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α9Ⅲ グローバルシャッターをやんわり解説

ローリングシャッターとグローバルシャッター

 下の写真は、アジサシの仲間だ。水面で小魚をついばんだ直後に、めいっぱい伸ばした翼を力強く振り下ろす瞬間だ。鳥の運動のなかでも、もっともエネルギーを消費する瞬間であることが見て取れよう。
 ミラーレス1眼カメラ ソニー α1 で撮影し、搭載されているメシャッターと電子シャッターのうち、電子シャッターで切り取った1枚である。電子シャッターでは秒間30コマの連写ができ、撮影中でもファインダー内で像が消えないブラックアウトフーリーの状態で見ることができる。かつ、シャッター音を消すことができるなど野生生物の撮影、とりわけ動きが俊敏な被写体には向いている。しかし、電子シャッターはローリングシャッターとも呼ばれ、ローリングシャッター方式ならではの撮影画像に歪みを生む現象が出る場合がある。その画像の歪みがどのように生まれるか、下の写真で説明してみよう。

ローリングシャッターが歪みを生む理由

ソニー α1/FE200-600mm F5.6-6.3 G OSS
f8.0 1/2500秒 ISO 1250  4月  スリランカ

 上の写真は、横位置で撮影した画像を、縦長にトリミングしたものだ。ローリングシャッター方式では、画像を撮像面の上部の画素から順に読み出すため、高速で動く被写体を撮影する場合、像が歪むことがある。アジサシを撮影時に、この画像を上部の画素から読み出して順に下へ進むあいだ、アジサシの翼は振り下ろされていく。読み出しに時間がかかってしまうと、振り下ろす翼が U の字のように湾曲して記録されてしまうのだ。電子シャッターを初めて手にして試した当時、鳥の羽ばたきなどの高速な被写体が、違和感ある形で撮影されてしまうことがあった。しかし、現在使っている α1 は、どんなに動きの激しい場面であっても、違和感ある撮像結果となった経験は一度もない。上から下への画素の読み出しが極めて高速で行われるためだろう。厳密には歪みを生じないわけではないだろうが、問題にならない微々たる歪みしか生まないぐらい飛躍的に技術が進歩したのだと理解している。
 一方、グローバルシャッター方式では、全画素を同時に露光し、読み出しを行うため、高速で動く被写体であっても像が歪むことが仕組み上ありえない。この二つのシャッター方式を、ソニー公式サイトでは下のような図で説明している。

ローリングシャッター方式(電子シャッター):上から下に画素を読み出すため画像に歪みを生む場合がある
グローバルシャッター方式:画像全体の画素を一度に読み出しするため画像に歪みが生じない

最新の BIONZ XR & 新開発の CMOSイメージセンサー Exmor RS

 これまでの α ボディには、電子シャッターとメカシャッターの両方が搭載されてきた。だが、α9Ⅲ はグローバルシャッターのみの搭載となる。では、これまでのシャッター方式の技術的課題を、今回のグローバルシャッターが一気に解決するところまできたのだろうか。そして、グローバルシャッターが生む優位性とは、α9Ⅲ において具体的にどのようなものか。

  • 秒間120コマという驚異的な高速連写

  • 静止画の単写では最速1/80000秒(連写1/16000)の驚異的な高速シャッタースピード

  • 高速シャッターに同調するフラッシュ撮影

  • フリッカー現象を気にしなくてもいい屋内証明下での撮影

  • ほか

 従来比最大約8倍の高速処理能力を持つ最新の画像処理エンジンBIONZ XRが果たす役割は大きいという。秒間120回の高速連写の最中に、もちろんブラックアウトフリーを実現し、すべての静止画撮影モードにおいて14bit RAWの高画質記録を可能にしている。
 新開発イメージセンサーの最高約120回/秒の演算により、複雑な動きでスピードに緩急のある被写体でも、従来モデル以上に高い精度でAF追随し続け、急激な輝度変化に対してもAEが即時対応するのだそうだ。また、連続撮影中も絶え間なく測距することが可能で、精度の高い追随性を維持し続けるという。そうなると、時速160kmで緩急や方向転換を交えながら飛翔するアマツバメの空中捕虫を切り撮ってみたいし、光の条件が複雑な海面を駆け抜けるケイマフリや輝く水面を飛ぶカモメ類などを追随してみたくなる。
 屋外はもちろんのこと室内スポーツ、自動車レースなどにも、α9Ⅲ はその能力をおもしろいほど発揮するに違いない。理想的なのは FE300mm F2.8 GM OSS との組み合わせであるはず。このレンズの生産が、早く需要に追いついてほしいと切望する人はかなりいるはずだ。

有効約2460万画素、 ISO 250 - 25600

 α9Ⅲ にグローバルシャッター方式を採用するにあたり、新しく開発されたのが有効約2460万画素メモリー内蔵フルサイズ積層型CMOSイメージセンサー Exmor RS(TM)だ。やや控えめな画素数だがその数を増やせばその分、様々な処理能力を高める必要がある。α9Ⅲ は6Kをカバーする画素数の実用化であり、4K動画をSuper 35mm で撮影できるレベルまでもってきた形だ。4K動画撮影にとってとてもありがたく、静止画撮影にはもっと画素数があった方がトリミングなどの後処理に有利といえる。
  α9Ⅲ 発表当初、常用ISO感度が静止画撮影時で ISO 250 - 25600 (拡張: 下限ISO 125、上限ISO 51200)であることが、おおいに話題を呼んだ。高感度ノイズへの不安視がその理由だが、ソニーストアからの α9Ⅲ 撮影データ持ち帰りが可能となってから、少しずつ情報が出てくるようになった。下記にリンクを貼ったyoutubeサイトを見てみると、α9Ⅲ と α9Ⅱおよび他社カメラボディとの感度ごとのノイズ比較をしている。それを見る限り、 私は特に問題なしの範囲と感じた。私の明確な判断は、実際に撮影してからの少し先となるが、いずれにせよノイズへの懸念がグローバルシャッターの革新部分を打ち消す要因にならないと確信を持てた。
 α9Ⅲ で産声を上げたグローバルシャッターが、さらに技術を向上させてどの仕様を進化させ、2号機としてどのαシリーズに搭載されてくるか楽しみだ。α1 Ⅱ あたりと予想する声が多いようだが、果たしてどうなるだろうか。

Youtube α9Ⅲ ノイズ比較検証

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