何のために地上に人間がいるのか

「つくづく思い返しても分からない。
なぜ人間はいるのだろう？
分からない。
いるからいるのだろうけど、
過去からの連続体だから、
消えはしないな。」
「そうやって生き物は生きてきた。
その意味も知らずに。
それが普通のことだった。
人間は中途半端に知性があるから、辛いか？」
「そんな分析、唾を吐きたくなる。
俺はいったい何故生きているのだろう。
分からない。」
「まあ、そんな考えんなって。
そんなの考えたって答えがある訳ないだろう。」
「う。ぐふ。苦しい。
うう。心が痛い。
体も痛む気がする。」
「考え過ぎるからだ、よせよ、もう。」
「誰だって何となく生まれて何となく生きてる。
それが現実だって。
そうでない人間なんていないっての。
全部が全部そうなの。
全員そうなんだって。」
「そうか。
全然もう救いになってない。
苦しい。」
「俺が苦しめてる訳じゃないっての。
お前が勝手に苦しんでいるんだ。
安心しろ。
その程度で死にやしない。」
「うん。
それはそうなんだけど、
もっと救いになる言葉を吐いてくれないか？」
「俺に要求するな。
何となくお前の近くにいたに過ぎないんだぞ。
俺は。」
「でも、苦しみを和らげて欲しくて。」
「いや。だから、
俺に要求すんなっての。」
「分かった。
落ち着いてきた。」
「勝手な妄想病か？
苦しまでなくてもいいんだぞ。
俺はお前に苦しんでもらったって何の儲けもないからな。」
「またか。
またやったのか。」
「そいつよくやるんだよ。
その妄想病とかパラノイアとか。
もう慣れろ。
何度も苦しんで慣れればいい。
そうしたらそんな苦しみなんとかなるだろ。」
「苦しいっての。
うう。喉がつまる感じがする。」
「仮病はやめろ。
そんな気がするだけで実際何も起きてない。
人の気持ちを掻き立てるなよ。
みんな苦しいんだぞ。
お前がそんな真似をするから。」
「そうなのか。
俺だけかと思ってたよ。
苦しいのは。」
「そんなことはない！
お前だけじゃない！
みんなそうだ。
みんな苦しんでる。
でも、大したことじゃない。
この程度で死にはしない。
苦しいだけで人は死ねない。」
「本当に苦しいのかよ。
何でそうなるんだ。
何を想像したんだ。
多分ふざけてたからそのバチでも当たったか？」
「かも知れないけど、それ以上探らないでくれ。」
「勝手なことだな。
別に大したことじゃないからいいけど。」
「本当に苦しいのか？」
「嘘ではないけど、
もう何が本当だか分からない。
苦しみにも程度はあるから。
まあ耐えられるけど、苦しいには苦しい。」
「また苦しい、苦しいって。
もうそれはやめてくれ。」
「分かった。
何とか耐えるよ。」
「五月蝿いことを言わないでくれ。
頼むぞ。」

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