好きでした


私には忘れられない時間があって
みんなにもそれはきっとある
私、あの頃を思い出すと
1日でいい、何分でも、何秒だっていいから、
あの頃の私に戻って、また、
あの頃のあの人に会いたくなる



学校を卒業してあの人と合わなくなった頃、
セリアで坊主姿の人を見かけた
ちらっと見えただけ、それだけなのに
頭の形がにているだけだったのに、
私の心臓は酷く痛く鳴った
あの人を好きだった気持ちの分。
酷く、痛く、鳴った。

私の心臓も、あの人を覚えていた
立っているのが精一杯だった





あの頃、
あの人は、私の世界の中心だった
私の生きる理由だった

白い肌も
眉毛の形も
足の筋肉も、背中も
柔道着を畳む姿も
お昼ご飯のおかわりも
休み時間のうつ伏せも、
好きだった

気がついたら周りに人がいることも
目が合うと笑ってくれるところも
さり気なく優しいところも
筋トレと梅干しが好きなところも
歩き方も、走り方も
喋り方だって、
全部、全部、大好きだった
私にはあの人だった



いつも見てたから
私の目の位置も
私の笑顔も
私の頭の中も
全部あの人に向かってた



朝起きて、私はあの人のことを考える
夜寝る前、私はあの人を思い出す

今日は話せるかな
また、こっち見てくれるかな
夢に出てきてくれないかな
夢でも会いたいな
って思う
そんな日々だった



いつもは見てるだけだったけど、
たまに話すチャンスがあった
それは授業での2人組の時、委員会の時

話したいこと、たくさんあるけれど、
どう思われるかが不安で、
なかなか話せなくて、
話せたとしても
変じゃなかったかなって
無限ループで考えてしまう
自分がその時どんな顔でいたのか
家に帰って鏡で確認してしまう


私はあの人と同じ委員会だった
保健委員会だった
委員会の日はなんだか恥ずかしい気持ちと
嬉しい気持ちの混ざりあった感情で、
だけど、月に1回ある、一緒にいられるその時間が楽しみだった。
クラスが同じだから、いつも一緒の空間には
いるけれど、
委員会はなんだか、わたしだけ、
クラスのみんなは知らないあなたを、私だけは見られるかもしれないと思って
楽しみだった。そう思えるのが嬉しかった。



私は1日の出来事をずっと頭の中で繰り返し思い出していた
家に帰ったら、お姉ちゃんに全部話して、
何回も話して、思い出して、話して思い出して
ずっとあの人のことを考えていたかった

その日1日話せなくても、
あなたに会えるだけで、私、
幸せだった。



あの人、いつもはバス通学なのに
ある日、お父さんの車で来ていた
なんでだろうって思った
あの人はマスクをしていた

あぁ、バスのみんなに移さないようになんだ

それに気づいた時私、わたし、

なんて言ったらいいんだろうあの気持ち
抱きしめてあげたいような
そっと見守ってあげたいような、
泣いてしまいそうだったよ

偉いねなんて言わない
あの人はきっと偉いねって言われたくて
そうしたんじゃないから
あの人と、あの人を育てた家族の優しさだったから

あの人がどんな風に育てられたのか
私は全てを知らない
知らないけれど、
あの人を見ていれば、なんとなく、わかる

ごつごつして大きい手なのに
あの人は優しくものを掴むし、
柔道のチャンピョンなのに
体育の時間に柔道を教える時、
すごく丁寧に優しく
足の位置を教えてくれたよね

私ね、ずっと、そういうところが好きだった
あなたは優しかった
生きてきた中で、何かを感じ、学んだ、
そういう優しさをもっていた人だった

私には分からない、あの人がどんな気持ちを持って生きてきたかなんて
でも、あなたをいつも見ていたから、
あなたがどんな人なのか、私は知っている。
私は今でも、ずっと、あなたがどんな人だったかを覚えている。



あの頃、私の心にはあの人がいた
あなたがいてくれたから私は、
毎日が輝いていた
眩しかった



まだ、これから先も、私の心には
ずっとあなたの場所があって
あなた以外の他の人を好きになったとしても、
どんなに大事な、傷つけたくない人ができても、
あなたの場所だけは、ずっと私の心の中にあって
大切に、大切に、しまっておくから
私はこれからも私を生きていける。



今でも思い出すの、
あの人を好きな私で見た景色
あの夕焼け、学校の外で、あの時思ったの
私もいつか、この恋を思い出してきっと泣いてしまうんだろうなって
眩しかったな
私にもあったんだ
そういう気持ち
あんなに胸がいっぱいになること
あなたを想って歩いた道、
あなたを想って見た夕日、
私にも、あったんだね
ありがとう

私には、あなただった。




今日、朝起きた時、すごく何かに感動した
風が強い朝だったけど、
もうお昼の12時だったけど
天気が良くて、涙が出そうだった
胸が苦しくてなんだか懐かしい気持ちだった

あの人の夢を見た気がした







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