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キャンディで空を飛ぶ

「おお、今月も来たねえ!よくいらっしゃいましたー!って、今月のは、何だこりゃあ!」
と、いぬうた市の、きゅん君が驚いた理由といえば、
箱の中から見覚えのないモノが出て来たからで、
その箱というのは、きゅん君と、ぐーちゃんの、
ふたりの家には毎月、わんずボックスという、
犬グッズがいろいろ入った宅配便でありまして、
ママが注文してくれたそれには、
毎回その季節季節に沿ったオモチャのぬいぐるみが、
その中に必ず入っている次第です。
で、7月の今月は一体何が入っていたか?というと、
それがキャンディのぬいぐるみでありました。
「キャンディ?キャンディって知っているか?ぐー」
きゅん君、思わず、隣で楽しみに待っていた、ぐーちゃんに聞きます。
「キャンディさん、知らないです。初めましてでっす!」
と、どうやら、ぐーちゃんも知らないようですね。
ではご説明致しますと、このキャンディは、
正確にはロリポップキャンディで、
いわゆる棒付きのペロペロキャンディと、
でも言うんでしょうか。
そんなピンク色したキャンディのぬいぐるみなのですが、
では何故、そのキャンディが入っていたか?
というと、
このキャンディは街外れの魔法使いのお店で、
売っているキャンディでありまして、
これを舐めると、例えば空が飛べたりするとかの、
実に不思議なおまじないがかかっているのでした。
と、いう、わんずボックスが独自に作り上げた、
物語世界を楽しみながら、遊ぶぬいぐるみなんですけど、
どうでしょう?おふたりには伝わりましたか?
「んー!微妙ーかなあ。話のだいたいの流れは一応理解はしたけどさ、そもそもこれ本物のキャンディじゃないでしょ。だから舐めても甘いどころか全然味がしないしだろうし。となると、その魔法とやらの物語世界に入って行きにくいよねー」
と、きゅん君は非常に手厳しい感じありまして、
で、では、もう一方の、ぐーちゃんはどうかといえば、
もっと鋭くかつ辛辣でありました。
「そうね。まず季節が全然関係ないわね。それに、きゅんの言う通り、このキャンディさんが本当においしゅうござったら、お空にも飛べる気分にもなれるけど、そこのリアリティラインさんにお説得がないと、ぐー、お空を飛ぶの無理ー!」
と、これでは身もふたもありません。
まあまあ、ここはおふたり大目に見ませんか。
ママがせっかく、ふたりのためを思って、
注文してくれているんですから。
「いやあ、だからってナメてもらっては困るよ、僕らをさ。もうちょっと引き締めてこれからはやって欲しいね。なあ、ぐー」
「そうね」
と、きゅん君、ぐーちゃん共、
この1階のダイニングルームは、これで解散したのですが、
おや、何と、ぐーちゃんが戻って来たではありませんか。
そして何か言っていますね。
「さっきは文句さんだけ言って去ったから分からなかったけど、もしや舐めたら、本当は美味しいのかもー。結局きゅんもこれは試してないわ。だからこれは是非試すお価値があることよ。万が一ということもあるしー」
と、ぐーちゃん、例のキャンディの、
ぬいぐるみを舐め始めたのです。
しかし案の定というか、やっぱりこれは、
ぬいぐるみなので、味など全くなく、
「ぺっ!ぺっぺ!マズイ!マズイわ!何だあ、やっぱ、ないんかい!お味!ちょっと期待させてからに、この、ぐーを!」
と、もしやと思っただけに、その反動が怒りになり、
勢い、キャンディのぬいぐるみを、
力任せに噛みまくった、ぐーちゃんです。
と、そこに現れたママ、ぐーちゃんの、
この行動を止めさせようと、
ぐーちゃんをおもむろに抱っこしました。
ひょんなことから宙に浮いた、ぐーちゃん。
その時、ぐーちゃんが頭に思ったことは、
「あっ、ぐー、お空を飛んだわ!これはキャンディさんのおまじないのおかげだわあ!」
で、ありましたとさ。

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