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#1549 個別と協働の一体的な充実で目指す子どもの姿と見取り

今回は,『「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」の実現を図る手がかり―子どもの見取りをどのように行い,単元計画や学習指導の改善をどのように行うか―』という教育論文からの学びを整理していく。

令和の日本型学校教育では,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が求められるようになった。

しかし,この「一体的な充実」という言葉はとても抽象的であり,具体的に子どもたちのどのような姿を授業で目指せばよいのかが不明確である。

そこで上記の論文を参考にしたい。

ここには,「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」を図る学習で期待される子どもの言動・様子を次のように規定している。

①子どもが自分に正直になって,環境である「ひと・もの・こと」に
 関わり,自分の眼の付け所を生かして活動(学習)する言動・様子
②一人一人の特性(自分の強み)や学習進度,学習到達度等に応じた
 学習活動を展開する言動・様子
③自身の不十分・不確かなことに着目し,自身の活動(学習)が最適
 となるよう調整する言動・様子
④多様な他者と協働しながら,自身の不十分・不確かなことを確かな
 ものとする言動・様子や,他者を価値のある存在として尊重し,困
 難・変化を乗り越え粘り強く取り組もうとする言動・様子

そして,上記のような子どもの姿を見取るための考え方と方法を,平野朝久氏の書籍を参考に以下のように示している。

(1)見取りの考え方
①子どもは同じ言葉を使っても,子どもが異なれば,
 その言葉の意味も異なる。それぞれの子どもの側に立って
 言葉の意味を読み取る(共感して見取る)。
②言語的な表現と非言語的な表現を合わせて見取りの根拠や
 手がかりとすることによって,より的確な見取りに近づく。
③子どもの内面は,ある一時に示された事実だけで理解しようとすれば,
 誤解する可能性も高い。長い時間経過の中で,
 子どもの生活全体の中で事実からわかることをつなげて総合的に見る。
④研究対象児(抽出児)について,詳細に事実を記録し,
 その子どもを深く,丁寧に見取ることを通して,見取る力を高め,
 他の子どもをより適切に見取ることができるようにする。

(2)見取りの方法
①子どもが思ったり感じたりしていること等について,
 教師も同じように思い,感じるようにしてみる。
 つまり,第一人称で,その子どもになったつもりで
 己の心の内を語れるようにする。
②授業や日々での子どもの言動や行動からの読み取りを関係づけて,
 子どもの全体像が語れるようにする。
③人には「説明のつかない行動」があり,行動の原因は,
 当人の「心の中」にあるとは限らない。しかし,解釈は,
 相手を枠にはめてしまうことであり,自身も相手に対する行為を,
 特定の枠内に固定化することになるので,子どもの内面を
 行き過ぎた解釈をせずにありのまま受け止めるようにする。
④見取りは,常に仮のものであり,絶えず修正していくものである
 と認識し,他の教師等による見取りとつき合わせながら,
 より的確な見取りを求め続ける。

以上のような「見取りの考え方と方法」を活用し,「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る学習で期待される子どもの言動・様子」を見取るようにするのである。

これは教師にとって,高度な技術と大変な苦労を要するだろう。

そして,上記のような「理想の姿」を設定し,上記のような「適切な見取り」をすることで,それを単元計画や学習指導の改善に活かすことができるようになる。

これが,子どもたち一人一人の資質・能力の育成につながっていくのだ。

ぜひとも,この学びを日々の授業実践に活かしていきたい。

では。

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