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習作「花」

花を手折る。

何の変哲もない、だが美しい花だ。私はこれを袂に入れて、大事にして、それでもいつか枯れてしまうんだろう。この花を主役にひとつ話を書いてみよう。すると、とんでもないところで終わってしまう。終わってからが話の見頃というものだから、舞台装置として使われる花は。この花が枯れる頃、ある呪われた王子の命が終わる。しかし実際のところ、花が枯れる頃奇跡が起きて呪いが解けるのだ。あるいは、花が踏み躙られ、それを見て虚しいとか悲しいとか思うんだろう。こうして花の役目が終わる頃、ようやく話は始まるのだ。

美しい花が意味を持つのは、散った後。

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