見出し画像

KREATOR-Terrible Certainty

 今日は僕が一番影響を受け、個人的に史上最高のスラッシュメタルの一角だと思っているこの名盤について話したいと思います。
 リマスター盤で買いなおしたんですが、ミレがこのアルバムについて色々話しているテキストがついてきました。超意訳ですが書いてあったことについても話したいと思います。ちなみに本作、本当はBlind Faithというタイトルにする予定だったそうです。細かい理由は思い出せないらしいんですがTerrible Certaintyになったとのこと。ミステリアスな響きで気に入っているらしい。

狂気的なスピードとメロディの両立

 リリースされた1987年という時代は、凄まじい量のスラッシュメタルの名盤が世に飛び出していきましたが、その中にあっても本作が突出した傑作であることは今日までの評価を見ても疑いの余地はないものと思います。
 冒頭を飾るBlind Faithはドラムソロから始まりメロディアスかつ切れ味抜群のリフをまとって狂気的というよりもはや魔術めいたようなスピードで突進していきます。その次のトラックであるStorming With Menaceもメロディアスで早く、As The World Burnsのようなミドルテンポの曲はありますが、基本全曲疾走してあっという間に駆け抜けていきます。
 同じく名盤であるPleasure To Killも狂暴でKREATORの名盤ですが、メロディは光るものがありました。元々ミレは独創的かつ優れたメロディセンスを持ち合わせていたんだと思いますが、そのセンスと初期からの暴力性が上手く結実したのが本作であると思います。メロディセンスは今日のKREATORで更に開花しています。今では聞かれなくなってしまった、Pleasure To Killと本作での狂気的なスピードの正体はなんなんでしょうか。初めて聞いたときは速すぎて何なのかよく分からないくらいでした。BPMを上げただけでは得られない正体不明の体感速度、これこそがスラッシュメタルの魅力だと思います。本作でたっぷりと味わうことができます。前のめりなドラムも異様な体感速度を感じさせる要因と思いますが、ちなみにPleasure To Killと本作の間に出したEPまでレコーディングの時にクリックを聞いていなかったそうです。本作では聞いているらしいですが、やはり前のめりな気がします。
 このアルバムのまとう雰囲気はまさに狂気的であり魔術的です。ミレのボーカルはテリブリーで断末魔のようだし、ギターのサウンドはささくれだちまくって突き刺してこようとしているようです。ドラムも生き急ぐかのように前のめりに叩いています。そのように完全に狂気じみた恐ろしいサウンドながら、美しいメロディが両立しているところが素晴らしいです。粗暴なパートと美しいパートと分かれているわけではなく、狂気じみながら美しいメロディを奏でているところが聴く側の琴線を打っているのだと思います。個人的な感想ですが、聴いていると古代遺跡で恐ろしい魔物に遭遇し魔術にかかったような気持ちになります。
 この後KREATORは演奏・編曲技術がどんどんと向上し、楽曲が複雑化していくことになり、メタルフェスでのヘッドライナーとなるようなビッグバンドに進化していきます。もちろん現在のKREATORは素晴らしいですが、初期衝動とスラッシュメタルのアグレッションは次作以降減退していきます。僕はKREATORのもつ狂気的なスピード、メロディ、初期衝動、アグレッションを全て高い次元で兼ね備えた最高傑作が本作であると思っています。
 ミレも本作がKREATORを次のレベルにあげてくれたと話していました(その割にはあまりライブで演奏してない気がしますが)。やはり気合が入っていたようで、このアルバムを作る時にアメリカのプロデューサーにお願いしたいと思っていたようですが(リックルービンに頼みたかったらしい)、ノイズレコードの社長に断られたそうです。全曲シングルカットしてやろうというような気合を感じるのも本作が好きな理由です。

これはもはやメロデスラッシュの元祖なのでは

 当時ここまでのアグレッションを持ちながら、ここまでメロディアスなリフワークを展開していたバンドはいなかったのではないでしょうか。スピードメタルのようにハイトーンボーカルと正統派メタル的なメロディを持つバンドはいましたが、今作はボーカルは歪の強いフライスクリームと正統派的ではなく湿ったメロディが聴かれます。僕はどこか2000年代流行したデスラッシュとの類似性を感じています。

素晴らしいアートワーク

荒廃した街並みの前で不気味に佇む魔人とその根城。素晴らしすぎませんか。ウィザードリィみたいでゾクゾクします。個人的な感想ですがファミコンのゲームの絵みたいでこういうの好きなんです(褒めてます)。レコーディングの途中で外に出たとき見た絵をすごく気に入ってそれをジャケットにしようと思ったらしいんですが、断られたそうです。なので似た絵を描いてもらったのがこれとのこと。

というわけで以上になります。
既にレビューしつくされた名盤であり今更ですが、いつか語りたいと思っていました。
昔ミレがインタビューで「2ndまでと雰囲気が違いますがどうしたんですか」と聞かれて、「Destructionみたいなアルバムを作りたかったんだよ」と話していた気がしたんですが、いくら探してもそのインタビューが出てこないので思い違いかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?