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ソファ、渡り犬

「さあ、ここは今日はこの辺でいいかな。あとの残りはもうひとつの方に移動するか」
と、何やらぶつぶつ言っているのは、
いぬうた市のきゅん君ですが、こことか、もうひとつって、
どうゆう意味なんでしょうね。
ちょっとしばらく、きゅん君の様子を、
うかがってみるとしましょうか。
現在の、きゅん君は自宅の1階の、
ダイニングルームにいるのですが、
さっきの言葉を残したあと、しばらくいたソファから、
別のソファに移りましたね。
ということは、ここというのが、しばらくいたソファのことで、
もうひとつ、というのが、
別のソファのことなんでしょうか?
では、きゅん君、正解を教えて下さい。
「そうだよ。その通りだけど、それがどうしたの?何かいけないとでもいうのかい?」
いやいや、きゅん君、別に悪くはないのですが、
何で、ふたつのソファを渡り歩いているんですか?
ふたつのソファの使い分けはどのようにされているんですか?
その問いに、きゅん君答えます。
「そうだなあ。まあ気分といえば気分なんだけど、見れば分かるように、同じソファはソファでも、ふたつだいぶ違うよね」
まあそうですね。
ひとつはそんなに大きくない窓辺にあるソファと、
もうひとつは大きくて部屋の奥にあるソファですね。
「そう、その通り。そこが使い分けのポイントだよ。窓辺のソファは、寝心地はあんまり大きくないし、クッションもきいてないけど、とにかく窓が近いし、ということは陽が当たるし、外も見える。だからここは気分を上げたい時に主に利用する。で、一方の部屋奥のソファは、大きいところも、とにかくとして、でもソファ最大の特徴はビーズクッションであることだ。
これが何とも言えない寝心地を生んで、とにかく落ち着くのさ。だからしっかり寝たい時はやはりこちらだ。と以上だね。僕の使い分け術は」
と、まあ、語るじゃないですか。きゅん君。
要はそれだけふたつのソファに思い入れがあるんですね。
「分かってくれたかな。僕ってこう見えて、こだわり犬なんだよね」
と、鼻の穴をふくらませながら、
ドヤ顔で決める、きゅん君です。
では、きゅん君、これからもその、
こだわりを貫いて下さいね。
と、散々、きゅん君の頑丈なポリシーを聞いた
次の日、
次の日はとても暑い日で、
朝から日差しもさんさんと降り注いでいるその日、
さて、今日の、きゅん君はどう過ごしてますかね。
現在ふたつのソファのどちらにいるんでしょう?
ちょっと見てみましょうか。
あれ、どちらのソファにも、きゅん君いませんね。
一体、きゅん君はどこにいるんでしょう?
と、あっ、いました!いました!きゅん。
同じ1階のダイニングルームにいるはいるんですが、
何にもないフローリングの床で、ぐたあ。
と横たわっています。
このように、例えば暑過ぎたりすると、
思い入れやこだわりも一気に吹き飛ぶものなんですね。
こんな日はフローリングの床の冷ややかさには、
かなわない、きゅん君なのでありました。

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