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想定外の利上げ再開が、カナダドル買いに火をつけた!

カナダの5月消費者物価指数が、市場予想の4.1%に対し、4.4%の上昇となったことで、カナダ中銀が6月7日3会合ぶりに、利上げを再開し、4.75%に引き上げたことは、完全に市場の想定外であった。以降、カナダドル買いが加速している。どこまで上昇余地があるか、考察する。

1. カナダが地政学的に有利な地位にある現状

昨年のロシアによるウクライナ侵攻以降のエネルギー価格の高騰は、図表1の通り、カナダの貿易収支を改善させただけでなく、欧州のロシアへのエネルギー依存を緩和させるため、米国と並んで、カナダが果たす役割は大きい。
また、好調な米国経済に引っ張られ、米国との貿易依存度の高いカナダには追い風となっている。

図表1(カナダ貿易収支推移チャート CEICからの引用)

2. カナダ好調な雇用情勢が内需を牽引

カナダの5月失業率は、図表2の通り、5.2%と過去最低水準に近い水準まで低下していることで、内需が堅調で、4月小売売上高が、前月比1.1%の大幅上昇となったことを受け、インフレ抑制の観点から、カナダ中銀は利上げを再開した。

図表 2 (カナダ失業率推移チャート CEICからの引用)

3. 今後の展望とカナダドル相場の行方

7月の金融政策決定会合でも、カナダ中銀による0.25%の追加利上げが見込まれており、米国との金利差縮小の思惑から、カナダドル買いが加速している。
カナダへの移民の増加も、今後のカナダ経済の拡大の上で、ポジティブに働く要因となっており、ロシア情勢の混迷など、地政学的リスクの高まり次第では、エネルギー輸出国のカナダに一層有利に働く可能性もある。
逆に、中国経済の減速などにより、今後、世界経済が停滞に向かえば、原油価格の下落が、カナダドルの上値を抑えることも考えられる。

4. テクニカル分析による予側

ドルカナダドルについては、図表3の通り、1.32ドルカナダドルミドルの前回安値を下抜けたことで、目立ったサポートレベルはなく、最大1.20カナダドルまで下げるポテンシャルがある。

図表 3 (ドルカナダドル推移チャート Trading Viewからの引用)

カナダドル円については、図表4の通り、昨年高値の110円ミドルに近づいており、ここを上抜けると125円にトライする大相場もあり得ることになる。もちろん日銀の金融政策の変更次第では、潮目が急変するリスクもあるが、当面、利上げ余地の残るカナダドル高が進行しやすい地合いが続こう。

図表 4 (カナダドル円推移チャート Trading Viewからの引用)

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20230628執筆 為替アナリスト 林 哲久











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