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ロボ曰く

今僕は2024年の2周目だ。

時代の流れは時として立体駐車場の屋上に吹く風のように、猛烈に過ぎ去っていく。
この流れになかなかついていけない時が多いなと感じた僕は、2023年を2024年と思い込むことにした。するとどうだろう。2023年から2024年に変わる時、僕は「おかえり、2024年」と1年間慣れ親しんできた偽りの2024年が本当の2024年に生まれ変わる瞬間に改めて挨拶ができた。そうして2度目の2024年の5月を過ごしている。

ところが、この本当の2024年を2025年だと思い込む努力をしていないため、困ったことに次は必ず2025年がやってきてしまう。2年間も親しんできた2024年が終わるダメージは計り知れない。やっぱ時間止めるのは難しいね。1年が限界だ。

2025年ともなると結構未来に来てしまったなと思ったけど、未来と今の境目はどこだろう。
僕が小さい時に想像していた未来は以下のとおりだ。

・お酒が飲めたら未来
・いいともが終わったら未来
・イチローが引退したら未来
・ばあちゃんが死んだら未来
・ロボが頭良くなったら未来

てことは実は結構前から未来だ。
かろうじてお酒が飲めないのでそこだけは未来ではない。ライフガードとデカビタばっかり飲んでる。むしろ過去?


ロボが頭良すぎる。

最近の頭良すぎるロボはユニクロのレジ。
カゴに入れた商品を一発で全部スキャンしてくれる。思わず「あっ、すごぉい…🙏」と静か系おばちゃんが褒める時みたいなリアクションをとりがちだ。衝撃度ではiPod touch(初代)が発売された時ぐらいの衝撃だった。
こないだうまい棒10本買った時、「10円。10円。10円。10円。10円。………」ってセルフレジが大声で言いやがって恥ずかしかったから、早くいろんなところで導入してほしいよね。

そしてロボ、謙虚で好き。
「商品が4点で間違いないか再度確認してください」とか言ってくる。
今はまだちゃんと数えて確認をする。「はーい4点であってますよ」と確認ボタンを押すけど、セルフレジのお釣りはもう数えてない。「大丈夫!あんたは間違えてないんだから、自信持ちなさい!」とそのまま財布にしまう。きっとユニクロボもあと何年かしたら信用しきってしまい、確認してと言われてもしなくなるのだろう。

何年か前にエクセルで関数使って100個ぐらいの合計を出させた時に「それ本当に間違いない?」と言われたことがある。「エクセルで計算してるので間違いないです」と言ったところ、「間違えてないか、もう一度電卓で確認しなさい」と言われた。パワハラめいて怖かったので、(もっとロボを信じてくれよ。電卓は信じるのかよ。僕の指は信用ならんぞ。)と思いながら電卓を力強くタタタン!!(ACボタン)タタタン!!(=ボタン)と叩き、「合ってました~!!」と叫んだ。
きっとこの人は天気予報も信じられず、毎日亀の甲羅を火であぶってヒビの形を眺めているのかもしれないなと、やや憐れんだ。

だいたいロボは間違いない。
自動車の運転中、体調不良等で結構しんどいタイミングで「そろそろ休憩しませんか?」と画面表示が出てくる。たしかに今しんどかった。よく分かるなあと感心するし、Spotifyが「こういう曲好きでしょ」と薦めてくる曲もそこそこ好みに合った曲が選曲される。いつの間にかプロの棋士とロボが対局してもロボが勝つようになっているし、紙幣や貨幣のカウンター付きのレジの導入で金額を手打ちする機会は減っている。


「もはや信じるべきは自分よりもロボだ。やっぱりロボは間違えないんだな」などと思いながら街を歩く。
車、信号機、携帯電話、AED。
考えてみれば、街は信じるべきロボで溢れかえっていた。

買い物を済ませ、店を出ようとしてふと立ち止まる。
自動ドアが開かない。

なるほど、僕はすでに死んでいるのかもしれない。

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