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トレーディングカードやNFTアートが巨額で落札!?アメリカでの投資ブームを解説 #テンカイズ

今、アメリカで起きている空前の投資ブーム。
アメフト選手のトレーディングカード、デジタルアート作品、スニーカーなどが、米オークションにて驚きの額で落札されています。このアメリカでの投資ブームについて、NewsPicksの野村高文さんに解説していただきました。


1. アメリカの投資ブーム。何が売れている?

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野村:今、アメリカで起きている空前の投資ブーム。

宇賀:今までも投資は行われていましたよね?

野村:株式や債券、現物、不動産などの伝統的な投資商品への投資は今までもずっと行われていますし、今でも活況です。しかし、この直近1年くらいのアメリカで、「え、これにこんな値段がつくの?」という現象が続々と起きているんです。

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出典:MOST VALUABLE TOM BRADY ROOKIE CARD RANKINGS / Beckett

1つ目の事例が、スポーツ選手のトレーディングカード
アメリカにも、日本のプロ野球チップスみたいなものがあります。コレクター精神をくすぐりますよね。アメフトのスーパースター、トム・ブレイディー(Tom Brady)選手の新人時代のレアなトレーディングカードに、1枚130万ドルの値段がつきました。日本円だと1億円を超えます

宇賀:1億円!?相当な額。

野村:そして同じく値段がつくことで有名なのが、スニーカー
日本でも90年代にレアスニーカーが話題になった時期があり、レアなスニーカーを履いているとヤンキーに奪われる、そんな話もありました。

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出典:StockX

スニーカーもコレクターズアイテムとして非常にお金が集まっています。StockXというスニーカー専門の売買、オークションをするオンラインのマーケットプレイスがあります。そこによると、NIKEの伝説的な人気シューズ、SB Low Staple NYC Pigeonに3万3400ドルの値段がつきました。日本円では300万円以上

宇賀:これを皆さん、”投資として”買っているんですよね?

野村:そうなんです、ここがポイント。
スニーカー愛好者ももちろんいらっしゃると思いますが、基本的には値上がりを期待して購入されているんです。

宇賀:これ以上、値段上がります?

野村:このスニーカーも、半年前には100万円とかで値段がついていたものが、それ以上の値段に上がっているんですよね。

2. 有名人の影響力は経済もひっくり返す!

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宇賀:なんだか仮想通貨みたいですね。
ある程度行くと「今から買っても遅いでしょ」と言われるけど、そこからもまだ上がる。

野村:まさに、仮想通貨でも同じことが起きているんです。
ビットコインやイーサリアムなど、よく聞く名前の仮想通貨は、去年から数倍、数十倍になって相当高騰しています。

一方で今、聞いたことのないような仮想通貨、「アルトコイン」と呼ばれている暗号通貨が話題になっています。最初はタダみたいな値段なんですが、それをたくさん買っておいて、それが当たった瞬間に数百倍になったりする。

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出典:Dogecoin:ミームから生まれた柴犬印の暗号通貨 / WIRED

最近の事例には、ドージコイン(Dogecoin)という柴犬のアイコンの仮想通貨があります。アメリカのエンジニアが冗談で作ったおもちゃのようなコインで、特にコインとして何らかの価値が裏付けられているわけでもなく、実際の生活で使える場面もほとんどない。それ自体に価値はないものなんです。

ですが、このドージコインにテスラ創業者のイーロン・マスク氏が「Doge to the moon」とツイートしたんです。そしてイーロン・マスク氏が1つツイートした瞬間に、ドージコインの値段が数十倍になったんです。

宇賀:ただ個人の感想を言っただけですよね?

野村:別に「買え」って言っているわけじゃないですからね。ただコインの名前をつぶやいただけ。

5月上旬時点では(放送日:5月19日)、この全く価値のないドージコインの時価総額が、FedExなどのアメリカの大企業の額を超えているんです。

宇賀:怖い、すごいですね。
だからもう何だろうそうやって一夜にして全く状況が変わるから、みんな変えそうなものは買っとけみたいな状況なんですね。


3. 価値のないデジタル資産にも、価値がつけられるように

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野村:もう1つの事例が、NFT。
NFTとは平たく言うと、デジタルの資産のことです。例えばインターネット上に転がっている画像は、簡単にコピーできてしまいますよね。だからデジタル画像自体には、価値がない。いくら「コピーできません」と言っても、スクショもできてしまうので。

しかし、ブロックチェーンという仮想通貨の裏付けとなっている仕組みを使うと、デジタル資産も唯一無二のものだと証明できるんです。

宇賀:偽物と本物が分かれるんですね。

野村:そうです。
例えば、あるアーティストが作ったデジタル絵画があったとして、「その本物を持っているのは私だけ」と見せられる。同じようなコピーがスクショで出回っていたとしても、ブロックチェーンで証明されていなければ偽物だと指摘できるんです。

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出典:CHRISTIE’S

クリスティーズというアートのオークションを開催する企業があるんですが、ビープル(Beeple)というアーティストが作ったデジタルアート作品が、なんと6930万ドル。70億円で落札されているんです。

宇賀:これって絵なの?何か写真を切り貼りしているように見える……。

野村:デジタルの画像をコラージュした作品で、それがデジタルの歴史を表しているんです。
ただこれも、70億円の絵を所持して満足をしているというよりも、ちょっとした投資ですよね。さらにこの先上がるかもしれない。”かもしれない”としか言いようがないんですけどね。


4. コロナ禍で意外なものへの投資がヒートアップしたメカニズム

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野村:なぜこのようなトレーディングカード、スニーカー、デジタルアート、聞いたことない仮想通貨などに大きい金額がついているかというと、一つはアメリカで金余りが起きている状況があります。

新型コロナウイルスによって苦しんでいる方、仕事を失っている方や健康を害している方ももちろんいらっしゃいます。
一方で米政府はコロナの給付金をバンバン出しているんです。日本でも昨年、1人10万円給付がありましたが、アメリカの場合、1世帯100万円くらいになるケースも。加えて景気刺激策もやっているので、株価も上がっている状況です。人々の懐が、財布が暖かくなっているんです。

宇賀:変な話、バブル状態だと。

野村:バブル状態で、現金の価値が下がっているとも言えます。
ただそのお金を使うとなると、旅行もできないし、家具などの物理的な買い物にも限界がある。そんな中で、「もらったお金なら、リスクを取ってもいいかも」と投資に振り分けるメカニズムがあるんです。

宇賀:お金を使う場所がない結果なんですね。

野村:またテクノロジーが後押ししたという側面もあります。
今、アメリカでZ世代(1990年代半ば以降に生まれた世代)の間での投資熱が高まっている状況あります。そしてそれを支えるアプリが3つ。

RedditDiscordというチャットサービスアプリです。そこで「この株が来るらしいぞ」みたいな会話がオンライン上で行われているんです。

そしてRobinhoodという投資アプリが大流行。ゲームをするかのように株が買えるアプリです。日本では使えないんですが。

RedditやDiscordで「この株、来るらしいぞ」とか「この株、上げちゃおうぜ」みたいな議論をした上で、Robinhoodで株や仮想通貨を買って、それがまた値上がりを招いているという状況があります。

今年1月に起きたゲームストップ事件も、このメカニズムです。

また仮想通貨、ビットコインに乗り遅れた人たちが、次にバーンと来るものを探しているというのもありますね。それでスニーカー、デジタルアート、アルトコインなどにお金が流れ込んでいると指摘されています。

宇賀:これもコロナ禍の現象の一つなんでしょうか?

野村:コロナ禍の現象ですね。そしてよく言われているのは、コロナが収まった時にどうなるのか。

今後、どう考えても考えられるのが増税です。今は緊急事態として国のプライマリーバランスを無視してお金を出しまくっているので、いつかは回収しなければいけません。バイデン米大統領が世界的に法人税を上げようと呼びかけをしていることもあり、いろんな手段で税金を取りにかかるでしょう。

そうすると当然、景気は冷え込むので、今のマーケットが下がっていく可能性も十分にある。

その時に、損をする人がたくさん出ると思うんです。とはいえ、経済には投機的な商品だけでなく、じわじわ育っていくまともな投資商品もあります。投機目的で入ってきた人たちが、その後真っ当な商品に投資をする投資家として残るのか、それとも「嫌だ、辞めた!」と去っていってしまうのかで、マーケットが抑えられるか否かが決まってきます

宇賀:日常生活が戻ってきた時に、どうなるのかですよね。

野村:デジタル関連の株や商品、オンラインを前提にしたものは落ち着くんじゃないかと言われています。あまりにもIT銘柄の値上がりが高かったんで。

一方でリアル系のもの、航空や小売はまた戻ってくるんじゃないかとも言われていますね。

宇賀:これは日本でも同じですか?

野村:日本でも日経平均株価はすごく上がっています。
国内でも、ここ数年の現象として「アメリカ株、いいじゃん」と思う日本人が増え、米株にマネーを振り掛けているところはあります。投資率が高まっているのは間違いありません。

宇賀:今、聞いてくださっているリスナーの方の中で、「え、投資とか全然やってないよ。どうしよう」って思った方もいるかもしれませんが、全くやらないのも一つの選択肢ですからね。

野村:あくまで現状をご紹介して、金融リテラシーを高めていきましょうという回です。投資は自己責任ですから!

宇賀:今回は野村さんにアメリカで起きている経済現象について解説をしていただきました。ありがとうございました。


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