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室外機は風の家

ここ、いぬうた市の今日の光景はというと、
いつものように、きゅん君と、ぐーちゃんが、
ママと散歩中であります。
只今、いぬうた公園に向かう途中の住宅街を、
テクテクと歩いているところであります。
いつもとちょっと違うのは、ぐーちゃんがさっきから、
やたらと辺りをキョロキョロして歩いてますね。
ぐーちゃん、どうしたんですか?
何か、気になることでもあるんですか?
「ここは住宅街さんだけど、あれもどなたかのおウチなのかしら?」
あれってどれですかね?
何やら、ぐーちゃん、前足を、
ある家の裏側を指しているようですが。
「たぶん、ぐーの言っているのはエアコンの室外機のことだよ」
と、代わりに、きゅん君が教えてくれました。
きゅん君の言う通り、あれはエアコンの室外機ですから、
人が住む家ではないですね。
でも風があそこから出たりしますから、強いて言えば、
風のおウチと言えなくはないですかね。
何てね。冗談ですよ。
しかし、ぐーちゃん、最後までこちらの言うことを聞かずに、
かなり食い気味にこう言いました。
「やっぱり!ぐーの思った通りだわ!四角い感じがおウチっぼいから、どなたか住んでいらっしゃるのではと思ったのよ!だけど風さんのおウチとは、ぐー気付かなかったわ。でも聞いて納得だわ。ちょっと見渡しただけでも、似たようなおウチがそこら中いっぱい見受けられますもんね。これは風さんて、どこにもいらっしゃるから、それだけおウチもいっぱいあるってことなのね」
と、何かを発見した喜びに満ち溢れている、
ぐーちゃんであります。
「いい加減なこと言うもんじゃないよ。ぐー、すっかり信じちゃったじゃないか。これはめんどくさいことになったな。僕、知らないよー」
と、きゅん君は早くも、一抜けた状態です。
いやあ、ぐーちゃん、繰り返し言いますけど、
あれはエアコンの室外機であって、
決して風のおウチではないんですよ。
しかし、もはや、ぐーちゃんの耳には届いていません。
興奮状態の、ぐーちゃんは、
「あっ、あそこにも風さんのおウチ!と思ったら、あっちにも!しかもふたつ並んでいるわー!たぶん親御さんと若い方の二世帯住宅なんだわねー。あらっ!あちらはいっぱい並んでいるわー!もしかしてマンションさんなのかしらね。きっとこの辺りは風さんに大人気なんだわ。だって、この辺は、いぬうた駅も、いぬうた公園も近いから便利ですものねー」
と、室外機を見つけては、いろいろ想像を広げております。
まあ、ぐーちゃんがそこまで喜んでいるなら、
そう思っていても別に差し支えはないですかね。
特に害もないでしょうし。
「まあ、あちらはずいぶんと高い場所にあるわね。見晴らしもいいでしょうし、あれだとお家賃の方もだいぶするのでは?さぞかし、いい風さんを吹かすんでしょうね。だからお給料もその分お高いのよ」
と、そのうち風の給料事情にも、言及し始めた、
ぐーちゃんなのでした。

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