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爽やかなセミ

いつの間にか、きゅん君と、ぐーちゃんの住む、
いぬうた市にある、いぬうた公園はセミの声で、
埋め尽くされています。
朝も早くから、その日もまた暑くなることを予告するように、
ミンミン、ジージーと鳴きじゃくっていますね。
夏らしい光景といえば、それまでですが、
きゅん君も、ぐーちゃんも、ここのところの連日の暑さには、
ちょっと参ってもいるので、いい加減、そのセミたちの声が、
煩わしく聞こえてしまってます。
今朝もまた散歩で、いぬうた公園にやって来ていますが、
元気なセミの集団には、ゲンナリしている、
おふたりなのでありました。
「まあ、今朝も必要以上にお元気ね。セミさん」
と、せめてものイヤミを言う、ぐーちゃんです。
「百歩譲って、いてくれるのは全然いいんだけど、もうちょっと鳴き声が何とかならないかな?ミンミンやジージーだと暑さが倍増する感じがするんだよね」
なるほど。だったら、どんな鳴き声だったら、
いいんですか?きゅん君。
「そうだなあ。セミにもいろいろいて、ツクツクボーシやら、カナカナカナやら、鳴くセミもいるけど、いぬうた市には今のところ、ミンミンとジージーと鳴くセミくらいしか見当たらないかかなあ」
いないものはしょうがないですよね。
鳴き方を変えてもらう訳にもいかないですし。
「でも考えるだけ考えてもいいじゃないか。どんな鳴き声だったら爽やかで涼しいのか?それを考えることで、ちょっとは涼しくなるかもしれないし」
まあ、それは全然構わないですけど、きゅん君。
じゃあ、どんな鳴き声が爽やかで涼しげですかね?
すると、きゅん君、しばらく考えて、こう言いました。
「濁点はないかなあ。あと、ミンミンが暑く感じるんだから、ラ行もないのかなあ。あっ、でも、秋の鈴虫のリーンリーンは涼しく感じるなあ。リーンリーンは風鈴もそんな感じだし、となると、リーンリーンだね」
と、一応、きゅん君の結論が出たようです。
爽やかで涼しげな鳴き声、それはリーンリーンっと。
すると、今まで黙っていた、ぐーちゃんから、
「ぐー、異議あり」
と、言ってきたのです。
じゃあ、ぐーちゃんはどんな鳴き声が、
爽やかで涼しげだと思いますか?
そう聞くと、ぐーちゃん、待ってました!
という感じで発言します。
「ぐーが思うに、鈴虫さんや風鈴さんのリーンリーンは涼しげではあるけど、爽やかではないと思うわ。爽やかな音はやっぱり、サ行じゃないかしら?シシシシシー!とか、セセセセセー!がいいんじゃない。あっ、セミさんだから、セセセセセー!ね。ぐー、決定!セセセセセー!でしくよろー!」
と、ぐーちゃんは、セセセセセー!で決まったようです。
はい、では、これで一件落着ですね。
で、おふたり、ちょっとは涼しくなりました?
ちなみに、この一連の会話は散歩中に行われていて、
現在もまだ、散歩中の、いぬうた公園の中で、
辺りは相変わらず、セミが騒がしく鳴いていて、
やっぱり、ミンミンー!だの、ジージーが、
おふたりの上で、鳴り響いていて、思わず、
きゅん君と、ぐーちゃん、同時に、
「うるさいっー!」とけたたましく吠えました。
その、おふたりのワンッワォンッー!と鳴く声も、
相当暑苦しいですけどね。

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