ユニバーサルデザインを意識したスライドづくりのポイント④「情報量をどのくらい詰め込むのか?」

スライドの枚数はどのくらいが適切?

 よく学生から研究発表に際して何枚くらいのスライドを準備すれば良いか、と尋ねられます。例えば10分の発表時間では10〜12枚程度ではないか、と回答するのですが、そもそも一枚のスライドにどのくらい情報量を詰め込むかによって必要な枚数は変わってきますので、一概には言えません。

 研究発表の場合、研究のバックグラウンド(先行研究のレビューや本研究の着想経緯の説明)、研究の具体的手続き、結果、そして考察(+謝辞など)を盛り込まなければなりません。必然的に情報量が多くなりますし、限られた発表時間なのでスライドが流れるように移り変わることになります。ただし、研究発表は”自分の研究を正しく伝える”ことが主目的ですので、口頭での説明はテンポよく進めていくことが多く、1枚のスライド提示時間が40〜60秒程度でも構わないと思います(スライドに記載している事項全てを口頭でも読む必要はないと思います)。そこから逆算すると10〜12枚という数字になります。

 授業の場合は、”受講者にも一緒に考えてもらう”ことが目的になるので、スライドが流れるように短時間で目まぐるしく切り替わってはいけません。3〜4分程度は時間をかけた方が良いでしょう。したがって90分の授業では多くても30枚が限度で、それ以上の枚数だと受講者に考える隙間を与えず、まるでジェットコースターのような分かりにくい授業だったという印象を与えます。一枚に詰め込む情報量もある程度絞り、スライドごとに焦点化されたトピックを提示するように構成すると良いでしょう。授業ですので、情報が足りずに受講者が疑問に思ったことは質問してもらえば良いと思います(もちろん受講者が質問しやすい雰囲気を作ることが求められます)。

 講演会の場合は研究発表と授業の中間という位置付けでしょうか。一枚のスライドが1分か2分程度、90分で30枚〜40枚程度のスライドでも良いと思います。聴講者が大人数になる場合、質疑応答で全て対応できるわけではないので、なるべくスライドの中で必要な情報が正しく伝わるように整理するべきです。私の恩師は講演会であえて多めのスライドを作成し、途中で時間がなくなったフリをして「時間の都合で割愛します」とスライドを飛ばして「あぁ、もっと聴きたかった、残念」と聴講者に思わせる高度なテクニック(?)を使っていましたが、高名な講演者ならともかく、若手講演者がそのようなことをすると「時間配分ができない人」というレッテルを貼られてしまう可能性が高いです(笑)

どのくらい行間を空けるべきなのか

 1枚のスライドに詰め込む情報量が多いと、文字数が多くなり行間が詰まったスライドになりがちです。狭い行間は行飛ばしなどの読み間違えを誘発し、特に読字に困難がある人にとってはとても負担を強いてしまいます。
一般的にも行間を空けた方が読みやすくなるのは確かです。その一方で、行間を空けると1枚のスライドに入る情報量が少なくなるので、その分だけスライド枚数が多くなってしまい、1枚のスライドを映す時間が短くなります。

 およその目安ですが、1.2行から1.5行くらい行間をとるとかなり見やすくなります。あまり空けすぎるとスライド全体を見た際、箇条書き+レベル分けで構造化したスライドの全体像を直感的に掴むことがしにくくなります。バランスよく適度な行間を空けるのが望ましいです。

 注意すべきは、PowerPointには字数が多くなった場合に自動で行間を詰める機能があることです。0.9行などのように一見すると微妙な範囲で縮まってしまいます。それ以上に字数が多くなるとフォントサイズが自動的に小さくなります。その場合は字数を減らすorスライドを複数に分割するなどすべきです。

重要な語句だけ”隠す”しかけ

 大学の授業のように長時間だと、途中で受講者の注意が途切れるのが普通です。特にスライドを見るだけの受身的な態度だと眠くなってしまう学生が多いです。そのためメモを取るなどの主体的な学習活動を入れたいところですが、人によって筆記速度が異なりますし、話を聴きながらメモを取るという二重作業が苦手な人もいるので、あまりたくさんのメモを取る作業を強いるのは避けた方が良いと思います。

 私は授業で使うスライドには、覚えて欲しい語句や重要な考え方などの箇所だけを空白にした虫食い状態のハンドアウトを渡しておき、授業中に提示するスライドで空白箇所を開けるようにしています。空白にしたい箇所のサイズの背景色(白)の四角形図形(枠線なし)を作り、当該語句の上に重ねてアニメーションで消えるように設定しておきます。こうすればハンドアウト用のスライドを別に作る必要もなく、同一のファイルで対応できます。
 先述したように、筆記速度は人によって異なるので、必要以上に長い語句を記入させないようにしています。また空白にした箇所の文字は強調色にして、不注意で空白部位が開くのを見逃した人もすぐに何処が開いたのかが分かるような配慮も必要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?