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完璧な1日

「今日は完璧な1日だ」
いぬうた市の自宅の1階のダイニングルームで、
きゅん君が、ある日の夕方に、
ひとり満足そうにつぶやきました。
しかし、そのあと、ちょっと苦い顔になって、
こうも続けました。
「ただし、ここまでは」
きゅん君の言う完璧な1日とは、こうゆうことです。
その日は朝の目覚めから最高でした。
きゅん君が、いぬうた市全土を大冒険する、
大活劇的な夢を見て、すっかり、スカッ!っと言う、
気分でベッドから起きると、外は大変いい天気で、
朝ご飯も、ママが分量を間違えたのか、
いつもより多めで、ますます、いい気分になり、
そのままママと、ぐーちゃんと散歩に出かけると、
オヤツをくれるおじさんがいたり、
大好きなペットショップにママが連れて行ってくれて、
ここでも、ヤギミルクや、オヤツをたんまりもらって、
昼寝をすれば、朝見た大活劇な夢の続編を見て、
それが大ヒットした映画のように、
更にスケールアップしていて、大満足で目が覚めて、
夕立になり、冒頭のセリフが、ついこぼれた、
きゅん君だったのです。
こんなに完璧な1日はなかなかないもので、
このまま、いい印象のまま、今日という日を、
終わりたい。と思った、きゅん君に、
あるイヤな予感が、ふと、よぎって、
「ただし、ここまでは」
というセリフにつながったのでした。
その、イヤな予感とは、具体的には、
きゅん君自身も、よく分かりませんでしたが、
ただ脳裏に、ぐーちゃんの顔が浮かんで、
仕方がなかったのです。
ある意味、この、きゅん君のイヤな予感は、
ばっちし当たっていました。
何故なら、きゅん君が、
「ただし、ここまでは」と言った時、
ぐーちゃんが、きゅん君のいるダイニングルームに、
入りかけていて、その、きゅん君の言葉を、
聞いてしまったからでした。
その言葉を聞いて、ぐーちゃんは、にんまり笑い、
そのまま、きゅん君に気付かれないように、
ダイニングルームを、あとにしたのでした。
そして、ぐーちゃんは、更に、にんまり笑い、
「きゅんのお望み通り、ここからは、せいぜい完璧な1日とは全く真逆の思いをさせてあげましょうじゃないの」
こう、言い放ったのでした。
そこから、きゅん君に、イヤな気分を味合わせるべく、
作戦を練り、ある罠を張った、ぐーちゃんです。
それは、夕飯時のフードをワザと少し残した、
ぐーちゃんは、そのあと、こっそり、そのフードを、
キッチンの入り口に置き、きゅん君を誘き寄せ、
そのタイミングで、吠えて、ママを呼び出し、
キッチンにいる、きゅん君はママから大目玉を喰らう。
という作戦を練ったのでした。
しかし、イヤな予感が走って、その後、ぐーちゃんに、
充分警戒し、逆にずっと、ぐーちゃんを見張っていた、
一枚上手だった、きゅん君は、ぐーちゃんの、
罠もズバリ見破り、ぐーちゃんが罠を仕掛けている最中に、
裏をかいて、大声で吠えて、ママを呼び出して、
キッチンにいる、ぐーちゃんはママに大目玉を喰らい、
何とか危ないところをギリギリセーフで、
本日を完璧な1日で終わることのできた、きゅん君でした。

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