歯ぎしりが教えてくれる人生のこと

「歯ぎしりひどいんじゃないですか?」就職で忙しくなる前にと、親に勧められて5年ぶりに訪れた歯医者でそう言われた。自覚症状もなく、家族からも友達からも「歯ぎしりしている」なんて言われたことはなかった。

でも、思い返してみると歯を食いしばっている自覚はあった。歩いているとき、映画を見るとき、本を読むとき、知らず知らずのうちに顎に力が入っている。それに気が付いて顎を緩めると、耳の付け根のあたりがひどく疲れた感じになる。そしてそもそも、みんな普段から歯を食いしばって生きていると思っていたから、あんまりそれがまずいことだとも思っていなかった。

歯を食いしばることでの弊害を自分では思いつくことができなかったが、歯医者によると歯がふつうの人より早いペースですり減っているらしい。なるべく意識して力を抜いて、長い間歯をくいしばらないようにとのお達しが出た。できることなら私も長く自分の歯で食事をしたいと思っているので、素直に「わかりました」とうなずいた。

しかし、なるべく歯を食いしばらないように過ごす、みたいなのは気持ちのメンテナンスと似ていると思った。まず、あんまりみんなくいしばっていると思っちゃだめだ。自分の「疲れた」の部分を無視して、周りもくいしばってるからなみたいに思って生き続けるとしんどくなる。そして、どうしても踏ん張らなくてはならないときはあるけれど、それがあまりに長く続くと摩耗し、永く付き合うことができなくなる。

なんだかうまく言えたような気がしているんだけど、どうだろうか。そんなことないか。なんかこう、どんなことからも学びはあるみたいな気持ちで書いてみたのがいけなかったのか。ただ単に、私が歯を食いしばって生きているという話なんだが。そして、これを書いている間にも歯を食いしばっていた自分に気が付く。

だめだな、私はまだまだ力が入りすぎている。

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