ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(24) 2020/3/30(和訳)

話 ベルリンチャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 アンニャ・マルティーニ

2020/3/30

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社会的距離を取り始めて1週間です。 もう既に、緩和を要求する声が聞こえはじめています。  スペイン、イタリア、アメリカでは、毎日、新型コロナによる感染者が増え続け、死者数も増加しています。 今日も、ベルリンシャリテ、ウィルス学教授クリスティアン・ドロステン 先生にお話を伺います。 聞き手は、アンニャ・マルティーニです。

先生、週末はどのようにお過ごしでしたでしょうか。 ご家族との時間は取れましたか?  論文などを読む時間もあったのでしょうか。

そうですね、、、、読む時間は残念ながらありませんでした。

電話が、、、いつものように、ひっきりなしになっていたのですね。

いつも、なってますね。電話対応が求められる要件は、常にありますから。

大きな問題も、、、なかにはありましたか?

いや、先週末にはありませんでした。  私が思うには、今、各自が、この新しいシチュエーションに慣れていく努力をしているところか、と。  そして、幸いなことに、ドイツでは、はやい段階でこの対策に踏み切りましたから、国内の、感染濃度が高い地区でも、比較的状況は良いです。 隣国と比べても、、、です。

それでも、医療関係者は、今のシチュエーションを、波が引いていく様子を海岸からみていて、この波がどの位の高さで戻ってくるのか、、、それがわからない恐怖、と描写しています。 今、私達は、、、どの地点に立っているのでしょうか。

まさに、いま、その状態で、例えば、ベルリン市内、ベルリンシャリテ大学病院でも、現時点でそこまで重症患者がいません。  勿論、病院内では、(新型コロナ用に)準備は万端でそのためにベットも確保しています。 これは、病院側の経営面でみると、かなり厳しいことです。   今、あらゆるところで経済的なダメージが発生していますが、病院も例外ではありません。 病院は、産業ですから、毎日出る損害は大きいですし、専門スタッフがいつ始まってもいいようにスタンバイしてしています。  そして、、、頭の片隅では、、、始まらないように、、と祈っているのです。   とても難しいシチュエーションです。   もし、、、波が来るのであれば、その波にのまれないようにしなければいけませんし、 (波がこないで)濡れなかったとしても、、、格言にもあるように、there is no glory in prevention (予防に栄光はない) 未然に防いだ場合には、、、、何を阻止したのかがわからないので、ありがたみはないのです。 しかし、少し、外国などに目を向けてもらえば、、スペインやイタリア、誰もがバカンスに行ったことがある国でしょう、、今、大変な状態の国々の、、その様子見れば、、、何が起こる(可能性がある)か、がはっきりわかると思うのです。  来週あたりのアメリカもそうです、ドイツと同じように医療が進んでいる経済大国が、、数週間だけ対策が遅れただけで、、あのような危機に陥るのですから。

外国の状態をみていきましょう。 イタリア死者数は10779名、感染者数の増加は少し減少しましたが、スペインでは死者数6500名、ニューヨークには、数えきれないほどの感染者、、、、、どうしてドイツはそれに比べると良い状態をキープできているのでしょうか。

このポッドキャストでも、、、何度かお話していますが、ドイツは、初期の段階で、広範囲に渡って診断検査を行いました。  そこで、かなりの数の感染ケースをは把握することができたのです。  そして、はじめに、ミュンヘンのケースがあって、ここで、全力を尽くせば感染を封じ込めることができる、という成功例をつくることができた。  感染をコントロールできたわけです。   全国の保健所が、あの時に姿勢を正し、全国のラボが検査をする体制を整えました。  その後で、バーデンヴルテンベルクとニーダーラインで、感染が確認されたときにも、すぐに対応することができたのです。  そこで、軽症の感染者の把握があって、、現在に至っています。   検査が遅い、検査が足りない、という批判をする人は、他の国の状態をみてほしい。 ドイツの診断体制は優秀です。   この、優れた診断技術は、違うところでも確認できます。 ドイツの感染者の平均年齢は若く、48歳です。  他の国では、もっと年齢が高い。  イタリアでは、ずっと平均年齢が、81歳でした。これは説明がつかないでしょう。普通に計算すると、100歳がいないといけないので。 でも、ここには、別の要因があって、検査速度が遅い、ということだけではなく、勿論、これも大きな原因ですが、、今回のウィルスは、、院内感染するウィルスだ、という事です。 これは私が、コロナウィルス全般、他のコロナウィルスやMERSなどの専門家なのでよくわかっていますが、通常の感染以外では、もう既に、高齢で持病持って入院している患者が病院内で感染するリスクが非常に高い。  介護施設でも同じことがいえます。

ドイツでも、(介護施設での)感染がおこりましたね。

そうです、ありました。そのような施設には高齢で持病を持った人が大勢いるのです。 そこで、(集団)感染が起きた場合、、、検査数とは関係なく、平均年齢がぐっとあがります。  とはいっても、基本的に、把握感染者数は、感染平均年齢に現れます。  多くを検査する、という事は、軽症者を数多く把握する、という事ですが、、、軽症者の多くが若者です。

今のところ、ドイツでは、高齢者の感染を比較的防げていますが、今後、増加して重症者も多くなっていきそうでしょうか。

残念ながら、、、そうなるでしょう。 今現在の効果は、(ロベルト・コッホ感染研)ヴィーラー氏も指摘されていたように、、、、少し感染経路がラッキーだったかもしれません。 はじめにウィルスを持ち込んだのが、カーニバルから逃れる為にイタリアに行っていた人たちだったのですが、多くがスキー旅行とかだった訳です。 これは若い世代です。若い世代の交流範囲は同世代が多いですから、その世代間で感染が、、、これを、第一次感染の波、と、いうか、、、第一コホート、と言っておきましょう、若い世代で感染が多かった。  それが、これから変わっていきます。 介護施設で感染がはじまり、これから新しい展開になっていくはずです。  このような様々な要因から、死亡数も増加すると思われます。  もう既に、統計では数字で出ていますが、 致死率は、以前の0、2〜0、4%ではなく、、、0、8%位になっています。  これは、今、別の年代が感染し始めている、ということと、増え続ける感染数に検査が追いつかなくなっている、ということの結果です。

もう、これ以上検査する事は無理なのでしょうか。

今現在の検査数を、これ以上大幅に増やす事は、、、現実的に考えて不可能です。

しかし、シュパーン保健相はそのような方針ですよね。 検査、検査、検査、さらに、検査、という

それは、方針としては正しいですが、、、ただ、検査、検査、検査しまくる、というのではなくて、絞って検査する。 本当に、問題があるところを、、重点的に検査する。  これは、これから益々重要になってくるでしょう。   検査といえば、これから、血清学的な検査も実行され始めますし、この場でもお話しましたが、、、技術的にみて、PCR検査でいえば、、、今現在、1週間で50万件検査していて、 全国の組合と大学病院のラボをあわせた総数ですが、、、これは莫大な数です。    この検査体制は、可能な限り続けますが、これ以上は、、、製薬会社の生産体制も追いつきません。  ドイツは、そういう面では恵まれていて、早い時点で発注と供給体制を整えていたので、検査薬の供給がスムーズに行われています。 しかし、この状態がずっと続くか、と言われると、そうではないように思うのです。  現実的にみて、このまま検査薬を増産する事は不可能です。 これ以上は無理だ、という現実を受け入れてなければいけません。      この調整は、中央から指令がでて、全てがそれに従う、というように簡単にいくわけではなく、専門家が連結して検査の効果的な配置を検討していかなければいけません。  勿論、今週、なにか大切な事を見逃して手遅れになる、とかそういう事ではなくて、、、、データ分析され、対策が検討され直され、調整される際に、、、、イースターの後位ですね、 その際に、このような検査方法の見直しは必要になってきます。

ロベルト・コッホ感染研究所のヴィーラー氏は、それでも、まだイタリアのような状況になるリスクはある、と警告していましたが、、

彼の見解は、、、他の専門家も同じようにみていますが、、、、シュミレートモデルというのは、長いスパンでの予測なのです。 具体的な予測は数日後までしかできませんので、それ以降の予測はそういうシナリオが可能、という予想です。  そこでは、現状との比較には使えますが、はっきりとした数値、というものはだせません。    例えば、重症患者数が収容能力の8倍になるか、12倍になるか。 となったら、その場合は、8倍でも、12倍でも変わりはない。 このシナリオを避けるにはどうすればいいか、ここが重要です。  このシナリオではないのであれば、どれか。 全体の負担を40〜80%に抑えるようなかたち。 ここに持っていく為に専門家アドバイスとともに政治的な決断がされていかなければいけないのです。    しかし、5月15日には、25000台の集中治療ベッドが埋まるだろう、というような計算をするのは、、、、怪しいです、

私達は、接触制限を、、、1週間やり遂げました。 頑張ったと思うのですが、週末にはもう既に、いつ、通常の日常生活を送れるようなるんだ、という声もあがりはじめました。  このような声を聞いた時に、いや、まだ早い、もう少し我慢してくれ、と思いますか、それともどのようなご意見でしょうか。

私は、、、憶測的な、、発言はしたくありません。 それは今までもしていませんし、フェアではないと思うからです。  連邦首相府のブラウン氏が金曜日に言ったように、4月20日が節目であり、それまでは憶測を立てないこと。  それまでには、はっきりとした数値も出てきません。   
学校を閉鎖して、イベントの禁止して、5人以上で集まらないようにして、、、州によって制限内容多少のバラツキはありますが、、、、そして、最終的に、外出制限がでましたが、このような対策をとってから、、、まだ、潜伏期間が一回りしたくらいの時間しかたっていません。  しかも、一度に一気に制限されたわけではなく、徐々に出来るだけダメージが少ないように制限されて来ているわけですから。   それに慣れるのにも多少の時間はかかります。 多分、皆、まだ適応の模索中でしょう。
その中で、まずは、一定期間、特定の日にちまで、実行して、観察する。 それから改善、具体的な調整にはいる。  そのなかには、対象を絞った検査方法含まれるでしょう。  徐々に今の広範囲から絞ったかたちへ、とです。この観察した結果から決断する。 そして、今の静かな期間を使って、次に備える。どこをどのように準備すればよいのか。どのシナリオが現実的か。どの部分を足す事ができるか。  どのモデルだと、計算できるか。    学術的な計算には、、時間がかかります。 ここのシュミレートモデル、計算というのは、疫病学的なものですが、これも全体的にとらえなければいけません。                                                                                 週末に、ドイツ倫理委員会が出した表明に目を通す事をお勧めしますが、そこにも、はっきりと、決断は科学が下すものではなく政治的な判断である、と述べられています。   研究者に決断を委ねられても、適切な判断はできないでしょう。  科学は、データです。  そのデータの信憑性の保証と、限界を提示することはできますが、 それ以上ではありません。 勿論、説明を試みる事はできます。オープンで知識欲のある層を対象に。 今、多くの専門家が、試みていますが、その為に過大評価もされがちです。  研究者は、民主主義的に委任された、、政治家ではないのです。 政治家は選挙で選ばれます。 研究者は、政治家ような決断を下したい、となど思っていませんし、この決断は正しかった、これは間違っていた、次はこのような決断がいいだろう、、などとジャッジしようと思っていません。   誠実な研究者からこのような発言聞く事はないでしょう。    勿論、今、色んなことを考えてしまうのはわかります。 4月の20日までは、特に。                                                           ブラウン氏が言うように、今、社会全体が少し落ち着いて、感情的にならないようにしなければいけません。
新聞では、もう文字だけではなくて、絵を使って、、、ウィルス学者の風刺画が出回っています。  漫画になった自分をみると、、、本当に気持ちが悪くなります。  このように、印象操作為に悪用する行為に、激しい怒り感じます。  これが、私が先週、インタビューを受けなかった理由でもあります。 テレビにも出ませんでした。  一回会見には出ましたが。   この、つくられた像、実際とは違う投影された学者のイメージ、私だけではなく、他の学者への向けられた間違った認識です。   昨日届いたメールでは、ヘッセンの財務相の自殺の件で責められました。   このことから、もう限界がきている、というか、もうすでに、公の理性の判断の限界越えている、と思うのです。  そろそろ、私も大きな問題感じますし、学術研究にとっても問題です。  政治サイドからも、学者サイドからも、双方から、決断は政治的な決断である、という明確な定義があるのにもかかわらず、決断を下す学者、というイメージをメディアはつくり続ける。 このままこの状態が続くのであれば、、、、学者が(公の場から)退く必要性もでてくると思います。

専門家アドバイスは政治には必要だけれど、それ以上ではない。 政治家が政治的な決断を下す、ということですね

政治家は、様々な分野専門家からの情報を元に、決断しています。  今は、とてもバランスよく動いていると思っています。  分野が違う学者同士の間でも、競争やライバル意識はありません。  これも、メディアでそのように報道されているだけです。   トークショーなどでは、わざと隣に座らされれて、違う分野の専門家同士で言い争い期待される。 幸いな事に、学者はそれには乗らないのですけれど。    この、争いを挑発するような風潮をみていて思うのですが、、、今、私達も、社会も、まだ平和なのでしょう。 メディアがそこまで煽ろうとしている、ということは。   この展開には具合が悪くなりそうです。  今後、ドイツでも、心地が良い状態が続くわけがなく、悪くなるでしょう。  最悪の状態は勿論避けたいですが、、、限界に近づくと思います。 医療的な面にも。 その影響がありとあらゆるところに出てきます。    メディアの責任について言っておきます。   私のような、公の注目を必要としない人間、、、 学術研究では、ポッドキャストやツイッターのフォロワーの数では評価は上がりません、 全く逆です、、、そのような学者にとっては、過度の注目を浴びる事は、リスクのほうが高く、今後のキャリアにも悪影響を及ぼすことが多いのです。  なぜなら、公の場では、簡単に説明しなければいけません。 これは学者的にはしたくない事です。  でも、それを、私は敢えてしています。    それは、私が、この分野(コロナウィルス)を専門に長い間研究をしていて、(この分野の事であれば)どんなことを聞かれても、正しく回答することができるからです。  もし、そうでなければ、はじめからしてません。  この、狭い分野、疫学的コロナウィルス、という専門です。  テーマが、インフルエンザだったら、、、していないでしょう。 これが、理解してもらえない。 大変厳しい状況です。

この、大変な時期に、、、専門以外の事で頭を悩まさなければいけない事が、、、大変残念です。  また、専門的な話題にもどりたいですが、、、ミュンヘンケースについてです。  パンデミックの初期の段階での感染ケースですが、ここで何がわかったのでしょうか。

これは、とても興味深い論文で、すでに発表されているので読む事ができますが、ミュンヘンの自動車関係の会社でおきた(ドイツ初の)感染ケースについてです。    ここで、重要な事は2つあって、 1つ目は、、、感染率です。  家族間の接触以外、、、友達と会ったり、といったコンタクトですね、若い世代が多かったのですが、その感染率は、10%でした。いわゆる、attack rate 発症率、ですね。 感染リスクが高かったのは、職場とプライベートのコンタクトでした。  ここでは、217名の接触者のうち、11名が感染しましたが、全員症状がありました。 熱、咳、など軽症の症状です。  症状は詳しく記録されたので、なかには、軽い喉の痛み、なども含まれます。  この中で、1名のみが、全くの無症状でした。  その他の(ほとんど無症状の)患者も、気づかないほどだったとしても、なんらかの症状はでていました。     濃厚接触の場合は5%、濃厚接触とは、15分間、対面、です。 話す距離での対面です。 普通に話をする距離で、15分間、これが、ハイリスク接触です。     そのなかの1ケースは、、、これは、検証できたのですが、社員食堂で、2人が背中あわせに座っていて、1人が塩をとってくれませんか? ともう一人に聞いた。 この背中あわせに食事しただけで、感染するには十分でした。  興味深いです。 このような、職場での接触では、5%が感染しました。   このデータは、多分、日常でも参考にできるのはないかと思います。 

対人距離をとる、ということですね。

そうです。距離です、 この場でもお話ししましたが、対人へ配慮としてのマスクは重要です。  勿論、未だにマスクは不足していますし、これに関しては、誰のせいでもありません。 政治せいでもないです。  市場のメカニズムが、高速で修正されなければいけないのです。マスク調達もそうですが。  いずれ、マスクは入荷します。入荷しますが、まずは医療必要な分だけです。                                            自分でつくったマスク、もう既に、ネット上でいろんな布のマスクは買えますし、今、時間があるわけですから、そのようなものをつくって着ける、というのはとても良いアイデアだと思います。  周りへの配慮、礼儀。 自分が、自覚症状がなく感染しているかもしれない、という意識。 それを(マスクを)することによって話す時に唾が飛ばない。  咳をしても、飛沫が飛ばない。 とても、社会的配慮がある行為だと思います。
週末、ベルリンで二回買い物に行ったのですが、オーガニックスーパー、ドラックストア、などでは、私と、あと、数人しかマスクをしてませんでした。 そして、周りは変な目で私たちをみていました。  社会の受け入れ度はまだこの程度です。  マスクを縫おう、マスクをしよう、というイニチアティブに賛同していますが、現実は、ツイッター上とは違います。 まだ、 配慮的な行為だ、ということの認識も浸透していません。 

まだ、もう少し、、、かかりそうですね。  引き続き、我慢、引き続き、距離をたもって、、、マスク縫いましょう。 今日もどうもありがとうございました。

ベルリンチャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/

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