「ステークホルダーとグリーンウォッシュの理解:サステナビリティの新しい視点」
さて今日も、一問解いていきましょう。
問題 4
「世界のサステナビリティの流れ」に関する次の記述のうち、最も不適切なものを一つ選べ。
- ア. 1972 年、「国連人間環境会議」(ストックホルム会議)が開催され、「人間環境宣言」と「環境国際行動計画」が採択され、「国連環境計画」(UNEP)が設立された。
- イ. SDGs は MDGs を引き継いでいるが、MDGs が開発途上国を対象にしているのに対して、SDGs では全ての人類に対して課題を設定した。
- ウ. 2019年、米国経営者団体「ビジネス・ラウンド・テーブル」は、「企業の目的に関する声明」の中で、企業の目的とは、「株主に奉仕し、株主に価値をもたらすこと」と発表し、話題を集めた。
- エ. EUタクソノミーは、「企業の経済活動が地球環境にとって持続可能であるかどうかを判定する」仕組みで、グリーンな投資を促すためグリーンウォッシングに対応した分類のシステムとして作成された。
回答
ウ. 2019年、米国経営者団体「ビジネス・ラウンド・テーブル」は、「企業の目的に関する声明」の中で、企業の目的とは、「株主に奉仕し、株主に価値をもたらすこと」と発表し、話題を集めた。
**解説**
ウの記述が不適切であるのは、2019年に米国の経営者団体「ビジネス・ラウンド・テーブル」が発表した「企業の目的に関する声明」では、従来の「株主利益の最大化」という目的から、全てのステークホルダー(顧客、従業員、供給者、地域社会、株主)に対して価値を提供するという、より広範な責任を果たすことが企業の目的であると定義しました。つまり、株主だけでなく、社会全体に対する責任が強調されたのです。
その他の選択肢については正しい記述です。アの1972年のストックホルム会議では、環境問題に関する国際的な取り組みが本格化し、UNEP(国連環境計画)が設立されました。イのSDGs(持続可能な開発目標)は、MDGs(ミレニアム開発目標)を引き継いだものであり、全人類を対象に持続可能な開発を目指す課題を設定しています。エのEUタクソノミーは、企業の活動が持続可能かどうかを評価するための分類システムで、グリーンウォッシングを防ぐために導入されました。
さて、ここでステークホルダーやグリーンウォッシュの定義や成り立ちなどを補足します。今日は私の経験値ではなく、言葉の補足説明です。
ステークホルダーとは、企業の活動に影響を受けるすべての人や団体のことで、顧客、従業員、供給者、地域社会、そして株主も含まれます。この概念は、1960年代にアメリカで広まり始め、特に1980年代以降、企業が社会全体に責任を負うべきだという考え方が広く浸透しました。
また、グリーンウォッシュとは、企業が環境に優しいイメージを打ち出す一方で、実際には環境に配慮した取り組みを十分に行っていない場合に使われる言葉です。たとえば、ある企業が製品のパッケージに「エコ」と書いてあっても、その製品が実際には環境に悪影響を与えている場合、これはグリーンウォッシュの一例です。EUタクソノミーは、こうした偽りの環境配慮を防ぐために、企業の活動が本当に持続可能であるかどうかを判定する仕組みを整えたものです。
具体名を挙げてグリーンウォッシュを説明しますと、、、皆さんの身近な企業が挙げられます。
### 1. **Volkswagen (フォルクスワーゲン)**
フォルクスワーゲンは「ディーゼルゲート」と呼ばれるスキャンダルで有名です。2015年に、フォルクスワーゲンがアメリカで販売したディーゼル車に、排出ガス検査を欺く不正ソフトウェアが搭載されていたことが発覚しました。このソフトウェアは、検査時には排出ガスを低く見せかける一方で、通常の運転時には実際の排出量が基準を大きく上回るものでした。フォルクスワーゲンはこの車を「クリーンディーゼル」として宣伝していたため、このスキャンダルは典型的なグリーンウォッシュの例とされています。
### 2. **H&M**
ファッション業界でも、H&Mがグリーンウォッシュの例として取り上げられることがあります。H&Mは「Conscious Collection」というラインで、環境に優しい素材を使用した製品を販売していますが、全体の製品の中での割合は非常に小さく、同時に「使い捨てファッション」(ファストファッション)として環境に大きな影響を与える大量生産・大量消費のビジネスモデルを維持しています。H&Mは環境への配慮をアピールする一方で、その影響力を考慮すると、本当に環境に優しいと言えるかどうかが疑問視されています。
### 3. **Nestlé (ネスレ)**
ネスレは、プラスチック廃棄物問題に関連してグリーンウォッシュの批判を受けています。ネスレはプラスチック削減に取り組む姿勢を示していますが、一方で同社は世界最大のプラスチック汚染企業の一つとされています。ネスレが環境に優しいイメージを打ち出す一方で、実際にはプラスチック使用量が大きく、環境への影響が少なくないという点が指摘されています。
### 4. **BP (British Petroleum)**
BPは、「Beyond Petroleum(石油を超えて)」というキャンペーンを展開し、再生可能エネルギーへの移行を強調しましたが、実際には石油やガスの生産が依然として同社の主要事業であり、環境への負荷も大きいです。BPのグリーンイメージのアピールと実際の環境影響のギャップが、グリーンウォッシュとして批判される例です。
これらの企業は、環境に配慮しているように見せかけるキャンペーンを展開しながら、実際の行動がそれに伴っていないと批判されています。グリーンウォッシュは、企業の信頼性を損なうリスクがあるため、企業は環境対策に真摯に取り組むことが求められています。
それでは、今日はこの辺で👋
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