ナローはアキツカに状況の説明を続ける。

 といっても、大した話ではない。

「それで、っすね。俺達は王都に向かってる。爺様達は逆に、王都から遠ざかろうとしている。よって、俺達はここでお別れって事になる」

「そうなるのう。いや、それにしても礼を述べるのを失念しておった。傷の手当て、感謝する」

「どういたしまして」

 頭を下げるアキツカに、ナローは軽く手を振った。

「手持ちの金は、すまぬがほとんど持ち合わせておらぬ。小粒じゃが、これで一つ礼とさせてもらいたい」

 アキツカは懐から小さな革袋を取り出すと、そこから透明な輝きを秘めた鉱石を掌に転がした。

 指でつまめる程度の、小さな宝石だ。

 だが、治癒一回分としては、おつりが大量に必要になりそうなほどの価値がある事は、鑑定に掛けては素人のナローでも分かる。

「……充分過ぎるけど、いいのか?」

「爺がよいというのならば、私は構わぬさ」

 ナローが訊ねると、ルーファスは小さく首を振った。


 本日はここまで。

 おやすみなさい。

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