見出し画像

「どうぞ自分んちだと思って!」

そうだ、亡きオフクロの決まり文句たったな。

友達を連れて帰ると、必ずこう言って麦茶を差し出した。

ここは、千葉県郊外、夫婦で有機農家を営む友人宅。奥さんが何度もこの台詞を繰り返した。

"農作業と自然食による治療と今後の事業展開への示唆を得る"ことが題目であり、今後も通うことでその目的は想定以上に充足されそうだ。詳細は別稿に譲りたい。

感激したのは、そのもてなし、いや歓待だ。僕が泊まったところで、農園に何の宣伝効果もメリットもない。

何の変哲もない築50年、こじんまりとした昭和の郊外戸建。

ところが。

「うまい!」と言えば、「まぁ、うれしー!じゃおかわりを!こちらもどうぞ!」、おみやげで用意してくれた手づくりケーキに、「今、食べたいくらいい美味しそう」とため息交じりにつぶやけば、「せっかくだから、おいしい珈琲で、今食べちゃいましょ!伸ちゃん(親友の旦那のこと)淹れてあげて」(ニコニコと準備に入る旦那)、「いい湯でした」と言えば、「それはよかった。わたしも43度くらいが気持ちいいし。冷たい麦茶でも!お布団の配置変えときました(入浴中、夫婦で和室の布団を動かし、座椅子をセット)」、エトセトラ(枚挙に暇なし)。

その所作、かけてくれる言葉に全くリキみがない。友人は元々リキみがない。媚びるところもない。自然体。それでいて、出し切って、歓待してくれているのがわかる。

縁側から部屋に住みつき、子をなしたというネコ5匹も、気ままに、ダイニングを出入りし、名脇役として舞台袖を飾ってくれた。

そんな屈託なく、自然で、懸命さ溢れる姿勢を忘れず、工夫を重ねていけば、商売も繁盛するよ。

帰路、友人が営む中野の移動珈琲店に自然に足が向いた。「お礼においしい珈琲でも」。特選の焙煎珈琲を購入、配送手配した。

夕方の風は、もう秋の気配。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?