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収益予測を更新し続けるのは想像以上に苦痛を伴う作業

最近年度末に近づいてきて、正確な着地予想が欲しいと言われ、大嫌いな財務予測の更新作業を行っていました。

作業自体は30分もあれば本来終わるものなのですが、
中小企業あるある?で、
・社内の色んな人に生データをもらいに行かなければいけない
・そもそもBookされている帳簿データに誤りが散見される
という状況な上に、

一番の問題は、僕のこの作業に対するモチベーションの欠落。

ペーペーの頃は、「会社の事業計画を作ってみたい(なんかかっこいい)」とか、「社長に頼られる名参謀的なCFOになりたい(藤沢武夫さんのような)」とか思っていましたが、
いざ、計画や予測を作るようになってからの感想は、

「めんどくさい」 でした。



前職以前、僕が関わってきた財務会計がらみの仕事は、

「その時」財政状態がどうなっているか?とか、

「その時点」で知りうる情報を使って、将来を予測したらどうなるか?

と言った、いわゆる「予測基準日」や、「情報基準日」が固定的に設定されたうえでの数値作成でした。

例えば、ファンドが非公開企業を買収する場合は、
調査基準日があって、その日以降は基本的にたとえ情報があっても見ませんよと、調査対象の範囲を明確に線引きしますし、
(なぜなら、調査中も時間は進むので、日々損益やキャッシュは動き、
範囲を明確にしないと調査が終わらないからです。)

バリュエーション(企業価値算定)の仕事もそうでした。
「計算の前提」というページをレポート上に必ず設けて、「いつ時点の価値」かを明確にし、その後の買収契約までに生じた財務の動きは「価格調整」という別枠で、かつ、予め決めたルールで調整するようになっていました。(契約当日まで情報を拾い続けて、契約日ドンピシャの価値を算出しにいくことなんてしません。)

ちなみに、インカムやマーケットアプローチで企業価値を計算する場合は、日々動くマーケットの動き(ベータやマルチプル) が企業価値に影響を与えるため、(「いつ時点の価値」かという評価基準日以外にも)、マーケットの参照範囲を決めるための「情報基準日」も設定し、いつまでもマーケットの値動きを追いかけなくていいように範囲を制限します。

基準日があるということ

そんな仕事をこれまでしていたので、
エクセルを使って「ある時点」までの確定値(スナップショット。過去の数値)に対して、様々な軸で分析・評価するのが身に染み付いていました。

バリュエーションには、DCF法のように将来の計画数値を扱った評価手法もありますが、それも「将来」の数字ではありますが、「過去のある時点までの情報に基づいて作られている」情報であり、作成日後の状況も織り込んだ生きた情報ではありません。

(唐突ですが、)取り扱っている情報に対するイメージは、
「スーパーで売られている野菜」と一緒だと思います。

スーパーで売られている野菜は、根を切られて収穫される瞬間までは
毎秒少しづつでも成長、変化しているものですが、
切られてからはあとは腐っていくだけです。
切られた直後からは、太陽も雨水も、その野菜の状態に変化を与えることはありません。(腐っていくだけ)
調査や分析に使う資料も、基準日以降は動かない(ある意味死んだ)ものとして取り扱っていきます。

基準日なき消耗線

こんなことを言うと怒られますが、、
僕はそうやっていつも外部から対象会社を見に行って、あれやこれやと数字をこねまわし、計算したりコメントを入れたりしていたのですが、

計算や分析に使う資料を「作る側には回りたくない」とずっと思っていました。

性格的に僕は一回「これは理解した」と思ったことを二回も三回もすることがとても苦痛に感じる人間だからです。
(そんな人がnoteを書き続けられるのか、とも最近思っているのですが、noteは自分を律するために書き続けます!)

例えば3月までの情報を資料にまとめたら、来月は4月までを、その次は5月までを、と言った風に同一資料をローリングしながら作り続けることなど、僕には絶対に向いていないのです。

それなのに、、、

(今の会社で僕は全く財務会計とは違うポジションなのですが、)
前職の経験もあり、少しだけのつもりで経理のサポートをしていると、いつの間にやらがっつり(というかいつの間にかほぼ一人で、)会社の事業計画の策定、銀行との交渉、着地予測などをやることになっていました。

最初の頃は、「まだ新しい仕事にも慣れていないし、何か貢献しないと」と思って、本来のポジションの仕事の傍ら、月次で財務予測ができるようにエクセルでモデリングして、それにマクロを組み込み、キャッシュポジションについては日次レベルで予測できるようにしたり、銀行や投資家向けの資料を作ったりして「働いていますよ感」を充実させていました。

だけど、作りながらも「同じことはしたくないな」と感じていたので、「あとはこのエクセルを毎月回してくださいな」と担当者にそのエクセルをプレゼントしてルーティンワークから逃れるつもりでいました。

でも、そのなんちゃってGoldman Sachs風のエクセルモデルに、さらにマクロまで組み込んだ複雑なエクセルを使いこなせるのは、作った本人だけでした。

そこから毎月ぽちぽちマクロボタンを押して、たまにシナリオ別に予測したりしているうちに、「あ、これ、俺が一番やりたくなかった仕事だ」と苦痛を感じ始めるようになりました。

だからPower BIを勉強しようと思った

実は「このルーティンワークを抜け出すには、毎月自動で基準日を更新する仕組みが必要」と思ったのは、当初のエクセルモデルを作った時からでした。
でも、その時はマクロで対応していました。
なぜなら、まだ社内の誰がどんなデータを、どんなデータ形式で、どの頻度で作成更新しているか把握していなかったからです。(社内には当時データベースっぽいものさえなく、社員みんなが好き勝手にエクセルやアクセス、ひどいものはワードに、、自分が関わっているデータを集約している状態でした)。

この状況を打破するために、マスターとすべき情報で、どうしても新たに作らなければいけないものは、枠だけ作成して複数の部門の人に個別に「今度からはこっちのフォームで更新して」とお願いしていきました。

社内の誰かが既にやってる作業のベクトルを少し調整すれば、より多くの人が利用しやすくなると思ったので、「今度からはこのフォームにInputしてくれませんか」とお願いをして周り、最終的には自分で毎月更新しなければいけない情報をなくしつつ、社内データベースが徐々にPower BIで処理してもよいレベルに仕上がっていきました。(概ね、「社内データベースが必要ですよ」と言い始めたのは入社した翌週くらいからだったので、使い物になる第一段階のデータベースが出来上がるまでは半年くらいかかったと思います)

毎月の手作業をなくしてくれるPower BIがあってほんと良かった


Tableauは中小企業にとっては導入も運用もクソ高くつくし、
Office系と相性がよく、無料で気軽に試せて、実際の導入に際してもコスト面で優位なのは、やっぱりPower BIしかないのではないでしょうか。

前職(財務会計系コンサル)の時は、データアナリティクス部門に友人がいたのでBIツールについてたまに会話していたのですが、「Power BIは使いもんにならない」とずっと言われていました。
でも、ものは使いようだなと、今改めて思います。(Power BIはそう言われていた後も高頻度でupdateされ続けていたこともあります。)

毎月社内の誰かが別の目的でせこせこ更新している情報を繋ぎまくって、クエリで加工・計算して、全く別目的の会社にとって有用な「生き物」のような情報を作れるって素晴らしい。

今後もPower BIについて僕の視点から使い道を見つけていきたいと思います。


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