稗田一穂展
昨年の12月に世田谷美術館で開催されている藤原新也さんの写真展を観に行った。
展示を観終わり、館内の他の美術館で開催されている展示のチラシやパンフレットを見ていたのだが、その中に日ビビッとくる絵のチラシがあった。それは稗田一穂という画家の「帰り路」という絵であった。
夕方の空のグラデーションがとてもよく、自分の好みであった。全体の絵の雰囲気がなんだかとてもよかったのだ。好みの音楽を聴いた時に、この曲なんだろう?、と思った時に感じる種類の感覚と同じものを感じた。
そのチラシは、9月から11月に和歌山県立近代美術館で開催されていた稗田一穂展のもので、すでに会期は終了していた。そもそも初めて聞く名前だったので調べてみると、なんと昨年100歳で亡くなったとのことだった。
さらに調べてみると、展示会は和歌山県の田辺市に場所を移して開催されていて、1月15日までやっているという。でもそれまでに和歌山県の、しかも田辺市まで行くことは現実的ではない、というか無理だ。
この「帰り路」の実物を見てみたいと思ったが、次に考えたのは図録を入手することだった。
和歌山県立近代美術館のサイトを確認すると、図録を購入することができることは確認できた。ところが購入方法を確認すると、図録代金と送料を現金書留で送れというものだった。今時、現金書留かよ、と思った。このキャッシュレスの時代に、和歌山県はなんと遅れているのか…。
大体現金封筒なんて家にないし、まだ現金書留なんてあるのか…。
仕方ないので、準備をして在宅勤務の日の昼休みに近くの郵便局に出向き、現金書留を送ったのだった。年末だったので、送られてくるのは年明けだろうと思っていた。
明けて1月7日(土)、レターパックで図録が送られてきた。
写真だと、この空のグラデーションと、暗い路の両方を適切な明るさで表現することは難しい。写真だとデジカメで空の明るさに露出を合わせてRAWで撮影して、後で現像で暗い路の明るさを持ち上げることになるのだろうし、夕方の西の空に左側が輝いている月が見えることはあり得ないので、絵の表現は自由なのかも知れないと思った。
巻末の解説を見ると、この風景は作者が当時住んでいた成城付近の小田急線だという。
場所を特定したい訳ではないが、実際に付近の場所を見に行きたいと思った。しかし、この付近の小田急線はすでに地下化されているので、もう二度と見れない風景なのだと知って、ちょっと残念だ…。
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