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ウワサが独り歩き

「ぐー、知ってる?」
と言う、いぬうた市は、きゅん君の、
ぐーちゃんへの問いかけから始まった今回のお話ですが、
続いて、きゅん君が言ったことが、
「と、えーと、えーと、何かこの、いぬうた市に、今、あるウワサが、はびこっていて、そのウワサをある日、僕は、ある知り合いのわんこから聞いたのだけれども、言おうとしたら、それがどんなウワサかを忘れてしまった、大変お茶目な僕なのであった」
と、舌をペロリと出しておちゃらけて誤魔化したので、
こりゃダメだ。と思った、ぐーちゃんは、
このあと散歩に出たタイミングでたまたま会った、
知り合いのわんこに、そのウワサについて聞いてみたら、
そのわんこは知っていて、ぐーちゃんに教えてくれたのは、
以下のようなものでした。
それは、あるウワサが独り歩きしているというウワサ。でした。
「何じゃそりゃ!」
ぐーちゃんから、そのウワサの内容を聞いた、
きゅん君の反応は、以上のようなものでした。
ぐーちゃんも、その反応に激しく同意します。
「ホント、何じゃそりゃ!だわよね。ぐーも、それを聞いた時、全く同じこと言いそうになったわよ」
「でもウワサって独り歩きするんだね。もしかしてそのウワサを捕まえて、聞かないと何のウワサかが分からないのかな?でもそれもウワサな訳だから、そのウワサもそのうち独り歩きしてしまうかもしれないよね?そうすると、それもウワサになって、どんどん増えていってしまうのかな?」
きゅん君は頭の中で、ウワサとやらが、どんどん増殖して、
そこいら中に歩いている光景を想像しました。
ぐーちゃんも、同じように考えます。
「ぐー、何だかこんがらがってきちゃったわ!一体、一番最初のウワサさんって、どんな内容だったのかしら?」
ぐーちゃんが、そう言うと、きゅん君も、
「それだよ!それ?それが知りたいんだよ!」
と激しく言いました。
ぐーちゃん、そこで思うことがありました。
「あれ?それがもしかして、きゅんが、あるわんこさんから聞いたウワサさんなんじゃないの?」
それを、きゅん君に言ったら、
「それは、そうかもしれないし、そうでないかもしれん。何しろ僕はそれを忘れてしまったのだから」
と、とても、恥ずかしそうに、言いました。
すると、ぐーちゃんは、ひとつため息をついて、
「いずれにせよ、忘れるくらいのウワサさんなんだから、大した内容じゃないのかも」
と、言って、それでそのウワサについての話は、
それ以上話すことはなく、その日は終わりとなったのです。
でもって別の日、きゅん君と、ぐーちゃんは、
散歩中に、前方からやってきた、知らないわんこに、
すれ違いざま、急にこう、ささやかれたのです。
それは、隣町にものすごく美味しいオヤツを、
いくらでもタダでくれる店があるらしい。
ということを。
それを聞いた、ふたりは、しばし呆然としましたが、
「今のがもしかして、例のウワサさんかしら?ひとつだけ確かだったのは、ウワサさん、独り歩きではなかったわね。飼い主らしき人と一緒だった」
何てことを、ぐーちゃんが、ボソッと言いました。
すると続けて、きゅん君が、
「何て、すごいウワサなんだろう。まるでユートピアが存在すると言っているようなウワサじゃないか」
と興奮が隠せない様子です。
そんな、きゅん君を見て、ぐーちゃんが、
「そんなすごいウワサを、きゅんはたぶん聞いていたのよ。何で、そんなすごいウワサを忘れんのよ!」
と、呆れるのを隠せない、ぐーちゃんです。
果たして、本当にあるんですかね?そんな店。
あくまでウワサはウワサですから、信じるのは、
ほどほどが良さそうですね。
きゅん君、ぐーちゃん。

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