ユニバーサルデザインを意識したスライドづくりのポイント②「カラーユニバーサルデザイン」

カラーユニバーサルデザイン(CUD)とは

 スライドにグラフを入れたり、あるいはsmart artを使う場合には、カラーユニバーサルデザインに留意する必要があります。先天性の色覚異常を持つ方は男性で5%いらっしゃいます。色遣いによっては、グラフの違いが判別できなくなる可能性もあります。スライドを見て学習している男子学生20人に1人が、色の違いを判別出来なくて困っているかもしれないのです。
 一口に色覚異常といっても、P型、D型、T型など見え方もそれぞれで、まさに色の見え方には多様性があるといってよいと思います。そのため多くの人がみるスライドでは、「なるべく色を使わずに表現する」か「色覚異常者でも判別しやすい色を使う」ことが大切です。
 例えばグラフを作成する際には、まず色の違いで判別させるのではなく、折線グラフでは実線と点線で分けるなど白黒でも読み取れるように作成します。あるいは色覚異常の方でも判別しやすい色を使うようにします。例えば、濃い赤色は黒やこげ茶と混同しやすいので、オレンジ色に近い赤橙色にします。また対比させる場合は、暖色系の色(赤〜緑)と寒色系(緑〜青)を交互に選ぶと良いです。

 特に学校現場等で使うプリントは白黒印刷のことが多いので、カラーで作成するのは避けた方が良いと思います。学校ではリソグラフがよく使われるので、カラーでスライドを作成してもハンドアウト(スライドを何枚かずつまとめて印刷した手元資料)ではわからなくなる場合もあります。

図やイラストを使う場合

 スライドに使うイラストについても同様に、カラーのものは避けておきます。スライドの内容を分かりやすくするためにイラストを添えるのは効果的なので、フリー素材のイラストなどを利用されている方も多いと思います。しかし、前述したようにカラーのイラストを白黒印刷するとかえって見づらいです。
 私がよく利用するのは、シルエット形式のイラスト素材です。この夏に「ピクトグラム」が話題になりましたが、クールな印象も与えますし、必要以上にイラストが目立ちませんので、スライドにつけるイラストとして適しています。

PowerPointに「カラーユニバーサルデザイン」テーマを設定する

 カラーユニバーサルデザインは色覚異常の方には絶対に必要なのですが、「見え方」の問題ですので、通常の色覚の方には「この色遣いでいいの?」と悩んでしまうことが多いです。残念ながら、ExcelやPowerPointの初期設定で設定されているテーマ色はカラーユニバーサルデザインがほとんど考慮されていないようです。Excelでグラフを作ったりPowerPointのSmartArtを使って初めに作成された色使いのままでは、うまく判別できません。
 そこで、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)で配布している「CUD推奨配色セットテーマファイル(.xml形式ファイル)」をダウンロードしてPowerPointやExcelにインストールしておくと良いでしょう。

「CUD推奨色セットテーマファイル」はこちらからダウンロードできます!
(NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構のHPへ)

 このテーマファイルを予めインストールしておくと、色セットの中に「CUD推奨配色セット」が加わります。前回説明した基本レイアウトのマスターを作成するときに、CUD推奨配色セットを選択しておくと、グラフの作成の際にカラーユニバーサルデザインに配慮した色遣いで作成されます。
 ただし、SmartArtのように作成された図形の中に文字を書き込むような場合は要注意です。下の図のように対比しやすい色として黄、緑、青、赤橙が出てきますが、それぞれの背景色に応じた文字色を選ばないといけません。テーマ設定ではそれぞれの背景色に対する文字色までは設定されませんので、自分で修正する必要があります。

見え方を確認するためのアプリ

 色覚異常の方の見え方を再現するアプリがいくつか開発されています。無料アプリ「色のシュミレーター」では、スマホのカメラを利用して、作成されたスライドが色覚異常の方にはどのように見えるのか、各タイプ毎にリアルタイムチェックすることができます。もちろん、色覚異常にも様々なレベルがありますので、必ずしもこのアプリで見えているように見えるわけではなく、あくまでシュミレーションとして利用させると良いと思います。

「色のシュミレーター」アプリ紹介ページへ

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