見出し画像

日経平均株価、今年も3月末上昇が続くのか?!

過去4年、日経平均株価は、3月半ばから月末にかけて上昇を続けており、今年も高値引けとなるか注目される。3月末上昇の背景と今後の日経平均株価を予測する。


1.3月末上昇の背景

日経平均株価が、3月末付近に向け上昇する理由として、3月は、配当・株主優待の権利付き最終日を迎える会社が一番多い月であり、権利取りのための買いが入りやすい月であることが挙げられる。また、機関投資家にとっても、決算月であり、利益確定売りがでやすい一方、運用成績をよく見せるための「ドレッシング買い」が出やすいなど、思惑が交錯する月でもあることが理由として考えられる。更に、「節分天井、彼岸底」の格言がある様に、年初からの上昇相場が3月決算前の3月中旬に一旦調整局面を迎えるアノマリーが効いている可能性もあろう。

2.今年の株高の特徴

今年は年初より、海外投資家の買いが中心となり日経平均株価主導で上昇し、1989年末の38,915円の高値を抜け、今月に入り史上初めて一時40,000円台に乗せる上昇をみせた。株価上昇局面では、海外投資家は、流動性の高い日経平均先物を中心に買い上げるため、時価総額をベースとしたTOPIX(東証株価指数)は、日経平均株価に比して出遅れる傾向にあり、現在も1989年に付けた史上最高値を更新できていない。その結果、NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)は、図表1の通り、15倍近くまで上昇しており、過去平均を大幅に上回る水準となっている。また、NT倍率が高い場合、裁定買い残(「先物売り、現物買い」の裁定取引のポジションを解消していない現物買いの残高)が積み上がる場合が多く、3/8時点で1兆7千億円を超えており、ここ数年で最高水準にまで膨らんでいる。これは、年初よりの日経平均株価上昇モメンタムが引き続き強いことを表している。

(図表1 日経平均株価、TOPIX、NT倍率推移チャート 出典:株式マーケットデータ)

3.NT倍率が低下するのは株価下落局面

通常、NT倍率が低下するのは、株価が下落して裁定買い残が解消される局面において発生する場合が多い。現在の過熱した日経平均株価が冷やされるリスクシナリオがあるとすると以下の2つである。一つは、来週の日本銀行(以下、日銀)金融政策決定会合において、より踏み込んだ金融正常化策が打ち出されて円高が大きく進行する場合、もう一つは、来週末の米国つなぎ予算の期限までに、民主・共和両党で安全保障を含む重要な歳出法案での合意が成立できず、政府機関閉鎖の事態に至り、金融市場が混乱する場合が考えられる。

4.今後の中期的な株価展望

3/8一部報道において伝えられた来週の日銀によるマイナス金利解除、イールドカーブ・コントロール政策の撤廃や月額の日銀国債買い入れオペ金額目標の明示などの金融正常化案は、今週日経平均株価が38,000円台前半まで下落した局面で一定程度、市場に織り込まれた。今後の継続的な利上げ方針を示せるに足る十分な支援材料がそろっていない現状を踏まえると、これ以上の株価調整は予測しにくいというのがメインシナリオである。
また、米国の金融政策については、3/12に発表された米国2月消費者物価指数が一部市場予想を上回る伸びとなったが、市場の6月利下げ開始織り込みに大きな変化はない。中期的に米国が利下げ局面入りする状況は、日本を含む世界の株式市場にとって追い風となり、来期以降の上場企業による好調な増益見通しと相まって、日本株が内外投資家の注目を集める状態が続こう。日経平均株価40,000円という節目も、単なる通過点に過ぎないと考えられる。

前回の記事はこちら

2024年3月14日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?