説得
「いや、しかしですな、その御髪を切り、染めるなど……!」
アキツカは、ルーファスの思いつきを必死に制止しようとしていたが、ナローの見たところ、それは上手くいっていないようだった。
「髪は女の命という言葉をどこかで聞いたが、髪はまた生える。命は一度失せたらそれまでだ。爺も髭を剃ればまあ、大分印象が変わるだろう」
「ぬ、ぬぅ……」
ナローは、アキツカの髪を脳内で短く刈り上げ、さらに髭も剃ってみた。
……うん、ナイスミドル。
多分、十歳は若くなりそうだ。
「旅を続けるとなれば、路銀は減るし、野宿は増えるだろう。街中ならば、少なくとも稼ぐ手段はあるし、屋根のある宿で休む事が出来る。もちろん、敵は多いが、危険なのはどこも変わらぬよ。それに奴らは『老人と娘の二人』を探しているはずだ」
ふふん、とルーファスは得意げに、ナローを見た。
「……『五人の階梯者』は探してないって事か」
もちろん、そう話がルーファスの語る通り楽な方向に進むとは思えないが、このまま二人が国境を目指すよりはマシな計画でもあった。
二日休んでましたが再開。
といっても(自分的には)キリのいい所で終わる予定なので、もうちょっとで終わりなのですが。