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帰らないわんこ

いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんはつくづく思います。
ドッグランって何て楽しいところ何だろうと。
だから、ぐーちゃんなどは帰りたくなくて、
いつまでもいたくて、帰り際になると、逃げ回ります。
なのでなかなかリードをつけられなくて、
ママや飼い主は、ぐーちゃんを捕まえるのに、
いつも一苦労しています。
「何故、ぐーが逃げるかというと、ぐーなりに、もうちょっとくらいドッグランさんにいてもいいじゃない。と思うからよ。だって早く帰らないといけない理由なんて、ぐーにはひとつもないんだもの」
と、これは、ぐーちゃんの言い分ですが、
ぐーちゃんにはなくても、
ママや飼い主にはあるんじゃないですか?
と、改めて聞き直すと、それでも、
「そうかしら?家に帰っても、ぐだぐだしてるようにしか、ぐーには見えないけど。特に飼い主は。だから、ぐーはもうちょっといてもいいと思って逃げたりしてるのよ」
などと言って、自分の主張を崩さない、ぐーちゃんです。
「僕は逃げ回ったりしないけど、ぐーの気持ちはよく分かるよ。だって楽しいんだもん。ドッグランは」
とは、きゅん君の弁です。
このように、みんなわんこはドッグランが好きなんですかね。
てな感じで、今日もまたドッグランに来ました、
きゅん君、ぐーちゃん。
そこで、ぐーちゃんを遥かに上回る、
帰りたくない病のわんこがいたのです。
わーい!など言って、例のように、来たそうそう、
きゅん君と、ぐーちゃんがはしゃいでいると、
出口のある方とは真逆のフェンスに、
ずっと立ち止まっている、わんこがいました。
何をしているんだろう?と思って、
ぐーちゃんが声をかけました。
たぶん初めて会ったわんこなので、
「初めまして。ぐーです。いきなりですけど、あなたはそこで何をされているの?」
と挨拶がてら聞きました。
すると、そのわんこが出口のほうを見て答えます。
「ほら、あの出口の方に僕の飼い主が待ち受けているんだ。僕にリードをつけて、早く帰らそうとするべく。だから僕はそれを断固拒否の態度を見せているんだ」
なるほど。それでこれだけ間合いを取っているんですね。
これでは飼い主さんは、このわんこを、
捕まえるのはかなり大変でしょうね。
実際、飼い主さんは出口のゲート付近で、
このわんこの名前を呼びながら困った顔をしています。
この様子を見た、きゅん君と、ぐーちゃんは、
さすがに飼い主さんがかわいそうだと思って、
このわんこを説得することにしました。
「君の飼い主さん、相当困っている感じだよ。だからそろそろ帰ってあげれば?」
そう、きゅん君が言うと、
「それを上回るくらい僕は帰りたくないんだよ。これは絶対譲れないんだ」
そのわんこはこう答え、効き目がありません。
次に、ぐーちゃんが説得します。
「ぐーが言うのも何ですが、このドッグランさんから帰らなくてずっといるということは、ここに二度と来れないということよ。果たしてそれでもいいのかしら?帰るから、また来ることが出来るんじゃない」
この自分にも返ってきそうなこの言葉は、
そのわんこにも刺さったようで、
「そうかあ。そうだよな。ここにもう来れないのは絶対イヤだなあ。じゃあ帰ることにするよ」
と、言って、とぼとぼと出口に向かったわんこでした。
その姿を見送りながら、
「ぐー、今の自分が言った言葉忘れんなよ。今日の帰り際、ダダこねてママを困らせるなよ」
と、きゅん君が言って、
ははは。と笑ってごまかす、ぐーちゃんであります。

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