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おけら帝国物語 Part 2

国民が筆談のみで話す愉快なおけら帝国。
そのおけら帝国には、美しい女帝がいました。

その美しさは、飛びぬけておりました。

どれくらい飛びぬけていたかと言うと、
石原さとみと、
新垣結衣と、
みちょぱと、
ゆきぽよと、
セリーヌ・ディオンと、
マライアキャリーを、
足して、2で割ったくらいの美しさでした。

筆者も自分で何を言っているのか分かりません。
簡単に言えば、表現しきれないくらいの美しさでした。

その美しさは各国に響き渡り、
いや、響き渡り過ぎて、
多数の人間の鼓膜が破れるほどでした。

多くの耳鼻科の収入が増え、
そういう意味でも、この女帝への羨望は高まるばかりでした。

おけら帝国には、帝国直属の参謀がおりました。
総統と女帝の直属の参謀です。

「参謀」とは言うものの、
業務時間中から酒を飲み、
「体調不良」を言い訳に仕事を休み、
暇さえあれば替え歌ばかり作っている参謀でした。

その日も参謀は、
今日も特にやることがないので、
午前10時くらいから飲んでいました。
近頃の流行りは、「こだわり酒場レモンサワー」です

500ml缶の5本目に手を伸ばしたその時、
携帯にショートメッセージが届きました。
女帝からのショートメッセージです。

「ちょっと、来い。」

参謀は、
3秒でシラフに戻り、
5秒でシャワーを浴び、
7秒でスーツに着替えました。

どっかの映画で40秒で支度した人がいましたが、
そんなことをしていては女帝の怒りを買います。

合計20秒くらいで、女帝のもとに馳せ参じました。

女帝は、静かに指示を出します。

「スパイを、撲滅せよ。」
「承知致しました。」

なんだかんだで仕事の速い参謀です。
さっそく行動を取り始めます。
国民一人一人に筆談で尋問を始めました。

「あなたは、スパイですか?」
「いいえ、違います。」

「あなたは、スパイですか?」
「いいえ、違います。」

「あなたは、スパイですか?」
「いいえ、違います。」

何日経ってもいっこうに成果が上がりません。
このままでは女帝に会わせる顔がありません。

やり方を、変えることにしました。

「この桃は、甘いですか?」
「そう思います。」
「このレモンは、すっぱいですか?」
「そう思います。」
「あなたは比較的、どちら側の人間ですか?」
「私は、レモン派です。」
「あなたは、すっぱいということですか?」
「まぁ、そういうことになりますね。」

国民の半分くらいがスパイとして捉えられました。
もはや、この国はスパイのおかげで成り立っていたようです。

捉えられたスパイ達が、女帝の広間に集まりました。
広間だけでは入りきらず、城がスパイで取り囲まれました。
ある意味、ヤバい状況でした。

普段は物静かな女帝でしたが、さすがに動揺しました。
参謀に尋ねます。

「貴様、証拠はあるのか?」
「はい、全て、私の携帯に言質が残っております。」
「本当か?」
「はい、「あなたはスパイということか?」と聞いたら」
「「そういうことです。」と返ってきました。」
「そんな正直なスパイがおるのか?」
「そう言ったのですから、仕方がございません。」
「ふむ、まぁ、そういうことなのだろうな。」

女帝はいまいち腑に落ちませんでしたが、
参謀の携帯をのぞき込むのはプライベート侵害になるので、
とりあえず参謀の意見を信じることにしました。

女帝には、スパイの他にもう一つ、譲れないものがありました。
それは、筆談でしか話せないおけら帝国だからこそ大切なことです。

捉えられたスパイ達に尋ねます。

「お主たち、挨拶はできるのか?」
「女帝様、おはようございます。」

国民の半分がいっせいに大声を出して挨拶をしました。
築百年の城が、少し、傾きます。

女帝の座っていた椅子が、跡形もなく崩れ去りました。
しかし女帝は、自らの威厳を保つために、空気椅子をしています。

「赦す」

太ももが痙攣し始めていたので、
面倒くさくなった女帝は、
とりあえずその場を解散させました。

参謀はそれを見ながら、
一体なんだったんだろう、
と勝手に思っていました。
しかしもちろん、口には出しません。

出せば、処される可能性がございます。

こんな感じで、おけら帝国の毎日は平和に続いております。

めでたし、めでたし。


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