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Winter Pear

先週の月曜日に初雪が降った。積もることなくすぐに融けたけれど、雪はそれまでそこはかとなくあった夏の名残りの日差しや紅葉の季節の終わりを告げた。最初の霜が降りる直前に慌てて採った青いトマトが台所の隅ですこしずつ赤く変わりつつある。

10月の2週目に友達の庭になっている梨を手提げに一袋貰った。その時点ではまだ食べるには固く、ひとつずつ新聞紙にくるんで1,2週間熟すのを待って食べるように言われた。新聞にくるんだあと紙袋に入れていてうっかり食べるのを忘れそうになっていたのを思い出してそっと紙を外してみる。甘い良いにおいがする。新聞紙のなかでゆっくりと熟した梨をつぶさないように気を付けながら皮を剥く。果汁が滴る。冬が来たのに、まだほんの少しの間夏に生ったもの食べていられることにしみじみとした慈愛を感じる。