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化学を絡めたアテュ(大アルカナ)【6・恋人】の解釈:科学史

こんにちは。星見夜 天炯(ほしみや てんけい)です。

グルジェフワークの基礎である「奇蹟を求めて」を読んでいました。

トートタロットにおけるアテュ(大アルカナ)の6番目、【恋人】への理解が深まったため、ここで紹介しようと思います。

まず、トートタロットの作者であるクロウリー氏とグルジェフ氏は共に同世代の人物です。

彼らが生きた時代は19世紀末〜20世紀半ばなのですが、まずこの時代の科学史から見ていきましょう。


この時代〜現代まで続く科学のキーワードは【有機物】です。
1度は耳にしたことくらいあるのではないでしょうか?

この有機物は、炭素を軸とした物質の総称です。
人体や生物は炭素が大部分を占めることは、「鋼の錬金術師」の読者の方々ならよくご存知でしょう。

生物の科学的研究には有機物への理解が不可欠なのです。彼らの生きた時代は有機物を対象として化学の黎明期です。

ここまで理解していただいた上で、当時の科学史を追いましょう。


まず、これは絶対に外せません。
有機物質合成の世界初成功です。

今まで有機物質というのは【生命】しか作ることは出来ないとされていました。
その理由としては「生気」と呼ばれる固有の要素を生き物のみが保持していると考えたからです。
この考え方は錬金術に端を発したものです。

その思想の真っ只中でドイツのヴェーラーと言う科学者が、フラスコの中で、一切生物に関係なく有機物を合成してしまったのです。
これにより、生命に特別・神聖な力は一切なく、生命の活動は全て分子の動きに拠るものでしかないという思想は強くなりました。

もうひとつの大きな科学史の転換点は、イギリスのロビンソンと言う科学者の偉業です。

彼は分子構造に基づき、狙った物質の合成に世界で初めて成功しました。

これによって化学実験は、フラスコの中で経験則的に物質を掛け合わせる実験から、紙上に分子構造を書き、電子の遊離と結合を計算する理論へと変化していくのです。

昨今の化学合成技術は紙からパソコン、人間からAIへと計算の場こそ移りましたが、やってることはロビンソン氏の引き継ぎと発展です。


さて、科学史についてはこんな感じです。
生命の神秘が暴かれ、物質的な事実のみが残る時代への転換を感じませんか?

生命しか生み出せなかったはずの有機物をフラスコの中で作ることが出来、分子構造に基づけば欲しい性質を持つ物質が作れるのです。

彼らの思想には、こういった唯物論的科学ブームを取り込んだ上での、狭窄的視野への反発を見て取ることが出来ました。


1回1000文字程度の記事を目指しているので、今回はここまでにします。
科学史の話しか出来ておらず、すみません。

次回は、彼らが神秘論をどう科学を絡めたのかについてお話します。

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