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どこまで上がる英国ポンド!

英国のインフレ再加速により、今後、数回の追加利上げが必要との見方が強まる英国ポンドに買い圧力が強まっている。大規模金融緩和を継続する日本円とのコントラストが激しくどこまで上昇余地があるのか、探ってみた。

1.イングランド銀行による追加利上げ余地

英国の5月消費者物価指数は、8.7%と市場の予想を上回った。また、5月コアCPIについても、7.1%と前月の6.8%から再加速する伸びを見せた。そのため、先月のイングランド銀行政策決定会合では、市場の予想を上回る0.5%の利上げが決定され、政策金利は、図表1の通り5.0%に引き上げられている。市場の予測では、年末には、6%以上まで引き上げられるとの見方も台頭しており、先進国の中では、最も金融引き締めが長期化する見通しとなっている。

図表1(英国政策金利推移チャート CEICからの引用)

2.英国ポンドの上昇余地

ポンド円相場は、図表2の通り、コロナ時の127円を底値に、右肩上がりの上昇を続けており、現在、183円台をつけている。チャート的には、2015年につけた196円がターゲットとなる。

図表2(ポンド円長期チャート Oandaからの引用)

3.英国の経常収支動向

英国の経常赤字は、図表3の通り、足元、縮小傾向にあるが、今年に入ってからのポンドドルの急反騰により、今後、経常収支が、再度悪化する可能性には注意が必要だ。

図表3(英国の経常収支推移チャート CEICからの引用)

4.英国ポンドのリスク要因

英国ポンドは、先進国通貨の中で、歴史的に最も変動幅の大きい通貨であり、今後も、急騰、急反落を繰り返す可能性が高い。特に、足元、英国のGDP成長率は、図表4の通り、限りなく0%に近づいており、更なる金融引き締めが英国経済を景気後退に陥らせる可能性もある。また、2020年の英国のEU離脱以降、EUとの貿易手続きが煩雑化し、EU圏からの移民の受け入れが難しくなったことで、恒常的な人手不足が発生するなど、英国の生産拠点としてのプレゼンスの低下が起こっており、中期的な英国ポンド安に繋がっている可能性もある。一旦、潮目が変われば、純債務国である英国から資金流出が起こることで、山高ければ、谷深しにならないか、注視していきたい。

 図表4(英国実質GDP成長率推移チャート CEICからの引用)

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20230710執筆 チーフストラテジスト 林 哲久





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