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林書玄の恐ろしさ

 自分の尊敬するプレイヤーの1人である林書玄さんについて、どうしても共有したい棋譜があったので紹介したい。それは5月に行われた、13th Taipei World Championship Qualification Tournamentの游天龍(Yu Tien-Lung) - 林書玄(Lin Shu-Hsuan)の一局である。

13th Taipei World Championship Qualification Tournament, Round 3

 この棋譜の何を共有したいかというと白10である。この白10は黒勝ちであり、普通はJ6やI5に置く。もちろん、黒勝ちとは言っても簡単ではないため、相手の準備を外すために打った一手だろう。ただ、林書玄というプレイヤーが打つと少し怖さが増す気がする。個人の意見だが、おそらく林書玄さんは研究をしっかりやるタイプのプレイヤーだ。そのことが垣間見える一局として挙げられるのは、第14期台湾名人戦第3局の林書玄(Lin Shu-Hsuan) - 林皇羽(Lin Huang-Yu)だ。

14th Taiwan Meijinsen, Match R3

 林書玄さんの棋譜の中で、特にこの一局は衝撃を受けた。黒7が前例になく、ソフトで調べてもあまり良い評価を示さない。このときは、無理矢理自分の土俵で戦おうとしてるのかな、くらいにしか思ってなかったが、勝負が進むにつれていつのまにかソフトの評価が白優勢から黒勝勢にまでひっくり返っている。ソフトは絶対ではないので、しばらく進めると評価が変わることは時々ある。しかし前例もなく、かなり複雑な局面で、それをしっかり抑えて準備している用意周到さには脱帽した。また、それを名人戦で披露するというドラマつき。凄すぎる。

 話がそれたが、そういう背景もあって、自分は林書玄さんに対して研究屋という認識をもった。その林書玄さんが必敗形をやろうとしている怖さ、何かに狙われているような恐怖を感じた。偏見だが、いわゆる研究屋は自分から必敗形に行かない印象がある。リスクをせおって自分の土俵に上がらせるには必敗というリスクは大きく、より勝てる手を模索する。しかしながら、今回の棋譜を見て、林書玄さんは必敗形も使ってくるタイプなのだと再認識させられた。これからも林書玄さんの作戦に注目しながら棋譜を並べたい。

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