見出し画像

日本初上陸テキーラ「ソモンケ」とは?

昨年秋に日本上陸、一部の飲食店で試験的に提供されていたテキーラ「ソモンケ」の一般販売が開始されます。

今春予定のCalle 23(カジェ・ベインテトレス)輸入開始に先立ち、輸入から販売まで全面的なバックアップを頂く「サトー酒店」さんから、正式に「特命営業・輸出入相談役」という役職を拝命させて頂きました。

Calle 23の販売促進が主なミッションとなりますが、その範囲に留まらず、3年間のテキーラ道場の経験と学びを元に「忖度なしでオススメしたいテキーラ」の情報を積極的に発信していきたいと思っています。今回のソモンケも私から佐藤氏に仕入れを進言し、いちはやく他酒販店に先駆けて販売して頂けることになった新しいテキーラです。

ということで早速、ソモンケの推しポイントをご紹介していきましょう。

ソモンケは俗に言うミクストテキーラ

ソモンケはいわゆる「100%アガベテキーラ」ではなく、俗にミクストテキーラと呼ばれる原材料のアガベアスルを51%以上使用した低価格カテゴリーのテキーラとなります。

テキーラについてある程度の知識がある人にとって「飲むならミクストよりも100%アガベ」という定説は根強いものがあります。確かに貴重なアガベアスルを100%使ったテキーラは、よりしっかりとアガベ感を感じることができるものが多く、価格はやや高くなりますがそれ以上の魅力に溢れているのは私も完全に同意するところです。

しかしアガベアスルを100%使っていることだけが、テキーラの良し悪しを決めると思い込むのは早計です。原材料だけでなく、それを加工する製造工程も品質を左右する大きなファクターだからです。

ではミクストテキーラでありながら、なぜ敢えてソモンケをオススメするのか、その理由を挙げていきたいと思います。

アガベアスル使用率70%

規程上、ミクストテキーラは51%以上をアガベアスル由来の糖質、そこにアガベ以外の植物由来の糖質を加えて発酵させなければいけないとなっていますが、ソモンケではアガベアスルを70%使用。更に加える糖質はさとうきび由来の良質なものを使用しているとのこと。ミクストテキーラの中でもより高品質を目指しているのが伺えます。

製造を手掛ける蒸留所はあのドン・ナチョ

正式名称はFabrica de Tequila Don Nacho, S.A. de C.V.、製造者番号はNOM1508。言わずと知れたコスパ最強100%アガベテキーラのドン・ナチョを手掛けている蒸留所です。

元々はテキーラ蒸留所向けのアガベアスルを栽培する家族経営の農家だったドン・ナチョ。自社畑で造られた高品質のアガベアスルを使ったハウスブランドのドン・ナチョは、日本でも安くて美味い100%アガベテキーラの代表格として着実にシェアを伸ばしています。テキーラ道場でも、最初の飲み比べセットにブランコを使わせてもらってるイチオシブランドのひとつです。

この「ドン・ナチョで造られている」という事実から導き出される重要なポイントが3つあります。

ポイント①:自社畑の高品質のアガベを使用

先ほども書いた通りドン・ナチョはアガベ農家が経営する蒸留所です。つまりソモンケも自社畑のアガベアスルを使用しています。メインブランドであるドン・ナチョほどではないでしょうが、良質のアガベを相場に依らない低原価で使用できることを意味しています。無理に安いアガベを買わなくてもよいということは、原材料調達における大きなアドバンテージでしょう。

ポイント②:伝統的な製造工程による生産

低価格帯の100%アガベテキーラやミクストテキーラの多くは、大規模蒸留所で効率化された設備で生産されるのが一般的ですが、ドン・ナチョは比較的小さな蒸留所であり、そこにはドン・ナチョを造るための伝統的な製造設備しかありません。つまりヘッドとテールのカット率など、低価格のために妥協している部分もあるのは当然でしょうが、基本的にはドン・ナチョと同じ製造ラインで作られているのです。

ポイント③:添加物不使用

私がソモンケの日本上陸を知ったのは、2020年暮れのことでした。輸入元であるGIAの落合さんに、Calle 23の輸入のことでアドバイスを貰うために連絡をしたところ

「前田さん、実は今度ミクストいれてみたんですよ」

との話が。既にその存在を知っていた自分には、すぐにそれが「ソモンケ」であることはピンときました。メキシコやアメリカでは流通していない、輸出向けの100%アガベ&ミクストブランドのソモンケ。100%アガベの中身は恐らくはドン・ナチョと同じだろうと推察していましたが、気になっていたのは日本に入ってきていないミクストの存在でした。それがなんともう日本に入っていると。

「落合さん、それってもしかして無添加じゃないですか?」

と前のめりに質問すると

「いや、聞いてないです」

との素っ気ない返答が。ドン・ナチョは2018年に訪問させて頂いた蒸留所で、過剰な宣伝や販路拡大はせず、よいテキーラを造ることだけに注力している実直な生産者というのが私が抱いていたイメージでした。そのドン・ナチョが、ミクストとは言え、添加物を使用するとは考えにくかったのです。そこまでしてミクストを作らないんじゃないかと。

「たぶんこれ、無添加である可能性が高いと思いますので、問い合わせてみて貰えませんか? あとゴールドの方もカラメル色素を使ってるとは思えないので、無添加だとしたら実質レポサドじゃないかと。それも確認してみてください」

とお願いしたところ

「ちょっと問い合わせてみますね」

と。それから数日後、落合さんから連絡があり判明したことは

・予想通りソモンケシルバー・ゴールドともに添加物を使用していない
・ゴールドはオークチップインフューズによる着色と香りづけを実施
・オークチップインフューズは樽熟成にはならないのでレポサドではない

という事実でした。この報告を聞いて、自分の推察が的中したことはもちろん嬉しかったんですが、ミクストにおいてもドン・ナチョが実直なテキーラ造りの矜持を捨てていなかった、という事実は、自分にとって非常に嬉しいことでした。

無添加の意味するところ

「無添加」と一言で言いますが、それが意味するところはいったい何なのでしょうか?

テキーラの製造工程では1%未満の指定物質の添加は正式に認められており、概ね以下のような目的で使用されていると言われています。

① ロット差の調整など品質安定のため
② 無添加では不可能な華やかな風合いを出すため
③ 雑味を軽減したり、軽さを補填するため

ミクストテキーラや低価格の100%アガベテキーラに対する添加物はおもに③のケースにあたると考えられています。低価格帯のテキーラの生産においてはアガベアスル(生育期間が短かったり完全に熟してないケースもある)から可能な限り多くの糖分を絞り切ることが求められます。その結果、余分な雑味が残ることがあり、これを添加物によって軽減したり、また雑味を取り除くためのフィルタリングで失った風合いを補填するために、添加物が使用されることもあります。

つまり無添加であるということは、アガベアスルから絞った糖蜜(ミクストの場合は他の糖質がこれに加えられますが)に発酵・蒸留・通常のフィルタリングといった従来の工程以外に、人為的な操作を行えないということなのです。よりテキーラ造りの職人の腕が求められるのが「無添加」なのです。

ただここで言っておかなければならないのは、これは美味いか美味くないかという指標と必ずしも一致はしないということです。

添加物の使用は、それ自体テキーラを美味しくするために行われています。ただ無添加のものとまったく同じ味が出せるかと言えば、そこまで万能なものではないため、自然な味わいを好む人には添加物が醸し出す風合いを苦手だと感じる人もいます。

ただ無添加という事実は、添加物が使われてなかった昔ながらのテキーラに近いものだという指標にはなるかと思います。

では実際に美味いのかどうか?

これに関しては、私はもろ手をあげて「美味いよ!」と言うことはできません。その理由のひとつはアルコール度数にあります。

ソモンケはテキーラの規定下限いっぱいの35%のアルコール度数に調整されております。従来品は38%だったので、これは日本向けとして低価格を実現するためのひとつの方策だったのだろうと推測されます。

そしてアルコール度数が35%であるということ、ミクストテキーラであるということ、そして無添加であるということが、その味わいを非常に軽いものにしています。ここは好みによって大きく評価が分かれるポイントではないかと思います。

とはいえ、軽い中にもスッキリとしたアガベの風合いを感じることができて飲み口も非常にスムースです。炭酸で割ってもアガベ感はしっかりと感じられるので、ハウステキーラとしても好適品だと思います。

ただ一般的な低価格レンジのテキーラと比べ雑味がないということは、ある意味では従来品を好んで飲んでいた消費者にとっては「物足りない」という印象を受ける可能性も否めません。嗜好は人其々なので、雑味もまた旨味と感じる人もいるからです。最初は好ましく感じなかったクセが、回数を重ねることで病みつきになるということも実際によくある話です。

以上を踏まえた上で、私がこの「ソモンケ」をぜひ飲んで欲しいのは

従来のミクストが嗜好に合わなかった人

です。きっとあなたが抱いていたミクストテキーラの悪いイメージを塗り替えるキッカケになるかもしれません。そんな方にこそぜひこの丁寧に作られたミクストテキーラを試してみて頂きたいです。人によっては低価格帯の100%アガベテキーラより美味しいと感じることも十分あると思います。

で、これどこで買えるの?

3月9日時点でソモンケが買えるのは

・サトー酒店(ネット販売サイト) @福島県西白河郡矢吹
・リカープラザ大越 @千葉県千葉市稲毛区
 (主が日頃お世話になってる地元の酒屋さんです)

の2店舗のみです。また近日販売開始予定なのが

・ヨドバシカメラ新宿店 @東京都新宿区
・ヨドバシカメラ秋葉原店 @東京都文京区
 (ネット販売サイト

となります。気になる価格帯はリッターボトルで2000円台前半というコスパの良さ。特命営業の私としては、この投稿をキッカケにサトー酒店で買って頂くと面目躍如となるので、ぜひよろしくお願い致します(笑)。

よろしかったらサポートお願いします。といっても特に立派なことに使うわけではなく、すべてテキーラになるだけですが(^^;)