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【HSCが不登校の原因に?周りからの刺激に敏感なお子さんの特徴と親ができる対応をご紹介】

HSCとは「環境感受性が人一倍強い子」

「人一倍環境感受性が強い子」といわれるHSCは、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱されました。周囲の環境に影響を受けやすい特性のことを表します。

「繊細さん」「敏感な子ども」などテレビやネットで特集をされることもあり、著名人が自身をHSPと公言するようなことも増えるようになりました。教育の現場でも近年注目されている言葉です。

学校が苦手なお子さんや不登校の児童生徒に対して「HSCの人は学校が苦手である」と言われるありますが、それは不適切な場合もあります。

HSCは「良くも悪くも周囲の環境の影響を受けやすい」のであり、HSCだからといって必ずしも学校が苦手なわけではありません。

上記を念頭に置きつつ、ここではHSCとはどのようなものなのかを解説します。

HSCの特徴

HSCは「Highly Sensitive Child」の略語です。環境からの影響の受けやすさ(環境感受性)には、個人差があります。同じ環境で過ごしていたとしても、周りからの影響を受けやすい人もいれば、影響を受けにくい人も観察されます。

こうした環境感受性は、ネガティブな影響に焦点があたりやすい傾向がありますが、ポジティブなものもネガティブなものも含めた周囲の環境に対する処理や知覚の個人差として定義される概念です。

HSCとは、この「環境感受性」が高いお子さんのことを指しています。具体的には以下のような特徴がみられます。

D:プロセスの処理が深い(Depth of processing)
少しの情報から多くを察し、周りの空気を敏感に感じ取って慎重に考える

O:刺激を強く受けやすい(being easily Overstimulated)
感覚が鋭く、においや音、肌触りなど、刺激の影響を受けやすい

E:感情的な反応が強い(Emotional responsiveness)
ポジティブ、ネガティブどちらの感情も大きく、他人の感情に共感しやすい

S:ささいなことに気づく(empathy and sensitive to Subtle stimuli)
人や周囲の環境のちょっとした変化に気づく

上記の特徴は、それぞれの英語の頭文字を取って「DOES(ダズ)」といわれています。どれか1つに該当すればHSCというわけではなく、HSCのお子さんにはこれら4つの側面があるとされています。

HSCは医学的な診断名ではない

HSCは医学的な診断名ではありません。環境感受性は生まれつきのものと育っていく環境の影響を受けていくものの、相互作用のものであるとされます。

全人類の約30%ほどが当てはまるとする研究もありますが、人ごとの環境感受性の高さの濃淡はグラデーションであり、比較的環境感受性が高い上位30%に対して、HSCであるというラベリングをするのは適切ではないという考え方もあります。

(*出典2)APA PsycNet|Environmental sensitivity in children: Development of the Highly Sensitive Child Scale and identification of sensitivity groups.

HSCのお子さんはネガティブな環境にいると、そのネガティブな影響を人よりも強く受けて不快感や不安を感じ、突然泣いたり暴れたりすることもあります。集団の中で突然泣いたり暴れたりすることは他のお子さんにもあり、たとえば神経発達症(発達障がい)のお子さんにも見られます。

しかし、HSCと神経発達症(発達障がい)はまったく異なる概念で定義されていますので、安易にHSC=神経発達症(発達障がい)と考えないように気をつけましょう。


なぜHSCが不登校の原因になるのか

不登校の体験談を見ると、HSCを自認していることがあります。学校のさまざまな刺激に耐えられず、結果的に不登校になるお子さんがいることは少なくありません。
ここではHSCのお子さんが学校で感じる不安やストレスから、不登校になりやすい理由を考えてみましょう。

集団生活・行動が苦手だから

HSCのお子さんはクラス替えや教室が変わる新学期に、新しい情報を多く処理することや、慣れない刺激の中にいることで、疲れてしまうことがあります。
他にも、運動会や発表会などで周囲からの注目を受け、緊張してしまうことで、本来の実力が発揮できないこともあります。周りからのプレッシャーを強く感じ、失敗した際にひどく落ち込んだ体験が不登校につながることもあります。
学校やクラスの雰囲気はその学校ごとに変わるため、お子さんに合わない環境の場合、過ごしにくくなってしまいます。その結果、HSCの特性が不登校の原因となることがあります。

周囲の空気に非常に敏感だから

環境感受性が高いため、先生がクラスメイトを叱っていると自分が叱られているように感じてしまうこともあります。時には叱られている本人より傷つくこともあるかもしれません。
また、学校では先生が大きな声で説明や注意をすることが多く、そのような声の大きさが緊張や辛い体験になることもあります。さらに心理的な面では、先生や友達の期待を過剰に感じ、応えられないとがっかりしてしまうことも。そんな状態が続くと、HSCのお子さんにとって学校はかなり疲れる場所になってしまいます。

学校に溢れる刺激が辛いから

集団生活が行われる学校はさまざまな刺激で溢れています。例えば給食のにおい、絵の具のにおい、校庭で運動している声、人間関係から生まれる微妙な空気などです。

そうした刺激をキャッチしすぎて疲れてしまうことや、そのことを「大袈裟だ」「気にしすぎだ」「あなたがおかしい」といわれ、自信をなくしてしまうこともあるのがHSCの特徴です。

皆さんの中にも、例えば満員電車に乗るとにおいや音が気になる方はいるのではないでしょうか。HSCのお子さんにとって刺激が多い学校は、ずっと満員電車に乗っているような状態なのかもしれません。環境によっては、その場にいるだけで精一杯な状態になりえます。


HSCが原因の不登校に対して、親にできる対応

HSCの傾向があるお子さんが不登校になってしまうのは、環境感受性の高さから学校生活の刺激やストレス、疲労などに耐えられなくなってしまうことが考えられます。

ここではHSCの傾向があるお子さんが学校に行けなくなった時、保護者はどのように向き合えば良いかを解説します。

保護者自身がHSCについて知る

まずは保護者がHSCについて正しく知ることが大切です。正しい知識や対応の仕方を知るため、研究者やカウンセラーなど、専門家が発信している情報を参考にしましょう。実際に専門家に直接相談するのも良い方法です。HSCについて誰かに話を聞きたい方は、スクールカウンセラーなど身近な専門家に問い合わせてみても良いかもしれません。

HSCは環境が整うことで本来の力を発揮できる場合もあります。ネガティブな側面に焦点を当てすぎるような場合や、研究以上のことを語ろうとする人も中にはいるため、注意しましょう。

また、中には「HSCは医学的な診断名ではないため、そんなものは信じないでください」という意見の専門家もいるかもしれません。その場合はHSCであるかどうかよりも、困りごとを具体的に伝えると検討がしやすいかもしれません。

無理に登校させない

お子さんに学校への登校を無理強いするのは逆効果な場合があります。お子さんが「あんなつらいところでさらに我慢しなければならないんだ」というメッセージを受け取ってしまい、さらに辛い気持ちになります。

まずは学校に行きたくない理由を聞き、悩みを解消することが大切です。お子さんがはっきりと悩みを言えなかったとしても「どんなときに嫌だなって思う?」など、具体的な場面を聞くと、苦手なことが見えてくるかもしれません。嫌なことを言葉にするのも大切です。

その苦手なことが、保護者からすると「え、そんなことで?」と思うこともあるかもしれません。HSCは遺伝的な要因もあるとされているものの、それだけで決定するわけではないともいわれています。血縁関係にあったとしても、必ずしも同じように感じるわけではありません。お子さんの感じている感受性を否定しなないように話を聞くことも大事にしてあげてください。

保護者自身が不安やストレスを募らせない

お子さんが不登校になると保護者も辛いものです。お子さんをサポートする中で、つい「お兄ちゃんは楽だったのに」などと考えてしまうこともあるでしょう。

しかし、兄弟や姉妹であっても感受性は異なります。兄弟や姉妹と比較して「あなたは大袈裟だ」と伝えることは、お子さんを傷つけてしまいます。

HSCのお子さんの場合、家族の感情の変化などをよく察知していることがあります。HSCに限らず、お子さんは家族の様子をよく見て感じています。保護者の不安やストレスがお子さんにとってプレッシャーになってしまうこともあるため、保護者自身が不安やストレスを募らせない工夫も大切です。

学校と相談して環境を整える

HSCのお子さんに限らず、不登校の理由がわかったら、環境調整について学校にも相談してみましょう。学校によっては、教室での過ごし方や学校行事の参加の仕方など、お子さんが向き合いやすいように環境を整えてくれることもあります。席の場所の配慮や、つらくなったときのクールダウンの方法を決めるなど、ちょっとしたことで気が楽になったり、しんどい時に対処できることで安心につながる場合があります。

何より、保護者や先生が自分の気持ちをわかってくれ、一緒に手立てを考えてくれること自体が安心感につながります。まずは、学校に相談してみてください。


親が意識すべきHSCのお子さんとの接し方

自己肯定感はHSCのお子さんに限らず、日々変化する大切なものです。自己肯定感は安心や自信の土台にもつながり、日々の中で「大丈夫」と感じられたり、安心できたりすると、日々の生活も落ち着いて過ごすことができると考えられます。
しかし、「お前はいちいち大袈裟だ」「気にしすぎだ」といった言葉をいわれたり、自分の感じ方を否定されるようなことが続いたりすると、自信や安心感は失われます。子どもの頃に安心感や自信が持てることは、大人になってからの安心や自信にもつながるため、大事に育てたいものです。
ここでは、お子さんの自己肯定感を育む方法を紹介します。

お子さんの感じ方を否定しない

ただでさえ、自分に合わない環境で過ごすことでストレスをためている状況で、否定されるような言葉を投げかけられるのは非常に辛いものです。まずは、自分の物差しではなく、お子さんなりの感じ方やつらさなどを尊重して耳を傾けてあげてください。

ポジティブな環境調整やフィードバックを大切にする

HSCの特性が強いお子さんに対し、ポジティブな環境調整やフィードバックに重きをおくことも重要です。
たとえば、音に対しての感受性が強く訴えられる場合には、静かな空間を確保することも1つの手段です。イヤフォンの装着をして、大きな音を軽減できるように調整することや、疲れたら静かな場所で休めるようにしておくことも効果的かもしれません。
また、お子さんのちょっとした成長やできるようになったことに対して、声をかけてあげるのも有効かもしれません。ミスや失敗などもあるかもしれませんが、その中でも良かった点や頑張ったことなどを意識的に伝えてあげましょう。お子さんにとって可能な限りポジティブな環境を作り、能動的に挑戦する気持ちにさせてあげましょう。
成功体験を積み、自信が生まれると挑戦が楽しくなり、学校という環境がお子さんにとってネガティブでなくなれば、登校にもチャレンジしようという気持ちが芽生えることもあります。「できていることに注目する」「できないことがあっても当たり前と考える」「過程も褒める」などを保護者も意識すると良いかもしれません。
褒めることやポジティブな声かけが苦手という保護者の方もいらっしゃいます。意識的にこのような関わりをすることで、最初は慣れていなくても、徐々に褒める言葉が出やすくなり、お子さんの自信にもつながることがありますので、保護者も挑戦していきましょう。

強い口調で叱らない

感受性の高さという点では、必要以上に大きな声や強い口調は怒りや恐怖の感情を感じさせやすい可能性があります。保護者は、大きな声や強い口調という手段で伝えることを控えるほうが適当だと考えられます。
しかしそうはいっても、叱る必要があることもあるでしょう。その場合は、大声を出さないでお互い落ち着いている状態で話をすることや、理由を言う、なぜしたのかを聞くなどの丁寧なやりとりをしていくことが重要です。
また、感情的に叱ってしまった場合でも、必要以上に落ち込まないようにしてください。感情的にならないようことも大事ですが、うまくいかないこともあります。カウンセラーの方であっても、自分のお子さんについ怒鳴ってしまう人もいます。そのため感情的になってしまった時には「感情的になりすぎてしまってごめんね」と伝えることを大切にしてください。

味方であることを伝える

HSCのお子さんにとって合わない学校は疲れて仕方ない場所です。それを誰にも理解してもらえないと孤独を感じます。家族との空間は、可能な限り気持ちが安らぐものにしてあげてください。学校は非常に疲れる場所でも、家が落ち着いて楽しく暮らせる「安全地帯」であれば、頑張る気力が湧くことがあります。

文部科学省の「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」では、不登校のお子さんが学校を休んでいる間の気持ちで多いのは「学校の同級生などがどう思っているのか不安だった」で、小学生が6割、中学生が7割です。

(*出典3)文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査
みんなはうまくやれているのに、自分だけが取り残されているような気持ちになると、その不安が通学への意欲をさらに減少させます。不安を抱えているお子さんにとって味方である保護者の存在は大切です。家族はどんなときでも味方であることを伝えてあげてください。


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