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タカラジェンヌのてっぺんを目指せ!決戦の試験日

※2021年3月31日に出版された「こう見えて元タカラジェンヌです」のcakes(2022年8月でサービス終了)連載時のバックナンバーを公開しています。書籍化にあたり、泣く泣くカットすることになった枕詞(どうも。からはじまるあいさつ文)付きオリジナルバージョンです※
「タカラヅカ」を支えているのはトップスターだけじゃない!100年以上の歴史を持ち、未婚女性たちが「清く、正しく、美しく」をモットーに歌い踊る宝塚歌劇団。その美しさでファンを魅了するスターの隣には、モヒカンの悪役や貫禄のあるおじさん役を全力で演じきる名バイプレイヤー・天真みちること「たそ」の姿があった……。元SMAP中居正広に「友達になれそう」と、花組トップスター明日海りおには「宝塚に新ジャンルを築いた」と言わしめた伝説の元タカラジェンヌによる、誰も知らない爆笑宝塚エッセイ。

どうも。先日とある舞台を観に行ったのですが、開演ベルが鳴ったと同時に、客席のどなたかの着信音が鳴り響いたんです。

「ブ―――」という低音のブザーに合いの手を入れるように「テン・テレテンテレテンテンテン↓テン↑テン↓テン↑テン↓」というリズミカルなメロディが鳴り響き、直後「ガサガサガサ」と慌てふためいているであろう効果音を背後に感じながら、緞帳が上がっていくのを眺めておりました。

その時ふと「開演時間ピッタリに電話がかかってくるって逆に凄いな」と思いまして、そこから

「きっとその方は今は心臓バックバクだろうけど、後で近しい方に『こんなことがあって……』と話すんだろうな。それで、聞いた人はその人の心中をお察しして『それは大変だったね。でも、そのタイミングで鳴るなんて、“持ってる”ねー』とでも言うのだろうか。でもこの場合の“持ってる”って、そんなに嬉しくないのかもしれないなあ。じゃあ、超素敵な“持ってる”ってどんなんがあるかしら。私はまず“雨女”という点では“持ってる”。でもこれはそんなに嬉しいことではない。ただ、干ばつに困っている地域の人にとっては超うらやましいことなのか……?」

と、謎の思考回路の沼にハマり、ハッと我に返ったころにはオープニングテーマの前奏が過ぎ、全員が歌いだそうとしていました。

危うく公演を気もそぞろに見るところだった。いや、冒頭気もそぞろだった。なんと勿体ないことを……。

この時はこの“持ってる”の最上級の答えは出なかったのですが、今になって「この連載“持ってる”の宝庫じゃん!」ということに気づきました(気になる方はぜひバックナンバーをご覧あれ)。

さて、今日はどんな“持ってる”エピソードになることやら……。

緊張の一瞬!宝塚音楽学校の試験


宝塚音楽学校では、入学してからも「前期・後期(中間・期末)」と1年に3回試験がある。「声楽(調音・クラシック・ポピュラー)、クラシックバレエ、モダンダンス、タップダンス、選択器楽、演劇、日本舞踊」と、7科目+何種類かの課題があり、試験期間は1週間ほどだ。

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