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いつものようにバス出発の8分前、
濡れた髪を絞り出かけようとしたら、
そんなあたまで外に出たらダメだよと言う
美容師の声がした。
ああ昨晩はこの人を泊めたんだっけと思い出しているうちに
私はすとんと椅子に座わらされ
優しい風といくつかの指が、頭皮を軽やかに撫でている。
私の輪郭をなぞるように
そっとマニキュアが拭き取られてゆく間、
私は指先から伝わる燃えるような体温を味わっていた。
その人は、
冷たいタオルで私の足を拭いたあと
服を脱がせた。
太陽は遠くからジリジリと私の眼を灼こうとしているが
私は逃げるすべを知っている。

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