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天体写真を撮っていた頃

表紙:M31(アンドロメダ大星雲):1985/8/16 ニコンFM2, AiニッコールED180mmF2.8S, 絞り開放, 露出時間30分, 半自動ガイド, サクラカラー400, キクチハイコンⅡ30℃8分, 中央アルプス千畳敷

小学校高学年から天文少年であった自分は、中学では自然研究部に所属し、同じ趣味の仲間と天体望遠鏡を持って集まり、天体観測や天体写真の撮影をしていた。天体写真を始めた頃はそれほど知識もなく、父親のキヤノンFXとFL50mmF1.8にフジカラー400などのネガフィルムを詰めて、固定撮影をしていた。
当時は「天文ガイド」、「天文と気象」といった雑誌を買って、何度も読み、知識だけを蓄えていった。また近所の図書館で天体写真関連の書籍を借りて貪るように読んでいた。この頃の天体写真は何といっても藤井旭さんがスターであった。キヤノンの超望遠Lレンズやタカハシのフローライトで撮影された写真を見て、いつか自分のこういう写真が撮れるようになりたいなぁ、と思っていた。
高校生になって地学部に入部した。ここでは先輩たちが撮影したフィルムを自分で現像・プリントしていた。天文ガイドの「読者の天体写真」に入選している先輩もいた。
この頃、天体写真を撮影するフィルムとして定番だったのはモノクロではトライXで、プレアデス星団のような青系の光の天体はよく写るが、赤い光を放つHⅡ領域の天体には全く歯が立たなかった。そしてHII領域の天体がよく映るフィルムとして、コダックの103aEというフィルムが大流行していた。先輩や友人も103aEを使い始めていた。103aEで撮影をする時は、R64フィルターというR60よりもさらに赤黒いフィルターを付ける必要があった。こんな濃い色のフィルターを使って星なんか写るのか、と思ったが非常によく写ってビックリした。

 ↑白鳥座:1984/7/27 ニコンFM2, Aiニッコール50mmF1.4S, 絞りF2.8, 露出時間30分, 自動ガイド, 103aE, パンドール20℃12分, 入笠山

モノクロフィルムの現像も初めて体験した。ダークバッグや現像タンク等一式買い揃え、自宅の風呂場で現像していた。液温20℃を保つのが風呂場ではやや面倒であったが、何とか対応していた。プリントは地学部の部室でやっていた。天体写真では印画紙はバライタよりもRCペーパーが推奨されていた。最近、いろんな写真家さんの素晴らしいモノクロプリントを見ているがほぼバライタが使用されていて、また自分も現像やプリントをやってみたいなぁと思うが、天体写真の場合はRCの方が向いている気がする。

一方、カラーフィルムでは、サクラカラー400が赤い光を放つHⅡ領域の天体が非常によく写るということで、流行していた。しかもこれをDPEに出すのではなく、自分でハイコントラスト現像液を使用して現像する方法が雑誌に紹介されていて、友人が試したところ、出来上がった写真はこれまでにない写りをしていた。
これを見て自分もどうしてもカラーネガの現像を自分でやりたくなり、新宿のヨドバシカメラで菊池科学研究所という会社が出しているキクチハイコンⅡという現像液を買ってきた。高校時代の話なので記憶が怪しいのだが、液温30℃で現像する必要があり、真夏だから何とか風呂場でも現像することができた感じだった。カラーネガの場合、それを見て仕上がり写真をイメージするのが難しいが、なんかよく写っている気はした。プリントはDPEに持って行ったが、出来上がった写真はこれまで自分が撮影した写真よりもはるかによく写っていて、その時は感動した。

 ↑白鳥座:1985/8/15 ニコンFM2, Aiニッコール50mmF1.4S, 絞りF2.8, 露出時間30分, 自動ガイド, サクラカラー400, キクチハイコンⅡ30℃8分, 中央アルプス千畳敷

 ↑カシオペア座:1985/8/16 ニコンFM2, Aiニッコール50mmF1.4S, 絞りF2.8, 露出時間30分, 自動ガイド, サクラカラー400, キクチハイコンⅡ30℃8分, 中央アルプス千畳敷

まあ、ここからはいろんなところで語られている話になるけど、デジタルカメラの時代になって、当時よりははるかに簡便に天体写真が撮影できるようになったのに、今そこに興味が持てないのが残念だなぁと思う。
フィルムで写真を撮ることが贅沢な時代になり、また自分で現像やプリントをやってみたいと思うのだが、今やると家庭不和のもとになりそうなので、大人しくしている。

 ↑北アメリカ星雲(白鳥座):1985/8/17 ニコンFM2, AiニッコールED180mmF2.8S, 絞り開放, 露出時間30分, 半自動ガイド, サクラカラー400, キクチハイコンⅡ30℃8分, 中央アルプス千畳敷

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