茨城県進学校事情2022〜中高一貫時代への展望〜

大学合格実績は進学校の事情を見る上では非常に使いやすい指標である。茨城県では中高一貫校を大量整備したが、それによって生じる変化は予見しきれないものがあり、それによる影響を不安に思っている市民も少なくないだろう。

中学生と高校生ではやはり成長した高校生の方が長距離通学を家庭が認めやすいだろうということを考えれば、やはり中学受験が普及すれば、わずかながらやや進学実績が分散するのではないか、というのが私の見通しである。今までの茨城県は集約と分散を同時に進めてきた。どういうことかというと、東大の合格実績は70年代までは水戸第一に、以降は土浦第一と水戸第一の2校に集約させ、茨城大学程度の地方国立大ならば「学区の進学校」に分散させることを選んできた。これが今後は完全な分散へと移行するのかもしれない。そう考えている。

判断根拠は先行的に行われてきた中高一貫校が、実際に既存のトップ校の実績を貰い受ける構図ができていることだ。2022年の東大合格実績を見ると、水戸第一14、土浦第一14、並木中等9、江戸川学園取手6、竹園3、日立第一2、常総学院2、清真学園2、土浦日大1、茗溪学園1の計54名。一時期に比べれば減少しているが、それ以上に、水戸第一と土浦第一のシェアが低下し、特に土浦第一は34年ぶりの低水準になっている。そして、その低下した水準に並木が迫りつつあり、江戸川学園取手も一時期ほどではないが次の竹園の2倍である。2000年代までは0の年も多かった日立第一は2名ほどながら安定的に実績を挙げるようになっている。また、公立校の整備が手薄なつくば市周辺の私立校から3校も入っており、分散傾向と認識できる。

しかし、中上位校という部分では少し情勢が異なる。東北大学に合格実績がある高校は牛久栄進2、古河中等2、下妻第一3、竹園13、土浦第一21、並木中等10、日立第一12、水戸桜ノ牧1、水戸第一20、水戸第二2、緑岡1、竜ヶ崎第一6、茨城3、江戸川学園取手2、常総学院1、水城6、清真学園1、土浦日大1、水戸葵陵1の合計108名。地元筑波大学の合格実績10名以上の学校を並べると下妻第一、竹園、土浦第一、土浦第二、並木中等、日立第一、水戸第一、江戸川学園取手、常総学院、清真学園、土浦日大、茗溪学園の12校になる。東北大に合格実績を持ち、筑波大学に10名以上の合格実績がある学校は下妻第一、竹園、土浦第一、並木中等、日立第一、水戸第一、江戸川学園取手、常総学院、清真学園、土浦日大になる。

県西における下妻第一は水海道第一や下館第一に比べて実績に差をつけており、この傾向がもっと進んでくれれば、比較的南北に移動しやすいこの3校で差がつくため、機能的な分散が見込まれる。これまで土浦第二や牛久栄進に行けない生徒は選択肢に困りがちな状況であったが、水海道第一と下妻第一が安定的に差がついてくれれば、ギャップを埋める学校として機能することが期待できる。牛久栄進は東北大に合格者を出したが筑波大が6名にとどまる一方、土浦第二は東北大に0ながら筑波大に13名とのことで、牛久栄進はやや挑戦させる傾向、土浦第二は安全志向という印象は今年も継続したが、ここにきて土浦第二から初めて京都大学に合格実績が上がった。

県南の高校で水海道第一、下妻第一、土浦第二、牛久栄進の4校は竹園高校の下位にあたり、多数の進学希望者を受け入れているが、これらの学校が完全に対等であれば、竹園にギリギリ行けない生徒や、これらの学校にギリギリ行けない生徒の不満足度が高まる。東西移動は難しいが南北移動が比較的容易なこの地域において、水海道第一と下妻第一と、土浦第二と牛久栄進の2校ずつで難易度に一定の差が開くことは望ましいと考える。

茨城大学の合格実績等、新たな情報が判明次第、更新を予定している。

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