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20231020投資戦略

<世界進出から国内回帰>

  前回は、「世界的なサプライチェーンの見直しの過程で、輸出の主力である自動車や機械産業から、半導体や宇宙・航空産業などにおける電子部材や高品質素材などで競争力のある製品を持つ企業が見直されるのではないか。」と書いた。

 振り返れば、2001年の中華人民共和国(以下、中国)のWTO加盟で各国産業界の世界展開が一段と後押しされた。世界中でコストの安い地域への企業進出が進みサプライチェーンが広がった訳だが、ウクライナ戦争によって改めて世界の分断が始まったと考えるなら、大きな転換点を迎えたことになる。

単にコスト低減を求めて企業が散らばる世界からの巻き戻しが起きているなら、円安で日本での製造コストが下がっている現状では、再度日本への投資が増える過程に入ったとみるのが正しいのかもしれない。

 この観点から今後の各企業決算の推移を見て行こうと考えている。

  

<今下期はM&Aの動向にも注目>

 半導体では例えば、官民ファンドが買収したJSR(4185)を核とした半導体材料企業の再編や統合なども進みそうだ。

日本には貴重な要素技術を持ち、且つ世界的なシェアが高いにも関わらず時価総額の小さな企業が多い。国内市場で価格競争をして疲弊しているようでは、1990年代に衰退した半導体産業の二の舞になる訳で、それに懲りた半導体業界は、暫くは国主導での再編が続くのではないか。

  同様に機械産業にも技術力の割に売上高も時価総額も物足りない企業が多い。今年はニデック(6594)によるTAKISAWA(6121)への同意なき買収が話題となった。10数年前には加工機械技術を持つオギハラの一部工場が中国企業に買収され、その技術を利用した製品が日本企業のシェアを圧迫したことも記憶に残る。

 中国による造船や電気製品、新幹線の技術収奪など挙げればきりがない。

  電機産業分野では2009 年頃に、「もう日本には欲しい会社や技術が少ない」「欲しいのは要素技術だ」との話が中国企業からあったようだ。

 その直後に尖閣諸島問題が再燃し、中国がモーター製造に使うレアメタルなどの輸出規制をするとともに、日立金属(5486)に対して「レアメタルが欲しければ中国国内での生産と技術開示をしろ」と要求されたことなども話題となった。あの一件以来、日本企業は中国進出に際して相当慎重になった。

  日本では時価総額1,000億円程度で大企業とみなされている会社が多いが、世界では既に数兆円規模の買収が頻繁にみられる時代になった。数百億円程度の会社同士でシェア争いをしている場合では無いことは周知されつつあると思う。

 高い技術やシェアを持つ割りに低いバリュエーションや時価総額に放置されている企業には要注目である。

 20231020

執筆 社長兼助言部長 満平隆志

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