見出し画像

【農水委員会視察〜つくば農研機構研究所】

国会会期末の6月12日、農林水産委員会の視察にて、茨城県つくば市にある農研機構研究所に行ってきました。

機構で開発され実用化・販売もされているスマート農業の様々な機器の実演、また、省力化に繋がる果樹の樹形の研究の様子なども見せて頂きました。秋田に活かせるものはとの視点から、価格を含め様々なことを聞いてきましたので、私自身の覚え書きを兼ねて、皆様にもご紹介します。

・自動運転の田植え機
最初に有人運転で3辺を植え付けをしながら圃場の形を記憶させ、あとは無人運転で田植えができるというもの。資材補給と監視を作業者一名で行うシステムになっています。直進と旋回のスピードもかなりの速さで、人力で行うよりも直進精度にも優れているとのことで、視察をした多くの委員からも驚きの声が上がっていました。こちらは650万円。

・水田の水管理を自動で行うほ場水管理システム
田んぼの様子をみて水の管理をするというのは作業自体はそれほど手間ではないものの、かなりの面積を作付けしている農家においては負担になっているのと、盛りの時期には朝早くから起き出して作業する必要が出てくるなど、人手不足と高齢化が進む中で省力化が求められているところ。
ここも、制御装置を設置することで、農家にとっては自宅にいながらスマホやタブレット一つで水位や水温が確認でき、ボタンひとつで給水などの制御も行うことができます。また、スマート水管理ソフトによって、一定の水位を保ったり、水温が上がれば掛け流しにすることもできること、また、みどり戦略の観点からメタンの発生を抑止するための中干しについても、プログラムによって成育に支障がない程度を自動制御する機能などもあるとのこと。こちらは制御装置に15万円、半径2キロ当たりに一台必要となる中継機器に30万円。

・果樹の収穫時に利用できる、ほ場追従ロボット
人の後をついてくるねこ(一輪車)のようなもので、収穫用のカゴが2つ載っています。ボタンを押すと「あなたについて行きます」とのアナウンスが流れ、障害物を避けながら後をついてきてくれるので、重量のある収穫した果樹を運ぶ作業がかなり楽になるなど、メリットは大きいとのこと。他の作業をしている間に、軽トラの側まで運んで行かせる機能もついていて、こちらは270万円。

・収穫作業などを省力化できる樹形の研究
桃の樹形をV字に整えて、収穫時に回り込んだりする必要なく、上下左右に移動するだけで収穫が可能、人が収穫するにも今後機械で収穫するにも、動線が単純であるメリットがあるとのこと。一本当たりの収量は落ちるが、面積あたりの収穫は増加することがわかっているそうです。

気になるのは雪の影響でしたが、質問したところ、樹形として多方に枝が広がっているよりは雪が落下しやすく、雪の重みも受けないので枝も折れづらいということでした。
りんごの木の雪による被害が深刻である秋田にとって、こうした樹形はりんごにも活かせないものかと思います。
視察に参加した議員からは、樹形が人工的なことへの違和感、自然な樹形でないことへの寂しさにため息が漏れる場面もありましたが、省力化・生産性・効率性・作業の負担軽減・雪害の予防ということを考えれば大きなメリットがあると感じました。

また、植物の種子や微生物・動物などの遺伝情報を保存しているジーンバンクにもご案内頂きました。ノアの方舟のようなもの、との言葉通り、常に保存すべき種を探索しながら保管・提供・栽培しての更新などの作業が行われているとのことで、現在こちらで保管されているのは28万種。保存された種の探索も自動化されており、依頼があった種を取り出すのにも、マイナス18度の保管庫の中を人間が探し回る必要がないシステムが導入されています。こちらは個人の方からの提供の申し出による種の確認や保管、研究用途等での提供も行なっているとのこと。

視察後の委員会では、農家の方の声として、製品価格が高く物価高の中農家が手を出せる価格帯でない、自動田植え機もあぜでひっくり返ったら使えない、田んぼの真ん中で故障してしまったらどうやって回収するのか、クマがでても携帯すら圏外なのにそんなところでスマート機器が利用できるのか、自動水管理といっても実際には排水のところにゴミが溜まってその度にゴム手袋をはめて取り去ったり大きな木を除去したりということが生じる、農家のリテラシーをどう高めるのか、現状ではどんな機器があるのか情報すらない、などの意見が述べられました。私自身は、種苗交換会で様々な機器の実演等も拝見しておりましたが、そうした機会がある秋田は改めて恵まれているのだということも分かりました。

質問が続いていたこともあり、都度ご報告ができずにおりましたが、今国会中はこれを含めて3度の視察の機会がありました。どの場所で見たものからも学びがあり、また、移動の道中に委員の方々や農水省の方々と個別にお話をさせて頂き、本当に得るものの多い時間でした。こうした視察を経て、今、田んぼを眺めていると、スマート機器を利用するには、県内の田んぼの多くは規模が小さいということも改めて感じております。大型の機器を利用するのであれば、スマート機器の利用を前提とした基盤整備が必要なところもあるとの認識を新たにしたところです。

これからも県内の農業に役立つものをとの視点で県内外で見聞を広げていきたいと思います。