I'm older than I wish to be

ひさびさに音楽の話を少し

https://www.youtube.com/watch?v=nRxhU176QyI

OASISの知る人ぞ知る(でもないか)名曲、Rocking Chair。
この歌い出しが、I'm older than I wish to beで、僕の貧弱な英語力で訳すと
「自分が思う(願う)よりも年をとってしまったみたいだ」という感じだろうか

1995年に発表された曲で、ノエルギャラガー28歳の時の歌詞だ。
初めて聴いたときには、オアシスへの加入が24歳の時で、少し遅めのバンドキャリアのスタートだっだから、
こんな歌詞になっているのかと思っていた。

当時は歌詞よりも、この曲のもの哀しくも推進力があるというか、独特なムードに惹かれた。
コード進行もシンプルで、カバーしやすかったのでよくギターでぽろんぽろんと弾いていた。

歌詞の意味がわかるようになったのはもっとずっと後になってからだ。
これはきっと「不当に自分の時間を奪われた人の歌」だ。

ノエルが時間を奪われたのは、父親からなのだろう。
よく知られた話だが、父親から日常的に暴力を受けていたそうだ。
仕事もせずに酒を飲み、酔っ払うと手を上げる。
典型的なクズ親であったようだ。
その影響がないわけがなく、吃音になり、ドラッグにも手を染めてしまったことを自伝で告白していた。
さらに失語症も患ってしまった。
そんなノエル少年が唯一心を解放できるのが、音楽であった。
世界中に知られる、たくさんの名曲を書く滋養になったのだろうか。

ノエルの曲には、不思議な息づかいがある気がする。
僕がイメージするのは、公営住宅の狭いベッドルームだ。
昔、何かでギャラガー兄弟が住んでいた家と、ノエルの部屋をみたことがある。
あの狭い部屋で、息を殺してギターを弾いている。
その孤独感がありありと伝わってくる。

オアシスはニルアヴァーナやレディオヘッドのような内省的な世界観のバンドと比較され
「肯定的」だと言われることが多かったように思う。
過酷な状況の中で、肯定的で希望に満ちた曲を作る。そんなところにも惹かれている。
いや、過酷な状況だからこそ、希望を歌うしかなかったのかもしれない。
(ニルヴァーナもレディオヘッドも好きですが...)

奪われたのは、被害にあっていた時間だけではないだろう。
そこから回復するのにも長い時間がかかる。

僕は親や周囲の人から愛されて育ったので、ノエルの辛さはわからない部分がある。
が、失われた時間のことはわかる。

僕の話はしない。

もうひとつ、年をとることについての歌がある。
Just Getting olderだ

https://www.youtube.com/watch?v=Nn1Zq_f9fTs

冒頭部分を引用してみよう

It's nine o'clock
I'm getting tired
I'm sick of all my records
And the clothes I bought today
Am I cracking up
Or just getting older?

もう9時だ
疲れ果ててしまったみたいだ。
持っているレコードは飽きたし、今日買ったばかりの服も気に入らない。
ちょっと参っているのかも
それともただ年をとっただけかな?

ノエルギャラガー35歳の曲である。
いろいろと考えさせられる年齢であるような気はする。
ただ、このときには思ったよりも年をとった感覚は減退しているのかもしれない。

35歳のノエルギャラガーは、世界を取ったと言われたデビュー当時ほどの人気と評価はなくなったにしても
スーパースターであり、全てを手に入れたあとと言っていいだろう。

それなのに、まだあの部屋にいてギターを弾いている。
変わらない息づかいを感じることができる。

最後のバースも引用しよう。

You're not cracking up
You're just getting older
We're not cracking up
We're just getting older

あなたは全然参っていない
年をとっただけなんだ
僕らも参ってなんかない
ただ年をとっただけなんだ。

こんなふうに自分を鼓舞して終わる。

ところで失われた時間はどう取り戻せば良いのだろう。

時間を超えて残るものを作ることなのかもしれないと
ノエルの曲を聴いていてふと思った。

そういえば、OASISのベスト版のタイトルは
Stop The Clocks である。

失われた時間は、戻るがないことを知りながら、
ずっと時を止めようとしているのかもしれない。

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