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カラス、ゴミ荒らす

いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんの家の前は、
ゴミ置場になっているのですが、ある朝、
ふたりが散歩に出ようと、飼い主に連れられて、
家の前の通りに出たら、そこにゴミが散乱していました。
「何かしら?これは。こんなとこに、こんなゴミの出し方したら、カラスさんに食べられちゃうわ」
そう、ぐーちゃんが言うと、
「いやいや、そのカラスが散らかしたんだよ。ゴミをこんな出し方、誰がするっていうんだ」
と、きゅん君が極めて冷めた口調で返します。
しかし、ぐーちゃんは、なるほど!という感じで、
「あっ、カラスさんがやったのね。まあ、それは。それは。朝からお元気でよろしいわ。ぐーも散らかして遊ぶのは大好きよ。カラスさんもそうなのね」
と、カラスに理解がある、ぐーちゃんです。
でも、きゅん君は違う立場なようです。
「何がいいんだよ。カラスはゴミを散らかしているんだぞ。ただ迷惑なだけじゃないか」
ぐーちゃんにそう反論すると、
「きゅんだって、おウチのゴミ箱、散らかして遊んだりするじゃない。カラスさんと全く同じことしてるわ。ママは迷惑そうにしているし」
ぐーちゃんも更に返して、しばらく言い争います。
「ママはあくまで迷惑そうなだけさ。本当に迷惑している訳じゃないよ。心の何処かでは、きゅん、可愛い!って、思っているフシがあるし、一方、このカラスのゴミの散らかし方は、生ゴミっていうこともあるし、ママを筆頭に本当にみんなイヤがっているよ。そこには可愛さは微塵もない」
「それは、ただの、きゅんの思い込みだわ。まず、ぐーは、きゅんのその行為を可愛いだなんて、これっぽっちも思いもしないし、それはママだって一緒よ。きゅんはそう思いたいだけの話ね」
「ぐーにママの何が分かるっていうんだ!ママの本当の気持ちが分かるのは、僕だけだよ!少なくとも、ぐーなんかより全然!」
「それは聞き捨てならないわ!ママと気持ちが通じ合っているのは、ぐーの方よ!ママは、ぐーのモノよ!」
「何言ってんだ!僕のモノに決まってるじゃないか!」
と、ふたりの言い争いは、いつの間にか、
ママの取り合いになっていました。
そんな、地上の路上で、睨み合う、
きゅん君と、ぐーちゃんを電線の上から、
ずっと見ていた者がおりました。
それはこの、ふたりの争いの発端となったカラスであります。
そして、更にそのカラス、地上の路上に降りて来て、
いよいよ言葉も途切れ、ただ睨み合い、
ピリピリした空気になっていた、きゅん君と、
ぐーちゃんの間を取り持つように、カアカア!
と鳴いたのです。
しかし、よりピリピリした、ぐーちゃんは、
「うるさい!カアカアじゃない!今、ぐーたちはママの話をしているのよ!」
と、カラスを怒鳴りつけて、きゅん君は逆に、
「おう、ちょうどいいとこに来たな。カラス君。今の話、聞いていただろ。悪いのは、ぐーに決まっているよな。だったら、そのゴミ、ぐーに投げつけてやってくれ!」
と、カラスを味方につけようとして、
更に、ぐーちゃんの逆鱗にふれ、
「カラスさんは関係ないじゃない!やるんだったら、自分でやりなさいよ!こんな風に!」
と、言うと同時に、ぐーちゃん、散らばったゴミを、
きゅん君、目掛けて蹴り上げると、多少、目標がズレて、
さっきから、きゅん君と、ぐーちゃんのリードを持ちながら、
この場から離れようとしない、
ふたりに困り果てていた飼い主に命中し、
カラスはカアカア!と笑い、飛び去って、
きゅん君と、ぐーちゃんはまだまだ睨み合うのでありました。

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