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寒いことと震えてること

いよいよ冬もピークを迎え、
この、いぬうた市にも寒波が襲来し、
近頃、びっくりする程に寒い毎日が続いています。
特に、朝方は凍える程で、
暖房が効いていない場所などに行くと、
ついブルブルと震えてしまいます。
「見て!きゅん。ほら、ぐー、こんなに震えているよ」
誰もいないリビングルームは、
現在、暖房をつけていないので、
今、きゅん君と、ぐーちゃんの家の中でも特に寒い場所です。
そこに、ふたり、やって来て、
寒いことを体感して遊ぶ、昼下がりです。
「ぼ、僕なんか、さ、寒くて、は歯の根が合わないもんね」
きゅん君はそう言って、歯をガチガチと鳴らしてみせます。
「本当だ!それって何だか楽器さんみたいだわね!もしかして、ぐーのブルブルと合わせて何か演奏出来るんじゃない?」
ぐーちゃんの、そのアイデアに、きゅん君 、
真っ先に乗って、足も鳴らしたりして、
即興の演奏会が始まりました。
ガチガチブルブルドンドンドン、
ドンドンブルブルガチガチブルー!
そんな風に、しばらく楽しく、ふたり演奏をしていましたが、
その演奏が突然止まってしまいます。
動いたら、すぐ身体が温まって、震えなくなったからです。
「ぐー、急にブルブル出来なくなっちゃった」
ぐーちゃんがつまらなそうに言うと、きゅん君も同様で、
「僕もだよ。寒かったけど、歯がガチガチ言うの、面白かったのになー」
と、無理矢理ガチガチやってみますが、
動きが何だか不自然です。
「もう家の中はこれ以上寒いとこないから、あとは、しばらく、ジッとして、また寒さが戻るのを待つしかないかな」
そう、きゅん君が言って、その言葉通り、
ジッとする、ふたりです。
本来寒い部屋で、照明も点いていなく、
音もせず、シンとしているので、
よく見ると辺りは何だか不気味です。
今日は外も曇りなので、窓から見える景色も薄暗いのです。
「さっきまでは楽しかったから、分からなかったけど、このお部屋、ちょっと怖くない?」
ぐーちゃんが、沈んだ声で言いました。
「そうだね。何だろう。普段そんなに使ってない部屋だからかな。あんまり雰囲気よろしくないね」
きゅん君もだんだん怖くなってきたようです。
そう言っているうちに、時間はすっかり夕方になり、
外は真っ暗で、したがって、部屋の中も真っ暗です。
「何やってるんだろうね。僕たち」
きゅん君がぽつりと言うと、いきなり、ぐーちゃんが、
「今、ミシッ!っとか、音しなかった?」
なんて怖いことを言って、更に続けて、
「今度は、ピキン!とか言ったー!」
と、ラップ音と言うんでしょうか?
そんな音が、どんどん頻繁に、
聞こえるような感じにとらわれてきて、
そのラップ音に合わせて、
ふたり、気がつけば寒くもないのに、
再び震えたり、歯の根が合わなくなってきました。
なので、自然とまた、ふたりの演奏会が再開しました。
ガチガチブルブルドンドンドン、ミシッ!
ドンドンブルブルガチガチブルー!ピキン!
と、今度は、時たま入る、ラップ音をゲストに迎えながら。

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