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universe last a ward × AGAINST THE GRAIN × lee(asano+ryuhei) × 1Co.INR 4way split "START TODAY" レビュー

福岡のハードコアバンド「UNIVERSE LAST A WARD」が、ハードコアとヒップホップを中心に、様々なジャンルの音楽をクロスオーバーさせるイベント『START TODAY』。
2022年には全国各地で「START TODAY EXTRA」として同イベントを開催しており、そのツアーに帯同する広島~福岡の計4アーティスト(各2曲)によってイベントのカラーを色濃く反映させたのが、この会場限定発売のスプリット盤である。

ジャケットは「lee(asano+ryuhei)」作

先鋒は岩国のトラックメーカー「1Co.INR」。

二刀流にとどまらない

後にも紹介する、広島のハードコアバンド「AGAINST THE GRAIN」ではVo.を務めるというユニークな立ち位置だが、出自がバンドということも含め、弦楽器から鍵盤、ドラムに管楽器までをも一人で操り、凡百のトラックメーカーたちから頭5つ分くらいは抜き出たポテンシャルを持っている。時や季節の移ろいで変化する光景が思い浮かぶような、一瞬の空気感を切り取る能力には目を見張るものがあり、今作でもシルキーな手触りで色気漂うムーディーなトラックに、ビートが揺れる煙たいスモーキーなトラックと、彼の魅力を知るには十分な2曲が提供されている。

6/3発売『Enough Said』
released  by JAZZY SPORT

作る楽曲のレンジはかなり幅広く、毎日のようにSNSに音源をupするなど界隈でも屈指の多作ぶりで知られ、6月にはJAZZY SPORTからフルアルバム『Enough Said』を発表するなど活躍の場を更に広げているので要チェック。名機サンプラーRolandのSP404sxを使用したアグレッシブなライブパフォーマンスも一見の価値アリだ。

■Twitter
https://twitter.com/23iwkn
■Instagram
https://www.instagram.com/1co.inr/


お次は前記した「1Co.INR」がVo.を務める広島のハードコアバンド「AGAINST THE GRAIN」。

2018.7.21 at Hiroshima SPYDER
" CROSSOVER vol.2 " photo by @azumi0402

メタリックなハードコアにおいてのキャッチーさとはこういうことだと強く提示せんばかりに、重心低めでストンピンに跳ねまくりながら縦横にガシガシ刻みまくる楽曲と、タイトに粒立ちの良いリズム&弦楽器隊、そして1Co.INRがグルーヴィーにアジテートする歌乗せ、それぞれがGOODケミストリーを起こしている2曲を収録。海外でいえばMUSHMOUTHやKRUTH、STREANGTH FOA A REASONなど90'sペンジルバニア的な郊外の匂いのするモッシュコアを感じさせ、国内ではFACECARZにも通じるような鋭くもヒップな軽やかさを兼ね備えながら、キッチリと2022年におけるフレッシュ感やモダンアップデート感も搭載。

VIOLENT DANCING 082

収録2曲目の最後には、BULLDOZE&HOMICIDALへのリスペクトとオマージュを強く感じさせる3段落としビートダウンパートが待っており、ライブではフロアの限界まで広がったモッシュピットが想像できる仕上がりに。

■Bandcamp
https://againstthegrainhchc.bandcamp.com/
■Twitter
https://twitter.com/axtxg_hc
■Instagram
https://www.instagram.com/againstthegrain082/


そして福岡に飛び、トラックメイカー/ラッパー/画家という様々な顔を持つアーティスト「lee(asano+ryuhei)」。

一面性と多面性

妖艶さをも感じさせながら空気感を一変させる繊細な音使いや絶妙な音揺れ具合、スキルフルなラップにチョップ&スクリューなどの手法を用いた磁場の曲げ方など、いずれもB-BOYでありながら画家という側面のフィルターを通して聴くことで、彼の魅力をより独特で奥深いものへと繋げていく。今作のジャケットアートワークやこれまでのUNIVERSE LAST A WARDの各種アートワークも担当するなど、音だけでとどまらずに描き出す世界観そのすべてが、彼自身の内面や矜持といったものを浮き彫りにするかのようだ。

MF DOOM MASK

盤の最後を締めくくるトラックでは、誰もが聞き馴染みのある大胆なサンプリングを披露。MF DOOMの仮面をかぶり、フィジカル面でも解き放ったように魅せるエネルギッシュなライブも必見である。

■Bandcamp
https://leeeeee.bandcamp.com/
■Twitter
https://twitter.com/000lee000
■Instagram
https://www.instagram.com/asanoryuhei/


最後にイベントの主催であり本スプリット作の首謀者でもある福岡の「UNIVERSE LAST A WARD」。

通称ULAW

ひたすらエッジ―&モッシーに、REPRISALやARKANGELなどに代表される往年のユーロFURY EDGE的な要素を主としながら、ライブではカバーも披露するSENTENCEをさらにマッチョ化させたような、これでもかと前のめりに攻めまくる2曲を収録。バンド初期で押し出していた叙情的な面は、フレーズではなく展開に込めるようなスタイルに変化しており、また違った感触でのドラマチックさを孕んでいる。自らの矛盾と向き合いながらも、憎しみや敵意剥き出しで煽り立てる日本語詞Vo.も相まって、世界でも類を見ないであろう唯一無二のキメラ感は、良い意味でドメスティックな輝きを放つ。

2022.03.19 START TODAY EXTRA KYOTO
photo by @piikann38_photo

そしてどの地方に行っても自分たちのローカルに変えてしまうような、空間支配力と包容力に長けたライブも非常に魅力的である。

■universe last a ward × AGAINST THE GRAIN × lee(asano+ryuhei) × 1Co.INR
4way split "START TODAY"

▼TRACK LIST
1.Incence / 1Co.INR
2.Sweat Shirt / AGAINST THE GRAIN
3.Get Stoned 2022 / AGAINST THE GRAIN
4.Pigs / 1Co.INR
5.fas f / lee(asano+ryuhei)
6.never mind,never change / universe last a ward
7. Black Mirror / universe last a ward
8. sakura sakura / lee(asano+ryuhei)

各アーティスト×2曲=計8曲
会場限定500枚 価格 ¥2000

■BASE店舗(※ネット販売は下記のみ)


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