういう方は「なんで私ががんに」とか考えるところがあるんだと思います。
 特に30代前半かな、と思われるがんになるには若い人にそういう方が多いような気がしました。時々痛みをこらえた声が聞こえると『がんばって』と心の中で応援していました。
 
 術前説明を前日に約束していたので、原稿を書きながら待ちます。
 診察時に、術前説明の時間を予約するかどうかを聞かれたのですが、もう2回目の手術で先生にお任せする気でいたので、
「必要ですか? 家族も後輩も手術についてはある程度わかっているので前日で大丈夫です。先生のお時間あるときでかまいません」
 とお伝えし、入院後に説明を受けることにしました。
 大学病院の先生たちは本当に多忙で、見ている限りだと、主治医(助教)の先生は1週間のうちに手術の日が2、3日、診察が2日は確実にありました。診察は30分に3人くらいはこなしている様子で、それでも長い人が出て予定はずれ込みます。手術の後は先生から家族に直接電話がきて、無事手術が終わったことを報告してくれる。さらに大学での授業や研究室でのゼミもあるし、教授の右腕として仕事も山積しているでしょう。
 助教の下についている担当医の先生(アラサー)も、朝7時台には病棟に来て、入院患者を回診し、教授診察の時はアシスタントをこなし、日帰りで抗がん剤の点滴をする診察室にもいて、手術にも立ち会い、術前説明にも同席し、医療保険の診断書にサインもしてくれる。そして夜9時すぎに病棟にいました。
 入院している先輩たちも「本当にここの先生たちは忙しいのによくやってくれるわよね。こんなに忙しくて、私なんて忘れられるんじゃないか、って思うけど、ちゃんと覚えていてくれて、連絡来るのよ」と言ってました。
 こんなに頑張ってる先生方に余計な負荷をかけたくない。たった一人ですが、余計な作業を増やしたくないと思いました。
 そして、術前説明は夕食後の7時すぎ。「遅くなってすみません、申し訳ない」とひたすら頭を下げられ、こちらこそ恐縮。明日も終日パンパンに手術が入っていて、風邪なんてひけない、ましてやコロナに感染なんてありえない、そんな先生方に頭が下がり、開腹の恐怖は薄れました。

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