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あなたの写真がSNS型詐欺の詐欺師による偽アカウントに使われていたらどうする?

2012年に人気刑事ドラマ「相棒」の「ビリー」というエピソードが放送された頃、国際ロマンス詐欺や前払金詐欺に使われる写真の多くは、日本人を狙ったものであっても欧米人の写真がほとんどでした。しかし、NPO法人M-Stepが2016年頃からFacebookで国際ロマンス詐欺の注意喚起や相談を受けるようになってから、日本人や韓国人など東アジア系の写真を使った詐欺も見られるようになりました。

近年のSNS型詐欺(SNS型投資詐欺やロマンス詐欺)では、東アジア系の人物写真を使ったものがほとんどです。これらの写真は、芸能人や医師などの著名人やSNSのインフルエンサーのものを盗んだケースが多いですが、そうでない場合もあります。有名人やSNSのインフルエンサーでない人の写真でも、詐欺グループのメンバーが誰かのSNSから盗んだり、被害者から手に入れたりすることがあります。実際に、自分の写真が詐欺に使われてしまったという被害者もいます。そうです、あなたの写真も私の写真も、詐欺に使われる可能性があるのです。

あなたの写真が詐欺師に使われてしまっていることに気づいたり、誰かが教えてくれた場合、どうすべきかについて解説します。

1. 写真盗用に気づいたらすべきこと

まずは家族や親しい友人に知らせる

自分の写真が外国の犯罪者に盗用された場合、家族や親しい友人にその事実を伝えましょう。これは、今後予想される誤解や問題に備えるためです。写真盗用の被害者には過失はありませんので、堂々と状況を説明しましょう。特に、写真が出会い系サイトに使われた場合、誤解を避けるためにも重要です。詐欺師はSNSで写真の本人をブロックして偽アカウントを運用することがあるため、家族や友人が盗用の事実を知っていれば、偽アカウントの通報をお願いすることができます。

次に行うべきこと

  1. SNSアカウントのセキュリティ強化

    • 強力なパスワードを設定し、定期的に変更する。

    • 二段階認証を有効にする。

    • プライバシー設定を見直し、公開範囲を制限する。

    • 知らない相手のフォローや友達承認をしない。

    • 実際に会ったことのないフォロワーや友達を整理する。

  2. 写真の流出防止

    • 重要な写真や個人情報をSNSにアップロードしない。

    • 既にアップロードした写真の公開範囲を「友達のみ」に変更する。

  3. 新しいアカウントを作成

    • 現在のアカウントを閉じて、新しいSNSアカウントを作成する。

    • プロフィール写真には人物が写っている写真を使わない。

  4. 友人や家族のセキュリティレベル向上

    • 友人や家族にもSNSのセキュリティ設定を強化してもらう。

    • 不必要なタグ付けを避けるようお願いする。

  5. 自分が本物であることを示す

    • セキュリティ設定を変えずに自分が本物であることを示しながらSNSを続けることもできますが、これは精神的に難しいことがあります。詐欺被害者からのコンタクトや写真盗用の継続に対処するため、慎重に判断してください。

2. 写真が盗用された場合の影響

1. 詐欺情報サイトやSNSグループへの掲載
自分の写真が詐欺に使われると、詐欺情報サイトやSNSグループに掲載されることがあります。これは詐欺被害者が情報を共有するためです。各サイトやSNSグループによって対応は異なりますが、写真の削除は難しい場合があります。家族や友人に事情を説明し、理解を得ることが重要です。

盗用された写真の本人や関係者からのフィードバックを受け付けてくれるサイトやSNSグループもあります。意見を管理者に送ることが可能であれば、被害者に向けて「私の写真が盗用されていますが、ネットで流失してしまった写真に対して私には何をすることもできません。SNSで知らない人からコンタクトがあっても絶対に応じないのが基本です」といったメッセージを投げかけるのが良いでしょう。

2. 詐欺被害者からのコンタクト
写真がSNS型詐欺に盗用されると、詐欺被害者から様々なアプローチを受ける可能性があります。詐欺被害者は、あなたを恋人だと信じて接触してくるか、詐欺犯だと信じて怒りをぶつけてくるかもしれません。プロフィールに電話番号が記載されている場合、自宅や職場に電話をかけてくることもあります。その結果、電話に出た家族や仕事の関係者が困惑することがあります。

具体的な話として、Scamdiggerという詐欺情報サイトのフォーラムには「写真の本人が何と言っているか」という事例が記載されています。詐欺被害者が写真の人の連絡先を調べて自宅や実家に電話をかけたり、職場に連絡してきたりするケースまであります。詐欺被害者が写真の人と恋愛関係にあると認識している場合、誤解から家族や交際相手などとの間でトラブルが生じるかもしれません。家族や友人との間の不要なトラブルを防ぐためにも、写真盗用に関する理解と協力を得ることが重要です。

SNS型詐欺における写真盗用・写真の人は詐欺師ではないということを理解した上で、「あなたの写真が詐欺に使われています」と伝えてくる人は善意かもしれません。これが最初の1回目であればありがたいとさえ思うでしょう。しかし時が経つにつれ、それが週に何件も「わかりきっていること」を親切に伝えてくる詐欺被害者や詐欺師ハンターがいることに、あなたはうんざりしてしまうかもしれません。

図:Scamdiggerの記事及び写真盗用被害を受けた方や詐欺被害者の方々からの話をもとに作成

3. 避けるべきこと

  1. 盗用者に直接コンタクトを取ること

    • 盗用された写真を取り戻すのはほぼ不可能です。何人の犯罪者が使っているのか一切不明です。あなたが気づいていない盗用もたくさんあることが予想できます。盗用者に連絡を取って交渉するのは避けるべきです。お金を脅し取られる可能性もあります。

  2. 感情的に反応すること

    • 冷静に対処することは非常に重要です。感情的になると、適切な判断が難しくなることがあります。特に家族や友人からの理解が得られない場合、感情的になりやすいですが、根気強く説明し、理解を求める努力を続けることが大切です。

最善の対策は、SNSや出会い系サイトに通報することです。これにより、盗用された写真が削除される可能性が高まります。

4. 写真が盗用された人の権利

  1. 通報する権利

    • 写真盗用された方には、SNSや出会い系サイトの運営側に成りすましのアカウントを通報する権利があります。通報は一回で終わらせず、継続的に行うことが重要です。

  2. 安全にインターネットを使う権利

    • 誰もがインターネットを安全に利用する権利を持っています。セキュリティ設定を強化し、侵入者を防ぎましょう。不愉快なアプローチをしてくる詐欺被害者からのコンタクトを防ぐことも、写真を盗用された人の権利です。詐欺被害者を労わることも大切ですが、自分の精神的・身体的安全を犠牲にすべきではありません。もし被害者からのコンタクトが脅威となるのであれば、対策を講じることは間違いではありません。

5. まとめ

写真が盗用された場合、最も重要なのは冷静に対処することです。まず、家族や親しい友人に事実を伝え、彼らのサポートを受けることが重要です。次に、SNSアカウントのセキュリティを強化し、プライバシー設定を見直すことが必要です。知らない相手のフォローを避け、個人情報や重要な写真の公開を制限することで、被害の拡大を防ぐことができます。

写真が詐欺に利用されると、詐欺被害者からのコンタクトがあるかもしれませんが、冷静に対応し、盗用の事実を伝えることが重要です。盗用者に直接連絡を取ることは避け、感情的にならずに対応することが肝要です。SNSや出会い系サイトへの通報を積極的に行い、継続的に対策を講じることが求められます。

最後に、写真が盗用された人にはインターネットを安全に使う権利があります。セキュリティ設定を強化し、不愉快なコンタクトを防ぐための対策を徹底しましょう。家族や友人の理解と協力を得ることで、適切な対応が可能となります。

(文章:武部理花)


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