正夢?逆夢?
穏やかで静かな夜がまた、いぬうた市にやって来ました。
きゅん君と、ぐーちゃんはすでに夢の中で、
きゅん君は夢を見ているのに、
それに気づかない程、ぐっすりと熟睡しています。
ぐーちゃんは、ぐーちゃんで、
夢の中で、これからどうゆう夢を見ようかと、
思案中なのでありました。
「初夢は終わったことだし、今晩は自由に何の気兼ねなく夢が見たいわね。どんな夢がいいかなあ?そうだわ!ぐー、自由に何処にでも行く夢が見たいわ」
と、まずはいつものように、
夢の国の支配人を呼び出しにかかりますが、
今晩に限って、支配人は待っても待っても、
ぐーちゃんの前に現れません。
「おかしいわね。もしかしたらお正月に初夢とかで、お休みが全然なかっただろうから、代休をお取りになっているのかもしれないわね。それだったら仕方のないことだわ。昨今の働き方改革が夢の国でも行われているのは、いいことよね。だったら今晩は、ぐー自力で、いい夢を見ることにしましょう」
と、珍しく聞き分けのいい、ぐーちゃんは、
夢の中で、夢の入り口に入って行きました。
「楽しみー!楽しみー!今日はどんな夢でしょう?」
しかし、残念なことに、ぐーちゃんの見た夢は、
全くいい夢ではありませんでした。
それも事もあろうか、ぐーちゃんは、
自由に何処にでも行ける夢を希望していたのに反して、
ぐーちゃんが見た夢は、ずっとリードに繋がれて、
何処にも行けない夢だったのです。
朝起きて、ぐーちゃんは、ぷんぷんです。
「何て夢だったの!ぐーが見たいものとは正反対の夢を見るとは!全く朝から縁起でもないわ!ぷんぷん!」
と大層お怒りです。
ですが、残念なことに、
ぐーちゃんの不運はこの日、まだ続いたのでした。
それは、この日の散歩から帰って来た時のこと。
いつものように飼い主から、玄関で足を拭いてもらい、
家に入ったのまではいいのですが、
いつまでもリードを外してもらえなかったのです。
きゅん君はとっくに外してもらって、
家の中を自由に歩き回っていますが、
どうやら、ぐーちゃんだけ、
飼い主が外すのを忘れているようです。
「ははははは!飼い主ったら、ぐーの、リードを取り忘れているね!でも動けない訳じゃないんだから、気にする事ないよ。長いリードが、ずっと、ぐーの後ろから付いて来て、それが何だかリードが、ぐーの子分みたいでカッコいいじゃないか!ははははは!」
と、きゅん君はとても楽しそうですが、
「何よ!きゅんたらっ!」
ぐーちゃんは案の定怒って、同時に、ブンッ!
と首をぶん回したら、リードがムチのようにしなって、
きゅん君に、パシーンッ!と当たりました。
「痛っ!何すんだよ!ぐー!」
と、きゅん君も怒りますが、
でも、ぐーちゃんは、それ以上におかんむりで、
「きゅんに天罰が下ったのよ!ぐーにあんな夢見せるから!悪いと思ったら、ぐーをこの夢から早く出しなさい!」
どうやらまだこの出来事も、
悪い夢の続きだと思って、それで、
この夢を見たのでは、きゅん君のせい。
といつの間にか、決めつけて、
きゅん君に、八つ当たりをしました。
「これはたぶん逆夢よね。夢から覚めたら、ぐーにきっといいことがあるはず」
そして都合よく、そう願いますが、
でも現実は、あの悪い夢が、
正夢になってしまった、ぐーちゃんなのです。
でも1番かわいそうなのは、ぐーちゃんの夢のことは、
何にも知らないのに、ただただとばっちりで災難に、
巻き込まれた、きゅん君ですね。
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