三重構造の街つくば(3)

とある場所で教育委員の人と市議の方がお話をされていた。そこで話題になっていたのは、学校にいる外国人の子への教育をどうするかという問題であった。大規模な研究所が多数あるだけに、外国人は市内に1万人もいるのだという。そして、もちろん全員ではないにせよ、研究所は任期付きでの滞在者も多く、日本語を学ぶ意欲のない人の割合も高く、そのような人たちの子供を中心に語学問題が大変大きな問題になるのだという。

市の人口は24万人であるから、単純に考えて20人に1人くらいの割合で外国人が混じっている、という感じである。しかし、そのような状況でありながらも、背景の異なる人が多数いて、しかも分断されているのがこの街の特徴である。したがって、問題を認識せずに生きている人も多く、協力関係も希薄である。交友関係や地域で協力するというような枠組みにとらわれる必要は必ずしもないが、20人に1人を支援するのに、外国語堪能な人を要するとなると、お金で解決しようとしてもそもそも、相当な資源を必要としていて、それを市民で賄うのが大変なように思えてこないだろうか?まして多くの市民が非協力的な中で。

社会の相互互助とはこういう性質のもので、隣人とのつながりを濃厚に持って支え合いをしていくという発想であっても、市レベル、県レベル、国レベルに拡大して一部のプロに嘱託することで支え合いを実現するにしても、結局需要と供給の頭数があって、その比率自体は変えられない。それゆえ、支え合いに必要な人材の確保はそのような規模の見直しでは全く解消されない。にも関わらずそのようなことが進むのは、プロという特定個人に負担を集中させることでプロ以外の個人の負担の平均値が減るために負担が小さい社会になっているように錯覚しているからに他ならない。そして、特定個人への負担の集中は当然限界がある。介護現場などでは日本全体ですでに破綻するレベルになってきている。

話が脱線した。少子化が深刻な日本において、いくら流入人口が確保されているつくば市といえど、問題はないわけではない。いや、つくば市の場合より複雑である。北部の旧筑波町地域などは茨城の片田舎である。人口減少も見られる。そして、つくば市の中心部のインフラは1970年代からの集中整備でできているため、集中的に老朽化している。そのくせ、一部地域ではいまだに大量の人口流入がある。つくば市北部は学校インフラでは過剰気味、中心部は老朽化で改修費用がかさむ、一部開発地域は人口流入で新しい学校さえ必要。とにかく金がかかる。そういう状況。

で、どうするか。北部では旧筑波町全域の小中学校をわずか一校にまで統合する急進的な再編政策をとった。そして、中心部ではお茶を濁しつつ、人口流入地域もある程度の整備は進めつつも、必要数には手が届かない。凄まじいまでに問題だけが積み重なる。そんな話である。

三重構造の街で、しかも分断されている。しかし、政治というインフラが分断されているわけではない。住区ごとに市があるわけではない。分断されているにも関わらず、政治も地域も経済も共有されている。問題だけが分断できるわけではない。いいところだけ持っていくことができるわけではない。それぞれの市民が異なる目標や理想を持ってもいる。にもかかわらず、行政は1つ。「何をやっても誰からかは叩かれる」という運命にあるようだ。

そんな街で、全体の目標を定めるのは大変だ。しかも国からの介入も目標のシフトがある。研究学園都市から住宅都市にシフトした。つくば市は何をしたいのか。それが見えてこない。いや、見せることができるわけもない。臭いところには蓋がなされ、自分たちのことしか見えていない分断を除去する世代をまたいだ努力をこれより重ねるより他ないのではないか。と思っていたら、前回の話でいったような、人口が流出入ばかりする構造の街だった。あ、対話もできなかった。

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