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エブリシングラリーの秘密に迫る!

今月に入り、堅調な米国経済指標を受けての米長期金利上昇につられる形で、ドル相場が堅調に推移する一方、通常であれば、ドル相場とは逆相関の関係にある金、銀などの貴金属相場も軒並み上昇している。また通常、金などの安全資産とは、逆相関の関係にあるリスク資産であるビットコインも史上最高値をつけるなど、多くの金融資産が上昇する状況をエブリシングラリーという。


1.貴金属相場が堅調な背景

金が今月に入り、図表1の通り、2023年12月に付けた史上最高値2,135ドルを上抜け、2,200ドル台まで上昇した背景のひとつに、金をめぐる需給の構造的変化がある。金供給が、採掘コストの上昇による採算の悪化で全世界的に金採掘業者の業績が悪化し、採算が取れない企業中心に生産を鈍化させることが見込まれている。一方、需要面については、ロシアによるウクライナ侵攻による米国の経済制裁の発動により、中国、ロシア、トルコ、インドなどの国々中心に、米国債を保有するリスクを懸念し、外貨準備に占める金準備比率を高める傾向が顕著になっている。こうした需給構造はマクロ経済環境の変化に左右されにくいため、金などの貴金属相場の地合いが強い状況が続くことが予想される。

(図表1 金価格推移チャート 右軸:単位 ドル/トロイオンス Trading View提供のチャート)

2.ビットコイン上昇の背景

ビットコインは、図表2の通り、2021年11月に付けた史上最高値68,569を抜け、3/14一時74,800ドルに迫り、新高値を付けた。ビットコインは、1月米国証券取引委員会(SEC)が従来のビットコイン先物ETFに加え、現物ETFを承認したため、証券会社の破綻リスクを負わないことで機関投資家等幅広い参加者に門戸を拓くことになり、莫大な資金が流入した。ETFが承認されたことで、長期資金が持続的に流入してくる可能性があり、先高観が強まっている。ビットコインが上昇しているもう一つの理由として、ビットコインの一日採掘量が半分に減る半減期が4月に迫っていることも買い材料とされている。

(図表2 ビットコイン推移チャート 右軸:単位 ドルTrading View提供のチャート)

3.エブリシングラリーの理由

足元は、好調な米国経済指標を受けて、ドル相場が堅調地合いにあるが、昨今のインフレ率の鎮静化を受けて、6月以降、米国が利下げ局面入りするとの見方が強まっている。こうした利下げ観測がドルの先安観を高め、金などの貴金属相場の先高観を強めている。また、将来的な金融緩和観測は、ビットコインなどのリスク資産にとっても、買い材料となることで、現在のエブリシングラリーが発生しているといえる。
その一方で、足元の米国の消費者物価指数と生産者物価指数に底打ちの兆しが見られ、市場の想定する利下げ観測が後退することで、金やビットコインが目先調整局面に入ることはあり得るシナリオである。
しかしながら、金やビットコインを巡る需給環境が良好な状態を考慮すると、中期的には、一層の上昇局面を迎える公算の方が大きいものと予想する。

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2024年3月19日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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