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素振りの意味(型の意味改訂版)

型、つまりフォームについて、君はどんなイメージを持っていますか?
教科書に載っている基本的な形、それとも間違いのない正解といったイメージでしょうか?
多くの人がそう感じるかもしれませんが、実はそれだけではないんです。私は型をこう考えています。

「感覚を形にするための器」

例えば、ボールをラケットで打ったときに感じる感覚――「打った感覚」。これは、プレイヤーにとって非常に大切なものです。この感覚を何度でも再現し続けるためには、それを保持する器が必要です。感覚という液体を形にするための器、それが型であり、フォームなのです。

ここで一つの疑問が浮かびます。
「感覚の器がフォームなら、100人いれば100通りの感覚があるはずだ。ならば、フォームも100種類あって良いはずだ。」

その通りです。では、なぜ「基本、教科書、正解」といった固定されたイメージがついているのでしょうか?もっと自由であるべきなのに、一般的なフォームとは一体何なのでしょうか?

それは、「あのフォームは自分以外の誰かのもの」だからです。

具体的に言えば、天才や偉人が持っていた優れた感覚を形にしていた器を、私たちは真似しているだけなんです。これが教科書的なフォームの正体です。型を真似ることは、感覚を学び、その本質を理解するためには役立つものです。しかし、ここで一つ考えてみてください。

「その感覚、君には遠すぎるのではないか?」

六極図を思い浮かべてみてください。フォームは感覚のすぐ近くにあるべきものです。シンプルに言うと、他人のフォームを模倣しても、自分に合った感覚を得るのは簡単ではありません。特に、普通の才能ではそれがなおさら困難です。ましてや、天才のフォームであればなおさらのこと。器だけ真似ても、中身である感覚がなければ、全く機能しないんです。

ここに多くの悲劇が生まれるのです。型稽古は長い歴史の中で尊ばれてきましたが、それは偉人たちの器を継承することが、重要な財産と見なされていたからです。天才の型を天才が模倣するならば、スムーズに感覚が満たされるかもしれません。しかし、多くの凡人にはそれはミスマッチになりがちです。それでもなお、偉人たちの業を後世に伝えたいという思いが「型稽古」を生み出したのです。

私は君を指導するにあたって、こう考えています。

「君自身の感覚を入れるための、君だけの型を作るべきだ。」

よく「フォームは重要じゃない」と言われることもありますが、それは間違いです。フォームは重要です。ただし、「君の感覚にぴったり合うフォーム」であることが何よりも大切なんです。適切なフォームや型は、非常に大切なものですが、その意味が他の誰かのものと異なるということを理解してください。君の感覚にぴったり合う器がどんな形になるのか、今から楽しみです。

解説

素振りをして上手くなるのか?
私の答えは「上手くなる」。ただし、それは「あなた自身の感覚の再現性や連続性を高めるものであるならば」の話です。逆に、単に「有名なプレーヤーの真似をするだけ」なら、上手くなることは難しいでしょう。

手紙を読んでくださった方には、フォームに対する考え方が従来とは全く異なることに気づいていただけたと思います。型やフォームに対する意識や知識が異なると、会話そのものが成り立たなくなることがあります。しかし、この手紙と解説を通じて、「自分がフォームだと思っていたものの正体」に気づいていただけたと確信しています。

• 先人が残した上達メソッドとしてのフォーム
• プレイの再現性や連続性を高めるためのフォーム

これらは全く異なるものです。しかし、しばしば混同されて使われ、結果として伝わるべきことが伝わらないことが多いのです。残念なことに、上達メソッドとしてのフォームは「一部の選手にしか高い効果を発揮しない」ことが少なくありません。しかし、その効果が発揮されれば、「高みに至る最速の手法」であることも否めません。

成績優秀な選手の方法を一般の選手が真似したがるのは理解できます。たとえ、それが自分に合わず、効果が出なかったとしても、「やり方はあっているはずだ」と信じ続ける――これが悲劇を生む原因でもあります。まずは、自分自身の感覚の再現性や連続性を高め、その先にフォームがあることを理解してください。

テニプラ

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